第429話「リオネルのように「全てを無効化する」など、本当に稀有な存在なのである」

毒蛇の王バジリスク10体を屠ったリオネル。


更に地下62階層の探索を続ける。


ここでまた、新たな敵の出現である。


報せて来たのはケルベロス、オルトロスの魔獣兄弟である。


あるじ! 以前迷宮で、戦った事のある敵だ!』


『ああ、雄鶏の身体にドラゴンの翼、トカゲの足と蛇の尾を持つ合成獣、コカトリス10体だ』


リオネルの索敵……魔力感知にもコカトリス10体がはっきりと捉えられている。


対コカトリス戦も、リオネルは作戦をしっかりと立てている。


ズバリ、英雄の迷宮における戦いの再現。


といっても、先ほどのリザードマン、バジリスクとの戦いで、

リオネルの毒、石化の無効化は確認されている。


ならば後は無双『プラスアルファ』するだけだ。


その『プラスアルファ』とは……


『主! オルトロスとともに、奴らを追い込んだぞ!』


『ああ、兄貴の言う通りだ! 1分後に、現れるぜ!』


魔獣兄弟の連絡通り、約1分後、リオネルの目の前に、

コカトリス10体が現れた!


そのコカトリスへ向かい、リオネルはゆっくりと歩いて行く。


たったひとりの人間が、自分達を全く恐れず接近して来る!?


戸惑うコカトリスどもは唸って、リオネルを威嚇する。


そして、ぶわっ! ぶわっ! ぶわっ! ぶわっ! と毒息を吐いた。


しかし!


リオネルは涼しい顔をして、近づいて来る。


やはり何ともない。

大丈夫! 大丈夫!


毒息攻撃に対し、リオネルがダメージを受けないのを見て、

バジリスク同様、コカトリスは感情のない冷たい視線を送って来る。


英雄の迷宮で対峙した際には、

最大級の石化能力を持つこの魔物に、少しだけ心が吸い込まれそうになった。


だが今、冷たい視線を受けても……リオネルは全くのノーダメージ。

リオネルは平然と、真っ向からコカトリスの視線を受け止める。


同時にキッと、にらみ返す。


ばちばちばちばちばちばちばちばちばちばちばちばちばちばちっっっっ………


見えない火花が凄まじく散る。


………びしししししししっっっっっっっっ!!!!!

………びしししししししっっっっっっっっ!!!!!

………びしししししししっっっっっっっっ!!!!!


何と! いきなり!!

英雄の迷宮の時同様、『破滅の音』が、響いたっ!!

これは……『生身の肉体が石化する音』である。


コカトリス10体は……全てが石化していた。


リオネルは完全に、習得した『思念反射』の能力を使いこなしていたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


コカトリス10体を倒したリオネルは、更に探索を続け、

バトルも継続する。


そして午後5時まで戦い続け、無事、地下70階層へ到達した。

少々早いが、本日の『営業』は終了である。


リオネルの基本方針は変わらなかった。


アスプのみを倒さずにテイム。

その数は結局、22組44体、計100体の軍団となった。


リザードマン、バジリスク、コカトリスは様々な方法で討伐。

残念ながらレベルは上がらなかったが、熟練度を増し、円滑度、制御力は大幅にアップした。


地下70階層の『小ホール』は、やはり誰も居なかった。

この階層までたどりつく者は少ないからだ。


睡眠誘因もそうだが、毒、石化という特殊攻撃は冒険者にとって受けたら致命的といえよう。


いくら治癒魔法や魔法ポーションを使っても、完全に防ぎ、治療する事は極めて困難である。


リオネルのように「全てを無効化する」など、本当に稀有な存在なのである。


さてさて!

まいどのお約束で、ケルベロス、オルトロスを巡回に出し、リオネルはキャンプの準備を始めた。


無人且つ危険がないので、収納の腕輪から『一式』を全て一度に出す。


敷物を広げ、寝袋を置いた。

山猫亭の弁当を出し、紅茶の支度をする。


ケルベロス、オルトロス用の肉塊、ジャン用の焼き菓子を出す。


魔獣兄弟の牽制、威嚇により、敵が襲って来る気配は皆無だ。

頃合いと見たリオネルは、ケルベロス、オルトロスを呼び戻し、

ジャンも入れて夕食へ。


夕食後、とりとめもない話をし、コミュニケーションをとった後、

フォルミーカ迷宮の地図を取り出し、見入った。


明日は、地下71階層へ降りる。

目標は、80階層まで。

後は、成り行き。


地下71階層は、61階層から70階層の特殊攻撃を仕掛けて来る敵に加え、

青銅製、ミスリル製のゴーレムが現れるのだ。


作戦は今までと同じ。


アスプはテイム、ゴーレムは捕獲し、それぞれ軍団へ加える。

後は倒す。


シンプルイズベストである。


ジャンとの情報共有も手早く済んだ。


時間に余裕が出来たリオネルは、ここまで集めて来た『宝箱』の整理をしようと決めたのである。

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