第6話 突発的風邪
突然だが、風邪を引きました。
病は気からというが、やっぱり、ちょっと
魔王の人格と記憶——知恵熱のようなものを、クールダウンさせる必要に、身体がようやく気づいたのだろう。
「お兄ちゃん、大丈夫。仮病じゃない?」
ひょこっと、ベットの上に妹の顔が見える。まだあどけない顔。中学に上がったばかりだからな。
手に水を持っている。今、平日の昼じゃないか。
「とりあえず、水はありがとう。あと、仮病を疑われたことにショックを隠せない」
オレは起き上がって、水を受け取る。
「だって、昔から、体温計を摩擦熱で」
まさか見られていたとは。
その技は、君に伝授したとしよう。学ぶとは真似るということだ。
「オッケーイ。兄妹の秘密だ。お母さんには内緒だぞ。今回は本当だ。普通に苦しい」
「移せば治るともいうよね。一緒に寝てあげようか」
こういうことを言ってくる妹も、あと数年したら、思春期で、羽鳥みたいなことを言い始めるのだろうか。
「よせ、マイシスター。迷信だ。それから、お兄ちゃんの社会的地位が崩壊しかねないから、よしてくれ。というか、学校は、どうした?」
「え、お昼で早退した。お兄ちゃんが心配だから。健気でしょう」
「それは、健気なことで。オレをダシに、休む口実か」
「うわー、ひどーい。肉親のことを勉学よりも優先する心やさしーーい妹なのに。で、お昼、なに食べる?お粥、そうめん、うどん、それとも、わたし——」
妹が、変なドラマかアニメの影響を受けている。
早急に、そういうことは、もっと大人になってからと、せっきょ——。
「——のスペシャルドリンク」
妹が小悪魔的なムーブで困らしてくる。スペシャルドリンク。いったい、なにが入っているんだろうなぁ。
紫色でコポコポいってそうなイメージが脳裏に。
「とりあえず、レモンの蜂蜜漬けあるよ。ビタミンCを取ろう」
妹が、ベッドの下からガラス瓶を取り出す。輪切りのスライスされたレモンが浸かっている。
うちの妹が料理が上手で助かった。
というか、なんだ、さっきのドリンクのイメージ。まさか、魔王が食った勇者の手料理の記憶か。いやでも、弁当は普通に美味かったが。あれは、羽鳥本人の実力だったか。
ダメだ、ちょっと、ぼんやりしてきた。
「お兄ちゃん、本当に、大丈ーー」
ピンポーン。
チャイムの音か。
「はい、はーい」
妹がかけていった。
なんだろう、こんな時間に。
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