第348話「不思議な夢③」
『ああ! 夢魔法はね、転移、飛翔以上に、時間と距離を超越出来る! 遠く離れた人の夢に一瞬で現れる事も可能さ! こうやって話したり意思疎通も出来る! 魔法使いとして、興味があるだろう?』
ロランは、そう問いかけると、にっこり笑った。
夢魔法はね、転移、飛翔以上に、時間と距離を超越出来る!
遠く離れた人の夢に一瞬で現れる事も可能さ!
こうやって話したり意思疎通も出来る!
リオネルの心の中に、ロランの言葉が次々とリフレインする。
魔法使いとして当然興味がある。
ないわけがない!
この世界の様々な職業で最も好奇心旺盛で探求心に満ちあふれた存在、
それが魔法使いなのだから。
しかし、ここで熱くなって周囲が全く見えなくなる、
自分を見失うほど、リオネルは愚かではない。
即答せず、己自身を制する。
『ロランさん。ありがたいお話だし、凄く嬉しいのですが……ひとつ、質問して宜しいですか?』
『ああ! どんどん質問してくれ!』
『禁呪たる夢魔法ですが、対象、術者において、行使したら薬の副作用のような悪い影響はありませんか?』
『うむ! リオネル君の懸念はもっともだ。ないとはいえない』
『ないとはいえない? とは?』
『簡単だよ。どのような魔法でもそうなのだが、悪用を考える
ロランの言葉を聞き、リオネルは納得した。
そして更に尋ねる。
『成る程。じゃあ、禁呪とはいえ、夢魔法を行使しても、術者、対象者とも、呪われたりとかは、しないんですね』
『ああ、それはない! 害は全くないよ!』
『良かったです。安心しました』
ホッとしたリオネルが返事を戻すと、ロランは話題を変えて来たのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『……ところでリオネル君、君は今まで難儀する数多の人々を助け、支えて来たね』
『ええっと、まあ』
自慢をするのは嫌いだし、苦手である。
ついリオネルは口ごもる……
そんなリオネルを見て、ロランは面白そうに笑う。
『あはは! 謙遜しなくて良いって! そんな人達が、再び窮地に陥ったり、思い悩み、また君に会いたい! 支えて欲しいと願った時、時間と距離を超越する魔法があれば、君は相手に会い、励ます事が出来る』
『確かにそうです』
『リオネル君が習得した転移、飛翔の魔法はそれが可能だ。しかし相手先の状況、都合でどうしても制約がかかる』
『それも確かにそうですね』
『うん! しかし、夢魔法は、いろいろな制約をクリアし、相手が就寝中、いつでも会う事が出来る、自由度の高さがある!』
『相手が就寝中、いつでも会う事が出来る、自由度の高さ……』
『うん! ほら、今は亡き親しき人が夢枕に立ち、励ましてくれるとかってあるじゃないか。あれみたいなものさ!』
『成る程ですね』
『納得したかい? 君が修行中の転移、飛翔の魔法があれば更に完璧さ。状況、都合を確認し、思うがままに誰とでもリアルに再会出来る! これから新たに邂逅する人達の為にだって、大いに役立つ!』
ロランの口調が熱を帯びて来た。
リオネルは、しばし黙って聞く事にする。
『………………』
『僕が習得し、リオネル君へお礼として託す『夢魔法』を他の魔法ともども! 世の人々の為、ぜひ役立てて欲しい!』
『………………』
『
『………………』
『僕は、時間と距離を超える転移、飛翔の魔法に子供の頃から憧れていた……大いなる夢だった。でもいくら修行しても、望みは叶わず、残念ながら禁断の夢魔法しか習得出来なかった』
『ロランさん……』
『3つの究極ともいえる、転移、飛翔、夢の魔法全てを習得し、人間の領域を超えるリオネル君には、志半ばで叶わなかった、僕の人生の夢を託したい』
『志半ばで叶わなかった、ロランさんの人生の夢を……俺へ託す………』
『ああ! そうさ! リオネル君! 押し付けみたいで申し訳ない! けどね! 君とこうして出会ったのは、本当に運命的だと思っている!』
リオネルをまっすぐ見つめ、ますます熱く語るロラン。
お礼として託す、自分の技『夢魔法』を世の人々の為、ぜひとも役立てて欲しい!
そして夢魔法のみでなく、志半ばで叶わなかった、人生の夢を託したい
そんな、真摯な心の波動が会った時からず~っと感じられる。
先ほどから話に嘘偽りはない! 加えてこの人は真剣だ。
リオネルは決めた!
亡きロランの遺志を受け継ぎ『夢魔法』を習得し、
転移、飛翔の魔法ともに極め、人々の為に役立てようと!
『分かりました、ロランさん! 俺! 貴方の夢魔法を受け継ぎます! そして極めてみせます!』
きっぱりと告げたリオネルは、まっすぐに見つめるロランの視線を、
正面からしっかりと、受け止めていたのである。
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