第12話
まさか、損失ってこれのこと?
だとしたら靖がドブにはまったことがアプリの仕業だったってこと?
混乱する頭を整理したいが、どう考えればいいかわからなかった。
「靖子、今すごく混乱してるでしょ?」
「そりゃ混乱するよ。これってどういうことだと思う?」
スマホ画面はすでに元に戻っていて、アプリも勝手に閉じられていた。
「よし、確認してみようか!」
夢はそう言うと、勢いよく立ちあがったのだった。
☆☆☆
なにが起こっているのか確認するためにやってきたのはあたしの家だった。
久しぶりに友達を連れて帰ったことにお母さんは驚き、そんなお母さんを尻目にあたしは自室へ向かった。
「へぇ、ここが靖子の部屋かぁ」
夢は珍しいものを見るようにあたしを部屋を眺める。
「やめてよ恥ずかしいから」
と言っても変わったものはなにも置いていない。
ベッドに机に本棚にテーブル。
簡素な部屋だということは自分が一番よくわかっていた。
「で、確認ってどうするつもり?」
お母さんがジュースを持ってきてくれたところで、あたしは本題に入った。
「もちろん、またこのアプリを使ってみるんだよ」
夢はテーブルの向こうから身を乗り出して言った。
あたしはその考えに目を見開く。
「本気で言ってるの? このアプリは危ないと思ってたんじゃないの?」
「それは今でも思ってるよ。だけど使ってみないとわからないことも多いと思うよ」
夢はそう言ってオレンジジュースを一口飲んだ。
「それはそうだけど……」
まさか夢がアプリを使ってみようと言い出すなんて思っていなかったから、驚いた。
「それに、さっきのが靖子への損失なら痛くもかゆくもないよね?」
さっき見ずに濡れたプリントは乾いて、ちゃんと文字が書けるまでになっていた。
「確かに、そうだけどさ」
「それに比べて靖はドブにはまったんでしょう? それって最高だと思わない?」
今朝の出来事を思い出すと、また笑えてきてしまう。
昼間靖が顔を真っ赤にしていたのも面白かった。
「じゃあ、もう1度だけ使ってみようか」
あの靖の顔を思い出すとあたしもアプリを使ってみたくなってしまった。
「誰にする?」
あたしはアプリを起動して夢に聞く。
「次も靖でいいと思うよ? あいつ、ただの金魚のフンなのにすごく調子乗るんだから」
そう言われて、あたしはもう1度靖の写真をアプリに取り込んだ。
「たったこれだけで勝手に恐怖を与えることができるの?」
「そうみたいだよ」
あたしは頷く。
理屈などは全くわからないけれど、とにかくそういうことになっているみたいだ。
「ふぅん?」
夢は不思議そうな顔をして頷いたのだった。
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