第284話「稼ぐよ! 当たり前だ!」

クローディーヌとエステル、妙齢の美女ふたりが、リオネルに親しげにあいさつし、

ジェロームは、またも大いに驚いた。


ひとりは、ストロベリーブロンドのスタイル抜群な長身美女、クローディーヌ。

もうひとりは、短髪でボーイッシュな健康美女エステル。


ふたりの美女を凝視したジェローム。

視線を変えず、リオネルの脇をつんつん、つつく。

そして、そっとささやく。


「おいおい、リオネル、ふたりとも相当な美人じゃないか。俺にも紹介してくれよ」


「ああ、分かった」


とリオネルは苦笑、ジェロームを紹介する。


「クローディーヌさん、エステルさん、ご紹介します。彼はジェローム・アルナルディ。いろいろあって、友人となりました。俺が面倒みる事になった冒険者です」


「へえ、ジェローム・アルナルディ様って、あのアルナルディ騎士爵家様のご子息ですか?」

「あ~! 私も存じ上げてますよぉ、アルナルディ騎士爵家様を」


クローディーヌ、エステルは、ジェロームの実家アルナルディ騎士爵家を、

知っていた。


「ははは、俺の実家をご存じでしたか」


さすがに、「勘当されました」とは言えずに、苦笑するジェローム。


「はい、ウチの上司がアルナルディ騎士爵様と面識がありますから」


「ウチの上司? 俺のオヤジと面識?」


「はい! ウチの上司はブレーズ・シャリエですわ」


「えええ? ブレーズ・シャリエ様って、騎士爵で剣聖の!? が……上司ぃぃ!?」


クローディーヌの『立ち位置』を知り、ジェロームは驚いた。


驚くジェロームへ頷き、クローディーヌは挨拶する。


「はい! そうです! 初めまして、ジェローム・アルナルディ様。私、冒険者ギルドサブマスターであり王国騎士爵でもある、ブレーズ・シャリエの秘書を務めます、クローディーヌ・ボードレールと申します」


続いて、エステルもさわやかな笑顔をジェロームへ向ける。


「クローディーヌさあん! 私も私もぉ! ジェローム・アルナルディ様あ。初めましてえ! 私は研修中の見習い秘書で、エステル・アゼマと申しまあす!」 


美女ふたりに笑顔であいさつされ、ジェロームは舞い上がってしまう。


「は、はいいっ! クローディーヌさん! エステルさんっ! お、俺! い、いえっ! じ、自分はジェ、ジェローム・アルナルディでありますっ!」


「「宜しくお願い致しまあす!」」


「はいいっ!! ぜひぜひ! 宜しくお願いされたいですう!!」


ここで、クローディーヌがリオネルへ言う。


「リオネル様、今日はどのような御用でしょう? 何か、私達でお役に立てるのなら、ご遠慮なくおっしゃってくださいね」 


エステルも身を乗り出す。


「そうですよぉ! 何でも! お申し付けくださいっ!」


「ええっと、実は……」


対して、少し口ごもったリオネルであったが、正直に告げる。


「ジェロームの講座受講の件で相談に参りまして、業務カウンターの担当職員さんの下へ伺う途中です」


すると、


「私達が、フォロー致します!」

「致します!」


と、クローディーヌとエステルは言い、リオネル、ジェロームを連れ、

業務カウンターへ赴いたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


それから約1時間後……

リオネルとジェロームは、冒険者ギルド本館を後にした。


用事はスムーズに済ませる事が出来た。


ジェロームは業務カウンターの担当職員から、詳しい説明を受け、

質問に丁寧に答えて貰い、熱心にアドバイスされたのだ。


結果、ジェロームは希望通りの『剣技』『格闘術』の上級応用クラス、 


そして貴族だったジェロームが、泥臭い冒険者として……

魔物が跋扈する原野でも生き抜く事が出来る『サバイバル術』の基礎クラスを勧められ、受講する事となった。


クローディーヌとエステルが、業務カウンターの担当職員へ、

執り成しをしてくれたおかげである。


特にエステルは『古巣』だけあって、強烈にプッシュしてくれた。


丁寧で親身な対応をされ、ジェロームは、大喜びである。


「おお、クローディーヌさんとエステルさんには大感謝だな! そしておふたりを紹介してくれたリオネルにもな! ありがとう!」


感謝しきりのジェローム。


そんなジェロームへ、リオネルは頷き言う。


「多分ジェロームは今後、知識、技術を習得し、実践する事が楽しくなるな。俺がそうだったから」


「ああ、俺も、そうなる気がするよ、リオネル」


「しかし、講座の受講には、結構金がかかる。学費は自分で稼ぐんだぞ」


リオネルの言葉を聞き、ジェロームは同意し、大きく頷く。


先程申し込みをした際、手付けで金貨3枚を支払っている。

最終的には3科目受講で、都合金貨1515万円支払う事となる。


「おう! 王都で稼いだ金があるから、しばらくは大丈夫だ」


「おお、そうか」


「でも稼ぐよ! 当たり前だ! 俺自身が学び、成長する為に必要な金だからな」


しっかりと決意を述べるジェロームを、更に気分良くする提案がリオネルから出る。


「よし! じゃあ泊まる宿は、旅立つまでという限定期間付きだが、俺の家にしろ。空き部屋は客が来た時の事を考え、ベッドや家具を置いて、宿泊可能にしてあるから、そのまま生活出来る。」


「え? まじか? 良いのか? 甘えても?」


「構わない。俺の家で寝泊まりし、浮いた宿代を学費にすれば良いよ。その代わり、料理、洗濯、炊事、……家事もガンガンやって貰うからな」


「おう! 分かった! これから俺は自分の事は自分で行う生活となる。家事結構! 

それにやっかいになる者として、当然の義務だ!」


きっぱり言い切ったジェロームであったが、


「しかし、俺は家事などやった事がない。いろいろ教えてくれよな、リオネル」


と、照れくさそうに笑ったのである。

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