第6話

家に戻ると出向かてくれたお母さんがあたしの制服を見てしかめっ面をした。



汚れは落とすことができたけれど、破れたブラウスはどうにもならなかった。



「ただいま」



小さな声で言うと、大きなため息が帰ってきた。



「帰りが遅いと思ってたら、またイジメられたの?」



呆れた声に胸がズキリと痛む。



お母さんが呆れているのは見れば理解できた。



「もう少ししっかりしなさい」



あたしだってイジメられたくないけれど、それを理解しようとはしてくれない。



あたしは自室へむかいながら、数日前の出来事を思い出していた。



その日は美紀たちからのイジメが激しくて制服を汚して帰ってしまったのだ。



『靖子、それどうしたの?』



あたしの姿を見たお母さんは目を丸くして聞いてきた。



お母さんの姿を見た瞬間我慢していた涙がブワッとあふれ出す。



それからあたしはお母さんに美紀たち4人にイジメられていることを初めて告白したのだ。



でも……。



『あなたはもう高校生なのよ?』



そんな声に顔を上げると厳しい表情のお母さんが立っていた。



『え……?』



一瞬、なにを言われているのかわからなかった。



『自分の力でどうにかしてみなさい』



それはあたしのための言葉だった。



例えばあたしが小学生の小さな子供なら、こんな突き放したりはしなかっただろう。



だけどあたしはもう17歳。



来年には就職や進学という悩みもリアルになってくる。



イジメ問題くらい、自分で解決しないといけない。



そう思ったんだと思う。



『どうして自分がイジメにあうのか、よく考えなさい』



その言葉を思い出してあたしは大きくため息を吐き出して、ベッドにダイブした。



お母さんの言いたいことはよくわかる。



あたし自身に非があったのなら、ちゃんと改善した方がいいことも理解している。



でも、なにもかも嫌になった気分だ。



イジメも、声をかけてきたおばあさんも、わけのわからないアプリも。



「全部、なくなっちゃえばいいのに」



あたしはそう呟いて、きつく目を閉じたのだった。

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