外れスキルの屑と言われ追放された最底辺の俺が大逆襲のリスタート! 最強賢者への道を歩み出す!「頼む、戻ってくれ」と言われても、もう遅い!
第631話「こちらも、市場の露店作戦など料理で攻める方向で行きたいと思います」
第631話「こちらも、市場の露店作戦など料理で攻める方向で行きたいと思います」
翌日もリオネルは精力的に働く。
無論、ヒルデガルドも一緒だ。
朝4時すぎ……早起きしたふたりは、フェフの中央市場へ。
正門開門とともに、入場した近隣の農場主、漁師、行商人などが、
指定された位置において、運搬して来た食料品を広げ、
大きく声を張り上げて、元気に売るという光景を眺めていた。
リオネルとヒルデガルドは出張中に、
事務官に指示し、市場側の望む改善点をくみ上げてあった。
報告によれば、そもそも市場で商いをしたい希望者は数多居るという。
しかし、市場の敷地面積は限られており、新規の販売者はなかなか参入が出来ない。
また既存の販売者も、もう少し広いスペースでのびのびと、商品も多く売りたいと告げて来たのだ。
イェレミアスやヒルデガルドも長年市場の改良は考えていたらしい。
しかし、設備を良くする以外、これといってアイディアがなく、新規参入者との調整作業、資金面や手間の問題もあり、手つかずの状態であったようだ。
ヒルデガルドは渋い表情で言う。
「リオネル様、どうしましょうか? もし敷地を拡大し、改修しても、既存の販売者は権利を賃貸料や場所などそのままの権利を主張するでしょうし、新規参入希望の販売者は市場の入り口から遠い、だから売り上げに影響するという立地の不利を申し立てると思いますわ」
「はい、ヒルデガルドさんの言う通りでしょう」
リオネルはヒルデガルドに同意した上で、にっこりと笑う。
「しかし、対策は考えています。新設する露店とフードコートを上手く活用するのですよ」
「え? 新設する露店とフードコートを上手く活用するのですか?」
「はい、まず立地の面から考えました。入り口付近のエリアよりも、距離があり奥まった新エリアの賃料は、当然安く設定します。それと新設する露店とフードコートを新規参入者の新エリア付近に建設、セッティングします。すると、どうなるでしょうね?」
「ええっと……」
ヒルデガルドは記憶をたぐった。
ワレバッドの活気ある市場、美味しい料理を出す露店、リオネルと一緒に楽しく摂ったフードコートの食事……
鮮明に記憶が甦ったヒルデガルドは表情が柔らかくなる。
「リオネル様、美味しい料理を出す露店があれば、場所が奥まっていても、市場へ来たお客は一目散に来ると思いますわ」
「です! 露店は良い集客策となりますし、新規参入者が食品を扱うのであれば、公社直営の店を出し、その食品を購入して使った料理を出しても良いと思います」
「な、成る程! これで既存と新規の販売者のバランスが良くなりますね」
「はい! 公社直営の店では、当然、どこそこの商店扱い商品、料理のレシピも掲出しておきます。そして料理はアールヴ族料理だけでなく、人間族の料理も試しましょう」
「わお! 露店の料理が、まるで試食ですわ。料理に使っている商品は評判となり売れるでしょうね! 凄く良いアイディアです!」
「はい、100%上手く行くと確約は出来ませんが、有利な立地で商売する既存の販売者が、奥の販売エリアへ移動を希望して来る場合もあるのではないでしょうか」
「ですね!」
「市場奥の国保有の土地を使うのは勿論ですが、公社直営の店同様、空き店舗も買い取り、露店、フードコートスペースを確保しましょう」
「はい!」
「それに空き店舗だけでなく、営業中の店があれば、露店出店の権利を提示し、買い取り交渉をしても良いと思います」
「はい!」
「工事は市場が休日の日曜日に行いましょう」
「日曜日に?」
「はい、まずゴーレムが整地し、俺が地属性魔法で石畳を作ります。なので、敷地の拡大は1日で終わるでしょう。更に露店も特急で作って貰いますから、毎週日曜日の工事で、1か月もあれば全て終了するでしょう」
「分かりましたわ、リオネル様!」
懸念の表情を示していたヒルデガルドも、最後にはリオネル同様、
にっこりと笑ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
午前7時過ぎ……
市場のオープンを見守ったリオネルとヒルデガルドは、いったん官邸に戻り、
イェレミアスとともに朝食を摂る。
食事をしながら、リオネルとヒルデガルドは、イェレミアスへ市場の改良案を話す。
リオネルの改良案を聞き、イェレミアスは同意、賛成する。
「成る程! 良いアイディアですな! 不平不満が出にくいと思いますぞ」
更にリオネルは考えを告げる。
「もろもろの事案の合間に、フェフから各町村へ延びる各街道の拡張、舗装工事も行います。市場同様、ゴーレムに拡張、整地させ俺が地属性魔法を使い、石畳で舗装します。深夜の工事となりますが、出来る限り静かに行います」
街道が整備されれば、交通量も増え、産業の活性化につながる。
「ありがとうございます! 素敵ですわ!」
「助かりますぞ! 楽しみですな!」
「国境沿いにある建設中の、特別地区の街へつながる街道も立派にしますから」
そんなこんなで、朝食は終了。
少し休憩した後の午前9時過ぎ、リオネルとヒルデガルドは公社直営店舗へ。
2日目の営業日となる公社直営店舗だが、基本的に運営は公社職員達に任せてある。
何か疑問点があれば答えるし、アドバイスが求められれば対応するつもりだ。
店舗に赴くと、初日同様、開店を待つ客達が長蛇の列を作っていた。
武官達が、横入りなどの不正や混乱しないよう交通整理をしていた。
2回目の警備なので、武官達もだいぶ慣れたようである。
リオネルとヒルデガルドは開店前の店舗へ入り、あいさつを行う。
公社職員達は昨日の『売り切れ』で自信をつけたようで、堂々としていた。
質問やアドバイスもほとんどなし。
彼ら、彼女達は、きっと上手くやってくれるだろう。
……やがて午前10時となり開店。
並んでいた客達はどっと店内へなだれ込んで来た。
昨日購入出来なかった客も多いらしい。
我先にという感じで、商品が飛ぶように売れて行く。
公社職員達も、頑張って対応している。
リオネルとヒルデガルドはお昼まで、店内で見守ったが、トラブルはほとんどなく、
公社職員達に託し、店を後にし、官邸へ戻った。
再び、イェレミアスを交え、3人で昼食。
公社直営店の視察報告と、
売れ筋商品情報の収集、分析作業の必要性に関し、語り合う。
更に、売れ筋の国産品商品の研究開発も必要だと、リオネルは強調した。
更にリオネルは、イエーラの名産品であるハーブの生産増大、販売先開拓についても話す。
「こちらも、市場の露店作戦など料理で攻める方向で行きたいと思います」
ワレバッドの市場で、イエーラのハーブを使用した料理を露店で出せば、結構な効果が見込めるというのだ。
「アクィラ王国との交易でもハーブを主力として交渉したいですね」
リオネルの言葉を聞き、ヒルデガルドとイェレミアスは勿論、
大広間に詰める使用人達も、うんうんと頷いている。
皆、イエーラのハーブが世界に誇れる商品だと信じているのだ。
……その後、執務室へ移動した3人は、
夕方まで様々な議題について話し合ったのである。
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