第262話「俺が居なくても安心!」
翌朝……
リオネル達は馬車に乗り込み、ワレバットの街を後にした。
キャナール村まで行き、見送った後、
リオネルだけがワレバットの街へ戻る予定である。
モーリス達は1か月くらい、キャナール村で過ごし、
村での生活に慣れてから、ワレバットの街やその他、
契約している町村を回り、商人として、業務支援者として仕事をする。
依頼があれば、冒険者として、様々な仕事を請け負う……
そんな生活となる。
ここまで別れを惜しんで、その間、ワレバットであっさり会うかもしれないと、
4人は、顔を見合わせ大笑いする。
ぱかぽこ! ぱかぽこ! ぱかぽこ! ぱかぽこ!
ぱかぽこ! ぱかぽこ! ぱかぽこ! ぱかぽこ!
ガタガタゴトゴト…… ガタガタゴトゴト……
ガタガタゴトゴト…… ガタガタゴトゴト……
元気に馬車を
とても平和で牧歌的である。
すっかり御者の技が上達したカミーユが、巧みに馬を走らせる。
カミーユを見る、モーリスは嬉しそうに目を細めている。
以前モーリスは、ミリアンとカミーユへ散々御者の練習を促し、自ら手綱を取っていた。
御者をやりたがらない姉弟を良く叱っていたものだ。
だが、最近はミリアンとカミーユが交互に御者役を担当している。
隔世の感があると、しみじみしているのだ。
キャナール村では親友パトリスを始め、村民達が待っている。
しかし、この旅が、リオネルを伴う最後の旅となる……
「どうせだから、一緒に旅して来た道を再びたどろう」
そんなモーリスの提案があった。
1日余計に時間がかかるだけ……という事もあって、全員が賛成した。
まずはワレバットの街へ来る際、宿泊した途中の小さな町の宿屋へ。
出発してから、距離はあまりなく、すぐに到着した。
ちなみに、この町では今までに『町村支援施策』の依頼はなく、
仕事をした事はなかった。
以前泊まった時と、こじんまりした宿屋は全く変わっていない。
「懐かしいなあ」と言いながら、4人はくつろいだ。
食事も美味しかったという記憶がある。
ここでひょんな事が起こった。
宿の
何気なく行き先、
何と! 宿の主は、リオネル達の名をそして4人が行った、
ワレバット周辺の『町村支援施策』の評判を、多くの宿泊客から聞き及んでいた。
よし! とばかりに、宿の主は速攻で、町長と助役を呼び……
宿の小宴会場を使って、この町の『支援施策』の話となってしまったのだ。
そして、何と何と!
話がまとまってしまった!
それも結構、『モーリス商会』が、『大きな売り上げを見込める』案件となった。
しかも、幸いに魔物の討伐等、緊急を要する案件がなく、
「キャナール村帰還後、頃合いの良い時にウチの町を訪れ、業務遂行してくれて構わない」
と、笑顔で町長は告げてくれた。
その後、話は雑談でわいわい盛り上がり……町長、助役が帰宅。
改めてくつろぐリオネル達。
『支援施策』がまとまった事で、宿の主は面目躍如とばかりにもてなし、
料理、酒だけでなく、宿持ちでお土産まで用意してくれた。
恐縮したリオネル達であったが、結局通常の宿の宿泊料金だけ、支払う事となる。
まさに、「転んでもただは起きぬ」のリオネル効果が出たサプライズであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌朝……
リオネル達は、出発した。
この町へ近いうち『支援施策』実施の為、
モーリス、ミリアン、カミーユの3人は再訪する事になるだろう。
昨日と御者役が交代。
今朝からは、
水属性魔法のバリエーションも一気に増え、
華麗な攻防の多彩さに磨きがかかった、姉ミリアンが手綱を取っていた。
こちらも弟カミーユに勝るとも劣らない、巧みな御者ぶりだ。
そのカミーユは、御者席で姉の隣に座り、
目を細め、鋭い視線で周囲を
シーフとして、カミーユの才能も開花しつつあった。
高みにあるリオネルの索敵能力を目指し、
改めて宣言。
この2か月間で、有言実行し、自身の索敵能力を著しくアップさせたのだ。
カミーユは魔法を使えない。
水属性魔法をほぼ完璧に使いこなす双子の姉ミリアンに対して、
その事実は、自身の強さに対する大きなコンプレックスであった。
この世界では生きとし生ける者全てが、魔力を有する。
魔法を使えないカミーユだが、体内魔力は結構な量がある。
リオネルから懇切丁寧に手ほどきを受け……
少しだけフォローして貰いながら、単独の索敵にも挑戦。
成功と失敗を繰り返しながら、カミーユは自身が持つ天性の勘、
すなわち『野生動物が持つ危機回避に等しい能力』を磨きに磨いたのだ。
そしてカミーユは努力の結果、遂に目覚めた。
ベタな言い方をすれば、遠方の敵を捕捉する「索敵のコツをつかんだ」のである。
結果、その危機回避能力を、体内魔力が後押し。
周囲300m以内の敵ならば、存在の補足と、
悪意の有無を感知出来るようになったのである。
町を出て街道へ……
しばらく走ったところで、その実力が、すぐ発揮された。
仲間への周知も、もう慣れたものだ。
「報告しまっす! 敵っす!」
リオネル達は、カミーユの物言いに注目する。
「……人間の賊、10人。多分、山賊っす! 距離は300m! 待ち伏せしているようで、俺達を襲う気満々っす! 魔法や弓など、飛び道具には注意し、戦闘態勢へ入ってくださいっす!」
続いて、モーリスが指示を出す。
これからは、再びリーダーとして、モーリスが指揮を執るのだ。
「うむ! 了解だ! 私とミリアンは攻撃魔法発動の用意! カミーユは攻撃魔法用の魔法杖を用意! 攻撃して来たら、攻撃魔法で威嚇! リオ君は威圧! 基本は敵を殺さず排除するが、いざとなったら、ためらうな!」
「了解!」
「了解!」
「了解!!」
御者台のミリアンとカミーユが返事をした。
いちメンバーとなったリオネルも元気良く返事をした。
やがて……リオネル達は、襲撃者10名の山賊どもと遭遇。
相手は武器を持って襲って来た。
だが、リオネル達は万全の状態で迎え撃った。
モーリスが岩弾、ミリアンが氷弾、カミーユが氷弾を放ち、余裕で威嚇。
怯え、逃げ腰の山賊ども。
「俺が居なくても安心!」とばかりに、
最後は、リオネルがびしっ!と魔王級の威圧。
恐怖に震え上がった山賊どもは、大きな悲鳴をあげ、腰が抜け、まともに歩けない。
文字通り、ずるずると、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます