第283話「ジェローム、大いに驚く×2」
遅いランチを終えたリオネルとジェロームは、ワレバットの街中へ、出かけた。
ちなみに、ランチを摂りながら、リオネルはワレバットの街について、
下記の説明を、ジェロームにしていた。
という事で、先述したが、改めて説明しよう。
ソヴァール王国ワレバットの街……
この大陸でも大都市の範疇には入るのだが、人口5万人強の王都オルドルよりも、やや少ない、人口3万5千人余の人々が暮らす街である。
周囲には人間が住む小さな町や村だけでなく、魔物や肉食獣が跋扈する森林や原野が広がる。
また古代王国の遺跡や洞窟も点在。
少し離れた場所には、フォルミーカの大迷宮には到底及ばないが、
ソヴァール王国建国の開祖アリスティド・ソヴァールが、
若き日に修行した深き迷宮……リオネルが踏破した『英雄の迷宮』もあった。
ワレバッドの街の外観は、彼の故郷『王都オルドル』とあまり変わらない。
高さが20mはあろうかという外壁、そして外壁と高さがほぼ同じ、
頑丈な鉄製の巨大な正門が、街の高い防衛力を裏付けしていた。
ワレバットの外壁の内側、街の様相も、王国の大都市、中小都市とほぼ同じである。
中心に大きな広場を据え、広場から放射線状に延びた道路が様々な区画を分け、
その区画の中で、人々は身分、職業など様々な立場でまとまり、暮らしていた。
そして、このワレバットを治める領主ローランド・コルドウェル伯爵は……
かつて巨大なドラゴンを倒した事から、英雄と称えられ、
ワレバッドの領主とギルドの総マスターを兼任する王国貴族である。
ローランドは元々、ワレバット以外にもいくつかの町村を統治していたが……
王国から更にいくつかの村を統治をするよう命じられ、
そのひとつキャナール村において、村長のパトリス・アンクタンを管理官に任命。
リオネルが親しくしていた創世神教会の元司祭で、
そのモーリスと彼の家族ミリアン、カミーユをキャナール村へ見送り、
その帰路、ジェロームに会ったとも、リオネルは話していた。
「ははははは、成る程なあ……まさに人生は出会いと別れ、今後は俺とも宜しく頼むぜ、リオネル」
と、説明を聞いたジェロームは笑顔であった。
さてさて!
リオネルとジェロームは、ワレバットの街中を歩いて行く。
目指すは、冒険者ギルド総本部である。
「どうだい? ワレバットの街は」
「ああ、王都とあまり変わらないような……でもどこかが違うな」
「あはは、俺と同じ反応をしているな、ジェロームは」
「おお、そうか! 俺はリオネルと同じ反応か!」
リオネルは以前、モーリスにワレバットの街を案内して貰った事を思い出していた。
ひどく懐かしく感じる。
「ああ、そうさ、ジェローム。冒険者向けの店と、レストラン、酒場、カフェ、カジノも王都より遥かに多い。だから俺は『冒険者の街』だと再認識したのに加え、『戦いと娯楽の街』だとも思ったよ」
「おお! 『戦いと娯楽の街』か! 初めて見た時、そう思ったが、リオネルから改めて言われると、実感するな! ギルドへ行った後でいろいろ回ってみたい!」
ワレバットの街並みを見回しながら……
ジェロームは笑顔で頷いたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
やがて、リオネルとジェロームは、冒険者ギルド総本部へ到着した。
「な、何だよ、こりゃ!? す、すっげ~な!! 王都支部と全然違う!!」
ジェロームが大いに驚いたのも無理はない。
さすが、冒険者ギルドの総本部である。
こちらも先述しているが、改めて説明しよう。
王都支部も広大な敷地に5階建ての本館、別館、図書館、闘技場、倉庫などを備えていたが……
ワレバッドの総本部の敷地は、王都支部の5倍はあった。
10階建ての本館に、5階建ての別館が3つ、地下書庫付き王都支部の3倍の大きさの図書館、訓練所も兼ねた魔法研究所に、武技の道場が3つ、様々な地形を模した訓練研修合宿所、5,000人収容、1,000人収容、の大と中の闘技場、そして500人収容の小闘技場が3つある。
地下収容付きの倉庫が10棟、ホテルに、広大な公園まである。
そして何と!
10階建てのワレバッドの街の庁舎が隣接しているのだ。
「ジェローム。とりあえず、こんなモノと思っておいてくれ」
「こんなモノって、案内をしてくれないのか?」
「あはは、今日いろいろ回るのは時間的に無理だし、全ての施設を使用するわけじゃない。俺だって全部回った事はないよ」
「そ、そうなのか?」
「ああ、今日はジェロームが講座受講の申し込み、まあ、今日申し込みせずに、職員さんと相談だけでも構わないから、その件が優先事項だ」
「な、成る程」
そんな話をしながら、リオネルとジェロームは、本館1階フロアへ足を踏み入れた。
夕方前で『ラッシュ』時間ではないから、まだ本館1階フロアは閑散としている。
業務カウンターへ、ジェロームを
本館1階フロアも王都支部より、遥かに規模が大きく、
ジェロームは、物珍しそうに、きょろきょろしている。
一方、少し前から、リオネルは、良く知る気配を察知していた。
ふたりの女子が、どんどん近づいて来る。
「あら、リオネル様」
「リオネル様、こんにちはあ!」
リオネルとジェロームの前に現れたのは、
サブマスター、ブレーズ秘書のクローディーヌ・ボードレール。
そして、秘書室へ異動したばかりの元業務担当エステル・アゼマであった。
妙齢の美女ふたりが、リオネルに親しげにあいさつし、
ジェロームは、またも大いに驚いたのである。
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