第34話
「っていうか先生? 今日はベッドの使用率高いですね?」
不意にひとりの生徒が言った。
「そうね。みんな、自分友達が商品になったショックで体調が悪くなったりしてるのよ」
「そっかぁ。あたしも友達が商品になったらショックかも」
「一週間人権剥奪だもんね。死んじゃうかもしれないんでしょう?」
「友達が死ぬなんて考えたことないなぁ」
そして保健室の中は沈黙に包まれた。
「逃げ切ってくれるといいな」
誰かがポツリと呟いたのだった。
それから掃除時間が終わり、ホームルームも終わった。
完全な放課後になったことを知らせるチャイムの音に、心臓は早鐘を打ち始める。
これからどうなるんだろう。
見えない恐怖に全身がすくんでベッドの上から動くことができない。
カーテンの向こうには先生がいるはずだけれど、今は物音も聞こえてこなかった。
昇降口から出られるかどうかの確認も必要だ。
だけど、今出て行ったらきっとすぐに取り囲まれてしまう。
考えている間にアナウンスが流れ出した。
《今日から一週間は部活動や放課後の活動をすべて停止します。生徒のみなさんは速やかに下校をしてください》
そのアナウンスにあたしは顔をあげた。
廊下から生徒たちのざわめきが聞こえてくる。
「これ、どういうことですか?」
小声で花子に聞くが、花子は左右に首を振った。
そっとカーテンを開けて外の様子を確認してみると、先生がスピーカーへ視線を向けていた。
あたしと視線がぶつかると、柔らかく微笑みかけてきた。
「どういうことかわからないけど、大丈夫そうね」
そして、そう言ったのだった。
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