第13話
翌日、あたしは夢と待ち合わせをして登校していた。
靖への恐怖がいつ、どのタイミングで起こるかわからないからだ。
もしかしたら昨日と同じように早いタイミングかもしれない。
「昨日は家に来てくれてありがとう。お母さん喜んでた」
「ただ遊びに行っただけじゃん」
夢の言葉にあたしは左右に首を振り、普段の様子を話して聞かせた。
「そっか。靖子の両親って厳しいんだね」
あたしがイジメられているとわかっても、自分でどうにかしろと突き放す。
それは間違ってはいないと思う。
だけど、甘えられる人がいないのは辛いときもあった。
それから2人で他愛のない会話をしながら学校へ向かった。
残念ながら、今日は靖の姿を見ることもなかった。
「あぁ~ムカツク!」
D組へ入った瞬間、そんな美紀の声が聞こえてきてあたしたちは同時に立ち止まった。
なんだか嫌な予感がする。
しかし、すでに教室内へ入ってしまった。
そして美紀があたしたちに気がつき、近づいて来たのだ。
咄嗟に逃げ出そうとするが、あたしの手を美紀が掴んでいた。
美紀はあからさまに機嫌が悪く、目がつり上がっている。
他のクラスメートたちも今日はこちらに注目することなく、我関せずを貫いていた。
なにがあったのか知らないが、こういう日の美紀に関わらない方がいいのは暗黙の了解だった。
あたしたちは最悪のタイミングで登校してきてしまったのだ。
「あんた、ちょっと来てよ」
美紀があたしの返事を待たずに歩き出す。
あたしはずるずると引きずられるようにして教室後方へと移動した。
夢が慌ててついてくる。
「ほんっと、ムカムカする!」
美紀はそう言うと突然あたしの体を押し倒したのだ。
咄嗟のことで反応できず、あたしはそのまま横倒しに倒れ込む。
この前破れたブラウスが更に破ける音がした。
せっかく自分で縫ったのに。
そんなことを考える暇もなく、美紀があたしの体の上で仁王立ちをした。
そして鬼のような顔で見下ろしてくる。
あたしはゴクリと唾を飲み込んで美紀を見上げた。
「どうしたんだよ美紀」
なだめるような声色で言ったのは陸だった。
「昨日ババアに嘘つかれたの」
「ババアって、美紀のお母さんか?」
「それ以外に誰がいるの?」
「それで、嘘ってなんだよ?」
「弟の晩御飯を作ったら小遣いくれるって言ってたのに、くれなかった」
ムスッとして答える美紀。
それで昨日は早く帰ったみたいだ。
「あぁ~、親ならよくやるやつだよな。くれでも100円とかさぁ」
「ふざけんなっつーの!」
美紀は怒鳴ると同時にあたしの顔の真横でダンッ! と足をふみならした。
「ひっ!」
悲鳴を上げ両手で顔をガードする
その反応を見て美紀がニヤリと口角をあげた。
「なに? あんたこんなんでビビってんの?」
美紀はそう言うと何度もあたしの顔の横で足を踏みならす。
その度に髪の毛を踏みつけられて痛みが走る。
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