第349話「不思議な夢④」
『分かりました、ロランさん! 俺! 貴方の夢魔法を受け継ぎます! そして極めてみせます!』
きっぱりと告げたリオネルは、まっすぐに見つめるロランの視線を、
正面から、しっかりと受け止めていた。
そんなリオネルの返事を聞き、ロランは嬉しそうである。
先ほど同様、無造作に指をピンと鳴らした。
瞬間!
リオネルの心身を力強い魔力が通り抜けた。
そして心……魂には、魔法の
身体には、発動する際のタイミング、魔力のバランスが。
しっかりと刻み込まれたのである。
就寝中……夢の中で会い、話をしたり、意思疎通をするだけではない。
夢の中において異界を生成し、修行し、魔法を習得出来る……
これも夢魔法の極意……なのだろうか。
つらつら考えるリオネル……
一方、ロランはとても嬉しそうである。
『よし! リオネル君! これで君は夢魔法を習得した。しかし極める為にはまだまだ修行が必要だ。転移、飛翔の魔法と同じさ!』
『はいっ!』
『必ず夢魔法をモノにしてくれよ! 転移、飛翔の魔法ともに極め、伝説と称えられるくらいの大魔法使いとなってくれ!』
『大魔法使いですか! 頑張ります!』
『それと! 君も気付いているだろうが、夢魔法はこうやって眠りながらの修行が可能だから、効率的に修行が出来る。ちなみに、夢の中では他の魔法の修行も行けるぞ!』
やっぱりそうだった!
自分が考えていた推測が当たり、我が意を得たり!
とリオネルの返事にも力が入った。
『了解です!』
概して魔法使いとはそんなものだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ロランは満足そうに大きく頷くと、更に言う。
『最後にもうひとつ。僕から君に
『え? 夢魔法を託して頂いた上、ロランさんから餞別を頂けるのですか?』
『うん! リオネル君へプレゼントするのは異界から魔物を呼ぶ召喚魔法を使う際、とても役に立つ……
『ペンタグラムですか。嬉しいです、ありがとうございます』
召喚魔法には必須のペンタグラム。
リオネルも当然、自分のペンタグラムを所持していた。
だがロランの気づかいに対し、リオネルは素直に礼を告げた。
変に断ったり、遠慮すると、失礼だと思ったのだ。
しかし!
ロランの用意した餞別はとんでもない逸品であった。
『ああ、それも普通のペンタグラムじゃないぞ』
『え? 普通のペンタグラムじゃないのですか?』
『うん! 上位悪魔でさえ、一目置くくらい強力な古代破邪魔法が
『え? 上位悪魔でさえ、一目置くくらい強力な古代破邪魔法が!!?? そ、そうなんですか!!』
『ああ! このペンタグラムは僕の実家に代々伝わり、子供の頃から長年護符として愛用したものさ』
『いやいや! それって家宝じゃないですか! そんな大事なものを頂けません』
『構わない! 死んだ僕にはもう必要ないからね。枕もとに置いておく、君が大事に使ってくれ』
ロランは自分にはもう必要ないからと、家宝ともいえるペンタグラムを役立てるよう勧めて来る。
考えた末、リオネルはロランの好意を感謝して受ける事にする。
『あ、ありがとうございます! じゃあ遠慮なく大事に使わせて頂きます!』
『そう言って貰えると嬉しい、ありがとう! ああ、そろそろ時間だ。じゃあ、行くよ、さらば、リオネル君!』
別れの言葉と共に……
ロランの姿が透明化し、徐々に消えて行く。
まるで年が離れた優しい兄のように感じるロラン。
実兄ふたりが、非道なので尚更である。
こんな素敵な兄が居ればと、幼い頃から願っていた。
そして思う。
折角、邂逅し親しくなれたのに!
ロランが告げたように、自分も、もっともっと語り合いたかった!
そんな寂しい思いを抱えながら、
ロランが無事家族と再会する事をリオネルは祈った。
いよいよ別れの時。
リオネルは、深く一礼する。
そしてあいさつし、改めて礼を言う。
『さようなら! ロランさん! いろいろありがとうございました! ご家族様と再会し、お幸せになってください!』
対して、ロランも一礼し、にっこりと笑う。
『こちらこそありがとう! 僕の夢魔法を受け継ぎ、想いを汲んでくれて!』
ロランは更に言う。
『リオネル君! 君にはもの凄い才能がある! だからもっと自信を持って前向きに生きるんだ! 己の人生を諦めるな! けして卑屈になるな! そして情けは人の為ならずというぞ、出会った人達と支え合い強く生きろ』
『はいっ!』
『リオネル君! 君の人生における素敵な出会いと幸運、そして大きな成功を祈っている! 命を大事にして、長生きしろよ!』
最後に叱咤激励と熱いエールをリオネルへ贈り、
ロランの姿は、異界……夢の中から完全に消えてしまった……
瞬間!
リオネルの意識は夢から覚め、完全に現実世界へ引き戻された。
目覚めたリオネルは……ゆっくり目を開けてみる。
泊まった宿屋の一室で、自分はベッドに横たわっている。
果たして枕もとには……単なる夢ではない証拠に、
使い込まれた感のある、チェーン付きの銀製ペンタグラムが置かれていたのである。
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