第465話「リオネルは改めて、索敵……魔力感知を張り巡らす」

突如。


リオネルの行く手、少し先に横たわる白骨化した巨大な竜の死骸が、

ぎしぎしぎし!と音を立て、ゆっくりと起き上がった。


白骨化した巨大な竜の死骸……ドラゴンスケルトンは、完全に起き上がると、

リオネルを威嚇、竜族特有のファイティングポーズをとった。


生きていた頃は相当な巨竜だっただろう。

白骨化していても、ドラゴンスケルトンの体長は30m近かった。


補足しよう。


ドラゴンスケルトン……

竜の白骨化死骸が不死者アンデッド化した魔物である。


全身からおびただしい瘴気を発し、敵を穢し、腐らせ、

かみ砕き、踏み潰しなど、巨体を活かした物理攻撃を仕掛けて来る。

個体によっては再生能力も高い。


強さはドラゴンゾンビには及ばない。

だが、冒険者にとって相当の強敵である事は間違いない。


しかし……

先ほどのタラスクス同様、リオネルと仲間達にはどうという事のない敵である。


ドラゴンスケルトンが発する瘴気はリオネルには通じない。

全てを無効化してしまうからだ。


緩慢な物理攻撃も全てかわしてしまえばOK!


タラスクスの前に倒した炎を吐く竜……ドラゴン3体の方がまだ手ごわい。


倒す方法はいくつもあるし、差し当たって相手は1体。

リオネルひとりで充分だ。


『皆、こいつは俺が倒すよ。新手あらての出現だけを注意してくれ』


リオネルの指示を聞いた仲間達は、


『了解!』


と全員が同意、周囲を固めた。


ひとりで倒すと決めてすぐ、リオネルは戦法も決めている。


触れずして、ドラゴンスケルトンを放つ『魔力のみ』で倒す!


リオネルは、体内魔力の圧力を上げると、腕組みをしたまま

鋭い眼差しと合わせ、襲って来るドラゴンスケルトンを威圧の念で突き刺した。


瞬間!


リオネルが放った巨大且つ強力な、

威圧と破邪の魔力に包まれたドラゴンスケルトンは、


ぱああああああああんんんんん!!!!!!!!!


と、破裂したような大音響で、あっさりと四散してしまった。


更に四散した破片は、塵となり、どこへともなく消えて行く……


よしっ!

使ったのはまだ数回だけど……上手く行った!


並みの不死者アンデッドなら、この技だけで無双可能だ!


そう!

リオネルは自身が編み出した必殺技を。


対不死者魔法アンチアンデッドマジック

秘奥義『破魂撃はこんげき』を行使したのだ。


しかし!


リオネルが勝利の余韻に浸る余裕は全くなかった。


この戦いが引き金となったように、あちこちの竜の白骨化死骸が次々に復活。


数十体のドラゴンスケルトンの大群として、リオネルひとりへ襲いかかって来たからだ。


でも、リオネルは慌てず泰然自若。


ぱああああああああんんんんん!!!!!!!!!

ぱああああああああんんんんん!!!!!!!!!

ぱああああああああんんんんん!!!!!!!!!


ぱああああああああんんんんん!!!!!!!!!

ぱああああああああんんんんん!!!!!!!!!


破魂撃はこんげき』を連発し、数十体のドラゴンスケルトンを、

あっという間に消滅させてしまったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ふう……死にぞこないの奴らを昇天させてやったか」


数十体のドラゴンスケルトンを、

あっという間に消滅させてしまったリオネルへ、仲間達から念話で連絡が入る。


あるじ! 湿地帯から新手あらてが現れた! 複数だ!』


『おう! 兄貴の言う通り! ドラゴンゾンビ4体が出た! 主が放つ巨大な魔力と魔族たる俺達が来た事で、瘴気が活性化し、刺激を受けたのかもな!』


ケルベロス、オルトロスの魔獣兄弟がそう言えば、


『!!!!!!!!!!』


ファイアドレイク、ジズ、アスプ達も『今度は俺にも任せてくれ!』


と意思の波動を送って来た。


リオネルはいつものように、ぱぱぱぱぱぱぱ!と考える。


そして、すぐに仲間達へ指示を出す。


『ケルベロス! オルトロス! お前達には各1体の討伐を任せる! ファイアドレイク、ジズはふたりで協力し、1体を討伐してくれ! アスプ達は勢子となり、残りの1体を俺の下へおびき寄せてくれ! 以上だ!』


リオネルの判断……


冥界の門番を務める兄ケルベロス、弟ケルベロスは不死者の扱いに慣れている。

魔獣兄弟同士、競わせる意味でもそれぞれに一体を任せる。


ファイアドレイクは火の化身、ジズは風の化身ともいえる従士である。


火と風は相性の良い属性であり、連携してドラゴンゾンビを1体を倒す事で、

心の絆が深まると判断。


そして、アスプの武器である、毒と睡眠誘因は不死者のドラゴンゾンビには効きにくい。


それゆえ、敢えて戦わせず、『かく乱役』として働いて貰う事が妥当だと考えたのだ。


対して、仲間達からは、


『了解!』の返事が戻って来た。


リオネルは改めて、索敵……魔力感知を張り巡らす。


仲間の動きと状況、そして敵の動きと状況を随時、把握する為だ。


ずっちゃ、ずっちゃ、ずっちゃ、ずっちゃ……


やがて……

囮となったアスプ20体に導かれ、巨大なドラゴンゾンビ1体が、

リオネルへ向かい、進んで来たのである。

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