第42話

「狩って、そういうの誰が決めたんですか」



あたしは一旦ドアを閉めてそう聞いた。



「今朝の会議で決まった」



「今朝の会議……?」



「そうだ。この学校に6人もの商品がいることなんて、これから先ないだろう。せっかくだから遊ぼうということになったんだ」



遊び……。



わかっていたことだけれど、いざ他人からそう言われると胸に刺さるものがあった。



「そんなことが会議で通ったんですか」



「通ったから、狩の時間が設けられたんだ」



先生はあたしの質問にかぶせるようにして答えた。



あたしはうつむき、下唇をかみ締めた。



悔しさが溢れ出して叫んでしまいそうになっている。



「先生たちもみんなストレスを抱えてる。君たち、子供のせいで」



「でも、あたしはなにもしてません!」



少なくても自分ではそう思っている。



普段から授業を妨害したり、先生の悪口を言っている子は他にたくさんいる。



「そんなのは関係ない」



先生が冷ややかな視線を向けてきた。



その目には体温がなくて、こちらはたじろいでしまう。



「確かに君は真面目かもしれない。でも、大人からすればその他大勢の生徒と同じようなものだ」



「そんな……」



「現に、普段の生活態度なんて無視して商品に選ばれただろう? そんなもんなんだよ」



「納得できません!」



こういう言い方は悪いかもしれないけれど、商品としてふさわしい生徒は他にいると思っている。



「君たちから見ても、大人は全員同じじゃないのか」



「え……」



聞かれて、返事に詰まってしまった。



自分にとって特別な大人は両親だ。



先生も特別だと感じることはあるけれど、他の大人と変わらないと言われればそうかもしれない。



少なくとも、両親と先生と大人。



という大雑把なカテゴリーでしか別けていなかったのは事実だ。



「それと同じだ」



あたしはまた下唇をかみ締めた。



先生たちにとってはあたしはただのいち生徒。



そんなの言われなくてもわかっていたはずだ。



「……わかりました」



あたしは短く言い、木工教室を出たのだった。



それからあたしは保健室に戻り、聡介の様子を確認した。



幸いにも保健室には誰も来ていないようで、聡介は無傷のままだった。


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