218 最後の戦いー総力戦
この魔王、デルタロギスは、オデッサに比べ、威圧感も力も頑丈さも桁違いだ。
恐らく、オデッサは、敢えて生かされていた。
デルタロギスの力はノエル・ジュダムには敵わなかったが、一体で攻撃するよりも、二体でノエルと戦い、頂点から引き摺り落とすことを目論んでいたのだろう。
アルたちの力はデルタロギスにまるで通用せず、皆の動きが、止まっていた。
「みんな、まだ決着は付いていない。もう一度、攻撃しよう!」
アルが、気力を取り戻して叫ぶ。
その声でロゼスは再び槍を構えたが、今度は槍を持ったまま、目を閉じる。
ロゼスは、神具を手にしていた時からの能力――、幻をデルタロギスに見せた。
デルタロギスの目前に、弓を手にした数十、いや、数百にも見える顔のない兵士が現れ、彼らは一斉に弓を射る。
弓はデルタロギスの体中に突き刺さり、赤黒い血が体の至るところから流れた。
デルタロギスは、それが幻だと分かっているが、一瞬でも気を緩ませれば、意識が飛びそうなほどの痛みだ。
だが、デルタロギスは、その痛みを越える精神力で、
「ウオオオオオオオ……!!」
と、周囲の空気をびりびりと震わせる声を上げ、ロゼスの作り出した幻を破壊した。
ロゼスは作り出した幻が大きく、凄まじい集中力で術を使うため、壊された反動でロゼスの精神にも影響が出た。結果、ロゼスは酷い眩暈と頭痛、疲労のために、がくりとその場に膝を付いた。
「ロゼス!」
イーシェアが心配そうに近づくが、ロゼスは、大丈夫だ、と言って再び顔をデルタロギスに向けた。
「まだだ! 今の内に、攻撃を!」
ロミオが叫ぶと、イーシェアとアルが前に出て、再び臨戦態勢に入る。
アルは、剣を手にデルタロギスの上空へと飛び上がった。
イーシェアは巨大な水の刃を数百と作り出し、それを一斉に魔王へと飛ばす。
鋭く尖った水の刃は、四方八方からデルタロギスを襲い、水の刃はデルタロギスの全身を貫こうとする。
デルタロギスは刃が刺さる直前、土の鎧で体を覆った。だが、水の刃は土の鎧に刺さっても、更に深く沈み、デルタロギスの体に刺さろうとしていた。
しかし、水の刃は、消失した。
「どうして……?」
イーシェアが、消えた水の刃を見て、蒼褪めて言った。
デルタロギスが次の攻撃をする前に、空中にいたアルが、剣で飛び掛かる。
ガキッ!!
アルの剣を、デルタロギスは腕で防いだ。
僅かに、デルタロギスの腕に血が滲む。
「恐らく、魔術で防いだんだ。前に高位魔族が消失魔術を使っていた」
ロゼスは、自分もアルに続こうとデルタロギスを見据えながらイーシェアに言う。
アルが空を飛び、デルタロギスの攻撃を避けながら、剣での攻撃を続ける。数度、アルはデルタロギスの攻撃を受け止めたが、衝撃に、手足が震え始めた。
デルタロギスは、怒りが増していく。
アルに、傷付けられたからだ。
デルタロギスが、ぎらりと目を光らせ、アルに強烈な一撃の拳を浴びせようとしたが、それを受け止めたのはロゼスだった。
ロゼスは、槍で何とか攻撃を受け止めたが、デルタロギスの重い拳に、胸が潰されると思うほどだった。
(何て、攻撃だ……王子は、これを何度も受けたのか)
ロゼスとアル、デルタロギスは少しの間攻防を続ける。
ロミオもイーシェアも、その戦いはあまりに早く、術を撃てないのだ。下手をすれば、二人を巻き込んでしまう。
「離れてください、王子!」
槍を巨大化させ、ロゼスは渾身の力を込めて槍を上空から振り下ろす。ロゼスは能力を使い、槍に魔術が効かないようにした。
「喰らえ!」
槍はデルタロギスの肩を貫き、大量の血が噴き出した。
「……茶番は終わりだ。殺してやる……」
デルタロギスの青い目が、一層強い光を放った。
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