212 再会
二体の魔王、オデッサとデルタロギスが、メイクール国へと襲来した――。
ノエルの死期が近い――。
そのことを二体の魔王は、ノエルと対峙した時に気付いた。
よって、オデッサとデルタロギスは、セシルを連れ去ったノエルを追わず、決着を付ける運びとなった。
だがオデッサは深手を負い、不利な状況だ。
結果、オデッサは、最も近い大陸であるメイクール国で、身を隠しながら戦うことにしたのだ。
デルタロギスが、傷を負ったオデッサを殺そうとし、オデッサは近くの大陸、メイクール国へと逃げてきた。
――そして、メイクール国の城のすぐ手前に、二体の魔王が襲来した。
アルは、神から授かった力を使い、城の外へと飛び出すと、そこには、魔王二体が、睨み合っていた。
城を護っていた兵士らは目前の魔王たちを見て、驚きと恐怖に顔を引き攣らせた。
カイル率いる部隊も、さっきまで魔物相手に果敢に戦っていたが、動きが止まってしまった。
アルは、宙に浮かんだまま二体の魔王と対峙する。
アルはオデッサとデルタロギスを見て、体が震えるが、それでも、二体を真っすぐに見据えた。地上へ降り、アルは剣を抜いた。
二体の魔王は、アルを見ずに上空に目をやる――、そこに、数名の人間が風に乗ってやってきた。
「……アル、君も、力を授けられたのか」
アルのいる場所に近づいて来て、着地したロミオが言った。
「みんな……」
次々に、石を持つ者たちがアルの元へと着地する。アルの前に、再び会おうと約束をした仲間たちと、それに、ロゼスとイーシェアもいた。
「俺も、いるぞ」
いつの間にか、どこかから飛んで来たダンもいた。
「ダン……!」
クルミが気付いて、ダンに駆け寄る。
「クルミ、無事で良かった」
近づいて来たクルミに、ダンは笑顔を見せた。
酷い怪我をしていたが、やはり彼も、他の者たち同様に、怪我が治っていた。
ダンの目は、少し潤んでいた。
神から力を授けられた時、クルミが生きていることは聞いていたが、彼女を目にするまでは安心できなかったのだ。
「うん、ダンも、無事で良かった。それに、怪我も治ってる」
クルミは、泣き顔で別れたことを恥ずかしく思ったが、それよりも、無事な姿で再び会えた嬉しさの方が勝っていた。
「ああ、神から魔王を倒せと言われてな。体も、この通りだ」
ダンは、腕を動かして見せた。
「――おい、話しは後だ。みんな、武器を取れ」
ロゼスが言って、二人の会話を遮る。
確かにロゼスの言う通りだ。今は再会を喜んでもいられない。
改めて皆は魔王二体を見ると、オデッサは足を片方引き摺っていて、左腕も損傷している。だがデルタロギスの方は、ほとんど傷を負っていない。
人間の内幾人かは、武器を手にしていた。武器を手にしていなかったが、その手には、なぜか武器が握られていた。
ロゼスは槍、ツバキは手甲――、は、以前の神具ではなく、別のもので、ネオは剣、クルミは短刀、ダンは、鎌だ。
アルは元々持っていた剣で、イーシェアとロミオは武器を手にしていなかった。
デルタロギスとオデッサは、真の魔王となるべく互いに倒そうとしていたが、現れた人間たちを見ると、戦いを中断した。
「神に選ばれた者たちか。我らを倒す気か?」
オデッサが言った。
「面白い余興だ。いいだろう、相手をしてやる」
デルタロギスは巨大な体の腰を曲げて、人間たちに向けて話す。
デルタロギスは、突然、近くにいたイーシェアに向けて爪を向ける。
「イーシェア!」
と、ロゼスとアルが同時に叫ぶ。
イーシェアは冷静に、自分の前に結界を作り出し、デルタロギスの爪を防いだ。
だが、結界には罅が入った。
「二体の魔王の動きを同時には把握できない! 二組に分かれよう!」
アルが叫ぶと、皆は頷き、それぞれ、動いた。
デルタロギスの前には、その近くにいたイーシェア、ロゼス、アル、ロミオが向かう。オデッサの前には、ダン、クルミ、ネオ、ツバキが武器を構えて向かった。
ツバキは一見すると、平常心でいるように見えるが、まだサラが亡くなったショックの只中にいた。
ツバキは、いつもは前に出て戦いに自ら進んで参戦するが、今は、無言でネオの後ろについていた。
「私は、この世界の頂点に立つ者! お前らなど、消し去ってくれる!」
オデッサは巨大な鎌を抱え、ネオに向かって行く。彼女は深手を負っているが、そうとは思えない素早さと迫力だ。
ネオは剣を持ったまま後方へ飛び、オデッサの攻撃を回避しようとするが、出遅れていた。が、そこへクルミがネオの前に風の速さで飛び出し、短剣で防ぐ。
ガキッ!
と鎌と短剣がぶつかり、高音が響いた。
「く……!」
クルミは力を込めて、オデッサと押し合うが、傷を負ってはいるが、力はオデッサの方が上だ。クルミが短剣を押され、足が、ズズ……と、地面にめり込んでいく。
それを見たダンは、うおおお、と叫びながらオデッサの背後から鎌を掲げた。
オデッサは片腕を突き出し、
「〝
と唱えると、バチバチバチ、と雷が上空で鳴り、沸き起こった凄まじい風と合わさり、更に巨大な風と雷へと変化する。
オデッサはにっと笑い、腕を振ると、
「ああっ……!」
クルミが叫び、二人は、雷撃に巻き込まれて、飛ばされた――。
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