第295話「きっと作戦は成功する!」

頼りになる『仲間達』を披露。

戦力不足ではと懸念していた、村長達の不安を払しょくしたリオネルとジェローム。


村長が持参した料理を食べながら……

リオネルとジェロームが、冒険者ギルド総本部提供、砦の絵図面を見せ、

作戦の具体的な説明をした。


結果……村長達4人は満足して帰って行った。


村長達と共有した作戦によれば、出撃は明日、夜明け直後の午前4時。

移動時間30分を見越し、

基本的には夜行性という習性を持つ、オークどもの寝込みを襲う。


まずリオネルが単身、見張りを含めたオークどもに気付かれないよう、

砦内へ忍び込み、大量の魔導発煙筒をセット。


リオネルは砦内を脱出後、

正門を含め、3か所ある出入り口にゴーレムを5体ずつ配置。


更に新手の予備2体を残したゴーレム3体、魔獣アスプ6体を正門後方へ配置。

正門で迎え撃つ自分、ジェローム、ケルベロスの手前に置き、護衛用とする。


やがて時限装置が働き、発煙筒が作動。

砦内からいぶし出され、出入り口から脱出しようとするオークどもを、

各自が撃破する。


砦外である程度数を減らしたら、ゴーレム部隊15体を3方から一気に突入。

残党を討伐する。


そして頃合いを見て、

リオネル、ジェローム、ケルベロス、ゴーレム、アスプが突入。

砦内と本館の探索をしながら、どこかに居るであろうオークの首魁も探し、

討伐するという段取りだ。


作戦を聞かされた当初……

ジェロームは、大いに危惧した。

リオネルが単身、オーク500体が巣食う砦に潜入し、

魔導発煙筒を複数個所に仕掛けると言ったからだ。


しかし、リオネルは全然臆していなかった。


ジェロームは思わず尋ねた。

どうして? と。

たったひとりでオーク500体の中へ飛び込み、怖くないのか? と。


対して、リオネルはまずひと言。


「慣れてる」


これではシンプル過ぎて分からない。


ジェロームがそう突っ込むと、

リオネルはこれまでに魔物の巣穴へ何度も潜入したと言い切った。

魔導発煙筒を仕掛けた事、単身で入った事も、何度もあったという。


そして!

何と! 英雄の迷宮を完全踏破しただけではない!


9階層を単身で探索し、数多の魔物を倒した、とも言ったのである。


英雄の迷宮に関しての知識はジェロームにもある。


特に最下層に近い9階層には、魔獣ミノタウロス、オーガ、ゴーレム、

そして『人狼』ウェアウルフなどの超が付く難敵が出現する。

しかし、リオネルは全て単独で倒したと言う。


ジェロームはリオネルの戦歴を聞き、とても驚いたが、論より証拠だった。


なぜならば、リオネルが配下として率いるゴーレムは全て英雄の迷宮で倒し、

一旦無力化したものであると。

それらを改めて、自身の配下とすべく、

リオネルは『真理エメット』の魔法文字を彼らへ刻んだのだ。


東方には、敵の駒を自軍の駒にする事が可能なボードゲームがあるという。

テイムしたアスプも含め、リオネルはまさにそのゲームを地で行っていた。


そして実際に戦ってみて分かった。

リオネルの身体能力は全てにおいて人間離れしている。

更にリオネルはシーフ職としての修行と実践も積んでいた。

『隠形』『忍び足』で潜入は大得意だとも。


依頼書を最初に見た時、「何と無謀な」という思いしかなかったが……

今は違う。


きっと作戦は成功する!

……このオーク討伐は、リオネルが居れば上手く行く。


そして修行中の自分も存分に戦える。


ジェロームはそう確信し、早めの眠りについたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


翌朝……

まだ外は真っ暗の午前3時に、リオネルとジェロームは起床。

すぐ支度を始めた。


ふたりは軽めの朝食を摂った後、革鎧を装着、革兜を被る。

それぞれが愛用の剣を腰から提げ、肩当てを兼ねた小型盾をつけた。

サブの武器として殴打も可能な魔法杖も剣と反対側の腰から提げた。

魔法杖には、リオネルにより風の魔法が込められている。

背中にはディバックを背負い、作戦遂行に必要な荷物を入れる。


ジェロームへ告げていないが……

様々な魔法を仕込んだ数多の魔法杖を予備として、

リオネルが収納の腕輪へ密かに用意したのは言うまでもない。


そんなこんなで……

後、10分ほどで午前4時というタイミングで、村長と助役、自警団の団長、副団長がの4人が、リオネルとジェロームが宿舎としている空き家へ来た。


正門まで同行し、開門を門番へ頼むのと、リオネルとジェロームを見送る為だ。

さすがに緊張している。


大きな期待と同じくらいの不安が、村長達4人が放つ波動から感じられた。


リオネルの『配下』を見せられて、一旦は安心はしたものの、

荒ぶるオーク500体の脅威を、充分に知っているからである。


さてさて!

リオネルの索敵は起床時から開始されており、

魔力感知で捉えた範囲内に敵の気配はない。 


正門を開放しても問題はない。


やがて、門番により正門が小さく開けられ、リオネルとジェロームが村外に出ると、

正門は再び固く閉められた。


戻るまでは、警備を一層厳重にと村長達には伝えてある。


時間が時間ゆえ、大声を出しての見送りこそなかったが……

村の命運を託すという熱い視線をリオネルとジェロームは感じた。


まだ陽が登っておらず、周囲はまだ暗い。


しばらく歩くと、リオネルは、ケルベロスを召喚。

アスプ4体も腕輪から「搬出」し、先行させる。

偵察と斥候を担わせる為だ。

2体は予備として残すと、リオネルは言った。


さあ! いよいよ作戦開始だ!


リオネルとジェロームは顔を見合わせ、拳を軽くタッチ。

いわゆるフィスト・バンプをし、大いに気合を入れると……

砦に向かい、再び歩き出したのである。

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