第339話「偉大なる自然よ! 常に自分と共にあれ!」
どどどどどどどど~~~んんん!!!!!
とんでもなく大きな衝撃音が、風の谷へ鳴り響いた。
びりびりびりびり!!! びりびりびりびり!!!
大気が大きく震えた。
と、同時に、リオネル達の目の前に、
透明に近い薄絹のような衣服をまとった、細身の少女が宙に浮いていた。
圧倒的な魔力の量!!
圧倒的な存在感!!
さすが高貴なる4界王のひとり、空気界王。
目の前に居るシルフのリーアは勿論、
あのティエラより遥かに強力な魔力の波動を放っている。
『オ、オリエンス様!! い、いきなり、お出ましになられるとは!!』
びっくりしたリーアが思わず叫んだ。
一方、やはり! とばかりにリオネルは頷く。
この少女こそが、空気界王オリエンス……
空気界王オリエンスは、風はもとより、大気を自在に操り、全ての天候を司る。
そして、
敏捷にして快活であるが、その性格は奔放、勝手
はっきり言ってマイペースだ。
肌が抜けるように白く、優美で透明感に溢れており、
その美しさは見る者を引き込まずにはいられない。
確かに、とても美しい方だ。
でも……凄まじい怒りの波動を感じる。
ぼうっと、オリエンスを眺めていたリオネル。
そんなリオネルの様子を見て、リーアが慌てて叫ぶ。
『こ、こら! リオネル! はいつくばって! 土下座して!
相手は高貴なる4界王のひとり、空気界王。
崇高な存在で、
しかし、はいつくばって! 土下座?
リオネルは迷う。
『ええっと……』
『オリエンス様は、君が原因でお怒りなのよ! ご機嫌がお悪いのよっ!』
リオネルはちらっと、オリエンスの表情をうかがった。
リーアの言う通り、オリエンスは眉間にしわをよせ、顔つきは険しい。
本当に機嫌が悪そうだ。
『ええ、何となく想像が付きますが』
オリエンスの機嫌が悪いのが、自分が原因だとしたら、
リオネルに思い当たる事はある。
そう……リオネルは元々、風の属性を使う、風の魔法使いである。
しかし、チートスキル『エヴォリューシオ』の効果により、
チートスキル『ボーダーレス』を習得。
習得したチートスキル『ボーダーレス』の効果により……
4大属性全ての魔法が習得可能となった。
その後は、風の属性魔法を中心に使っていたが、
地の最上級精霊ティエラに邂逅し、加護を受けてからは、地の魔法の使用頻度が増えている。
オリエンスは、それが気に入らないのだ。
彼女にしてみれば、風の属性魔法の使用頻度を著しく多くして欲しいに違いない。
そのような推測をした上で、リオネルは決めた。
はいつくばって、土下座はしないと。
リオネルは、ふっと、以前アリスティド・ソヴァールと交わした会話を思い出す。
アリスティドは、高貴なる4界王達にとても会いたがっていた。
しかし、リオネルは現時点では、
アリスティドを呼び出す『英霊召喚』を行使する事は出来ない。
ごめんなさい、アリスティド様。
俺、オリエンス様にお会いしちゃいました。
と思いながら、リオネルは声を張り上げる。
『初めまして! 空気界王オリエンス様! 冒険者のリオネル・ロートレックと申します!』
はきはきと、あいさつし、オリエンスに向かい、
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
リオネルがあいさつし、一礼すると、オリエンスは面白そうに笑いだす。
『あ~はははははははは』
眷属のシルフ、リーアはといえば、ただただ慌てている。
オリエンスが笑う真意をつかみかねているのだ。
本当に面白くて笑っているのか、
それとも怒りのあまり、笑っているのか。
前者であって欲しい!
と、リーアは切に願っていた。
一方のリオネルはといえば、あいさつして、一礼してから顔を上げ、
オリエンスの笑う姿を見て、声を聞いても全く動じていない。
まさに泰然自若である。
オリエンスが言う。
『ほう! リオネル・ロートレックよ! 元は風の属性しか持たぬお前が、
しかし、リオネルは微笑む。
ゆっくりと首を横へ振る。
そしてきっぱりと言い放つ。
『違います! オリエンス様に対し、退かぬ、媚びぬ、省みぬではありません!』
そして軽く息を吐き、
『俺は、この世界の偉大な自然『全ての恵み』を敬い、愛するひとりの人間として存在しています……偉大なる自然よ! 常に自分と共に
『ふむ……偉大なる自然よ! 常に自分と共に
リオネルは、地界王アマイモンの愛娘、
地の最上級精霊ティエラとの邂逅で、その境地へ達した。
風属性の頂点に位置する空気界王オリエンスに対しても、
今感じているのは、全く同じ境地である。
『はい! 偉大なる自然『全ての恵み』を敬い、愛する。その気持ちで、オリエンス様とも向かい合っているつもりです』
『偉大な自然『全ての恵み』を敬い、愛する気持ちで……お前は、この私とも、向かい合っておるのか』
『はい! そして、
『ふむ、リオネルよ。この世界における己の存在意義を模索か! して、答えは出たのか?』
『出ていません。いえ、一生出ないかもしれません』
リオネルの答えが意外だったらしく、オリエンスは感嘆の声を漏らす。
『ほう!』
『しかし、ひとつ分かった事があります。そして決めました』
『ふむ、ひとつ分かった事、そして決めた事があるのか?』
『はい! 分かったのは、自分の魔法が、難儀する人々の為に役立つという事です』
『成る程。お前の魔法が、難儀する人々の為に役立つか!』
『はい! その為には元の属性である風、加護を受けた地にこだわらず、属性を問わず、適材適所で行使しよう! そう決めました!』
リオネルはきっぱり言い切ると、オリエンスへ向かい、
再び
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