第50話~舞サイド~

「あ、ごめん。このままじゃ苦しいよな?」



気がついたように竜也は言い、突き刺さったままの刃物の柄を握りしめた。



その刃物は昨日先生が持っていたものよりも大きくて、あたしの体に深く食い込んでいるのがわかった。



あたしは咄嗟に竜也の手を握り締めた。



それを抜かないで。



そう願いをこめて竜也を見つめる。



竜也は一瞬瞳を泳がせたが、すぐに突き刺さっている刃物へ視線を向けた。



そして、一気に引き抜いたのだ。



途端に血があふれ出す。



痛みがあたしの体を電光石火に貫き、吐き気がしたと思ったら血を吐いていた。



叫ぶことも、抗うこともかなわないまま、横倒しに倒れこんだ。



竜也たちの顔がかすんで見える。



どうして?



信じていたのに。



どうして?



意識を失う寸前、あたしは夢を見ていた。



竜也と付き合い始めてすぐの頃、2人で人気映画を見に行ったときのこと。



それはアクション映画で、スクリーンの中で俳優たちが走りまわり派手なアクションをしていた。



それを見終わったとき、竜也は興奮した様子で言った。



『俺、絶対に映画監督になる!』



目を輝かせて未来を夢見る竜也がかっこよかった。



心のそこから応援したいと思った。



『うん! あたしどんなことでも力になるよ!』



あたしはそう答えたんだ。



だから、竜也は、あたしを……。



そこまで考えたとき、あたしの意識は途切れた。

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