第496話「でも『ゼバオトの指輪』ほどのお宝は滅多に出ないよなあ」

イェレミアスとの会話が終わると……


少年少女風の4体のゴーレム達は、何もなかったかのように、果実の収穫を再開した。


収穫作業をするゴーレムはもうリオネルを気にしない。

見ようとさえしない。


もしも、万が一、ありえないが、

リオネルがちょっかいを出せば、戦闘モードには入るだろう。


しかし、単なるすれちがいなら、何も起こらない。


ゴーレム達にとって、リオネルは敵と認識されてはいない。

でも仲間ではない、単なる無害な存在、そんな立ち位置である。


遠隔操作による制御の気配もない。

フォルミーカ迷宮の深層に棲むアールヴ族の魔法使い、

イェレミアス・エテラヴオリは一瞬だけ正体を垣間見せた。


そして人間族が到達した地下150階層でリオネルを待つと言い残した。


リオネルのモチベーションは上がっている。


よし!

進もう!

地下150階層を目指して!


そこでイェレミアスさんへ会い、ボトヴィッドからの手紙を渡した上で話す。


話す内容は、まずはゴーレム技術の事。

人間のような会話、動き、仕草さ。

そして遠隔操作で相手と話す事が可能。

もしかしたら、魔法水晶を加工した視点を目に備え、

自分の姿を見られていたかもしれない。


本当に凄い魔法、技術だ。


果たして、自分もその技術が習得出来るのか?


もしも習得ならずとも、ヒントだけでも聞きたい。


他にも魔法の事で色々聞きたい。


イェレミアスさんは、千年以上生きると言われるアールヴ族。

どんな魔法を使い、どんな知識を持っているんだろう。


興味は尽きない……


地下151階層以降、未知の階層の事も、知っているのか、手掛かりがないのか、

ぜひ聞いてみたい。


そこまで考えると、リオネルは仲間達へ呼びかける。


『ゴーレムを介した術者との話は終わった、とりあえず、彼ら彼女たちは無害だ。出発するぞ』と。


ケルベルスの弟魔獣オルトロス、ミニマム竜に擬態したフロストドレイク、

魔獣アスプ20体は忠実であった。


リオネルの、

『分かった! お前達! そいつらとは絶対に戦うな! 遠回しにして、距離を取るんだ!』という指示を厳守したのだ。


もしも仲間達が傍らに居て、一歩間違えば、戦闘になっていたかもしれない。


つまりリオネルをリーダーとする『クラン』は極めて統制が取れているといえる。


今回探索に参加していない仲間達でも、同じ結果が出るに違いないと、リオネルは確信するのだ。


あるじ、ゴーレムを介した術者との話は聞いていたぜ。ようやく手掛かりが見つかったな。出発なら、いつもの通り俺達が先に行こう』


『!!!!!!!!』


『!!!!!!!!』


オルトロス、フロストドレイク、アスプ達がリオネルの指示に応えた。


リオネルは更に指示を出す。


『了解! 全員、いつものように先行してくれ!』


『了解!』


やはり即座に応え、周囲に控えていた仲間達は、ばらばらに散って行く。

思い思いのようでいて、しっかりと探索エリアを分担しているらしい。


仲間達が行くのを確認し、リオネルも出発する。


「では失礼します」


たとえ返事が来なくとも構わない。


リオネルは、収穫作業をするゴーレム達へ、丁寧に一礼すると、

再び歩きだしたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ゴーレム達と別れ、地下142階層の探索を再開したリオネル。


イェレミアス・エテラヴオリと会う約束は交わしたから、

課題をひとつクリアした気分である。


オルトロス以下仲間達を先行させ、

引き続き、魔物の討伐、古代遺跡の探索をしながら、進んで行く。


リオネルの探索ペースが戻って来た。


いつものようにシーフ職スキルを駆使し、


『隠形』『忍び足』で、すっ、すっ、すっ、と空気の如く進む。


障害物があれば、転移、飛翔の失われた魔法、


ジャンプ、幅跳び、高所からの落下、木登りし樹上にての軽業など、


確信を得た超人的な身体能力を行使し、楽々と進んで行く。


索敵――魔力感知を最大範囲で張り巡らせ、外敵への警戒も怠らない。


熟練度は着々とアップし、魔法、スキル、身体能力はキレッキレ。


順調にドラゴン族、巨人族を数体ずつ倒し、リオネルは順調に探索を続けて行く。


再び、独り言が出て来る。


これまたいつもの事である。


「もう少し敵を倒せば、次のレベルアップか。でも41じゃ、まだまだ遠い。当面の目標はレベル50だぞ」


「イェレミアスさんの件がクリアになったから、肩の荷が下りた。ボトヴィッドさんとの約束は果たせそうだ」


「良い事続きで、今度は古代遺跡で何か良い発見でもないかな」


「そうだよ。良いお宝とか出ないかな。出来れば呪いなしの。まあ解呪するから、構わないけどさ」


「でも『ゼバオトの指輪』ほどのお宝は滅多に出ないよなあ」


自問自答のように独り言をつぶやくリオネル。


気軽な話し相手となる妖精ピクシーのジャンが、休憩している際は、このパターンが多い。


そうこうしているうちに、リオネルは未探索の古代遺跡を発見。


「よし、中を調べて、確認だ!」


大きく息を吐き、気合を入れ直したのである。

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