第7話

それから数日後。

 桜高校の放課後。

 柏と馬橋の二人は、RC研の部屋でくつろいでいるところだった。

「それにしても…」と馬橋は北との勝負を思い出していた。

「あのモードの柏さんにあそこまでくらいついていった人を見たのは初めてですよ」

 柏はマシンの整備をまめにしながら馬橋の話を聞いていた。

「うん。まあ僕が本気のモードになると大人でも引いちゃうからねえ……。ちょっと可愛そうだったよねえ」

 その時、部室のドアが開いた。

 そこに二人が予想もしない人物が立っていた。

 そこにいたのは、北知美だった。

「え?」

 馬橋があんぐりと口を開けている。

 柏もマシンを整備する手を止めた。

 北はきょろきょろと部室を見渡した後、言った。

「きったないとこねー。まあ、男二人じゃしょうがないか」

 柏のコメコミがピクピクと動いた。

「これでも毎週、月曜日と木曜日には掃除をしているんだけどね」

 だが、北はそんな柏の話をまったく聞いていない。

「まあ、これからは私が毎日掃除をするから問題ないんだけどけどね」

 うんうん、と納得し頷きながら言った。

「え?どういうことですか?」

 馬橋が北に詰め寄った。

 北がうんざりした顔をしながら言った。

「話を聞いてなかったの?メガネ」

「うう……、聞いてましたけど、あんま理解できなかったんで」

 はあ~と、北はため息をついた。そして二人を見ながら言った。

「つまり、今日から私、この研究会に入ることにしたのよ」

「え~!?」

 柏と馬橋は同時に叫んだ。

「な、なんでまた。一体どういうことですか?」

 馬橋があたふたしながら聞いた。

 北が一指し指をビシッと柏につきつけた。

「あなたを私のライバルと決めたからよ。あなたに勝つまで私、ここにいるから。よろしくね」

 北がにっこりと笑った。だがその笑顔の裏の怖さを馬橋は感じ取っていた。

 馬橋が柏のシャツの袖を引っ張った。

「い……、いいんですか?部長。北さんを研究会にいれても……」

 手を頭の後ろで組みながら柏が言った。

「ん~、まあ、いいんじゃない。ホラ。うちって男ばかりで殺風景だったから。女の子が一人いたほうが華やかになるし」

「い……いや、部長。僕が言いたいのはそういう事じゃなくてですね……」

 馬橋が言いかけた時、柏が机の引き出しからすっとゴーグルを取り出してはめた。

と、その瞬間に柏がまた本気のモードになった。

「馬橋ぃ……」

「はっ。はいっ!」

「挑戦してくる奴がいれば、いつでも受けるのが俺のやり方だろうが!忘れたのか、コラ、タコ!」

「はっ!すんません!」

馬橋が直立不動で敬礼した。

馬橋を間に挟んで北と柏はお互い睨みあっていた。

二人の今後の戦いを想像すると、身震いする馬橋だった。

 


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RC 空木トウマ @TOMA_U

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