第236話「感謝の気持ち」

翌朝7時……


いつものように、リオネル達4人、ブレーズ、ゴーチェ主従は地下6階層への出入り口前で待ち合わせして合流。


総勢6人で探索へ出発した。


全員、気合が入っている。


いよいよ最下層地下10階層へ到達する予定だからだ。

そして今回の冒険者ギルド総本部発行公式地図の確認依頼が終了する。


依頼を受けているリオネル達4人は、この冒険が節目だと気合十分なのは勿論だが、

帯同するふたりもそうであった。

……常に冷静沈着なブレーズはやや興奮気味、

熱血漢のゴーチェはとても張り切っていた。


ブレーズは、リオネルにまた何か起こるのかという未知への期待、

そして今度こそ自分が開祖アリスティドの亡霊に遭遇出来るかもという淡い期待を持っていた。


一方、ゴーチェは、この迷宮探索が終わったら、

再びリオネルを貴族家の養子入りへ口説いてみようと考えていたからである。


さてさて!

リオネルはいつもの手順を実行する。


照明魔法で魔導光球を呼び出し、周囲を照らすと、

召喚魔法でまず冥界の魔獣ケルベロスを呼び出し、

更に収納の腕輪から、大型コブラに似た魔獣アスプ6体を出し、先行させた。


リオネルがこの迷宮でテイムしたアスプ6体は、

やはり偽の魔法陣を出し、もっともらしい演出で登場させ、

いかにも召喚魔法で異界から呼び出したように見せるという、念の入れよう。


他の5人へ、伝えてはいないが……

リオネルは本日、ケルベロスとアスプ達へ作戦を指示していた。


本日の探索は地下6階層から7,8、9階層を通過し、一気に10階層へ降りる。


公式地図の確認は終了しているから、余分な探索はしない。

その分をひたすら移動に使う。


迷宮の探索は戦闘を含めた修行も兼ねている。

それに敵が出現したら、当然排除の為、戦わねばならない。


しかし10階層までは結構な距離である。

各フロアの下の階層への階段は、それぞれ離れた場所に設置されているから、

リオネル達は階段へたどりつくまで、敵と遭遇する事はまず避けられない。


前置きが長くなったが……

ここでケルベロス、アスプが動く。


先行する彼らが敵を排除して行くのだ。


しばらく斥候、索敵に終始していた彼らも大喜び。

喜んで敵の排除をOKした。


リオネルは時間さえ許せば、倒すなり、戦闘不能にするなり、威嚇して追い払うなり、全くの自由としたので、彼らはますます張り切った。


ちなみにアスプは同族同士戦わない。

なのでアスプが居た場合、戦わずして去って行く。


という事で、リオネル達が敵に遭遇する確率は完全にゼロにはならないが、

7割から8割くらいを減らす事が叶ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


という事で、リオネル達はどんどん進む。


先述したように敵との遭遇はゼロにはならない。


なので、リオネルとブレーズが戦いながら、時たまミリアンとカミーユを参加させる形で敵と戦いながら、進んでおり……


リオネルは習得した魔法、スキル等を駆使。

マンティコアを倒した時。


遂には地下9階層で、お約束のイベントがやって来た!


チャララララ、パッパー!!!


いつものように……

リオネルの心の中で、あの独特のランクアップファンファーレが鳴り響き、

『内なる声』が淡々と告げて来たのだ。


……リオネル・ロートレックは、規定値に達し、

『レベル20』に到達しました。


おお、節目の『レベル20』かあ!


今更感がなくもないが、

追放された際、父ジスランが自分へ課したレベル30までは、あと10かあ!


まあ、実家に戻る気はない。

俺は自由に生きて行くんだ!


などとリオネルは感無量である。


気分が高まるリオネルをよそに、内なる声は淡々と告げて行く。


身体能力が全般的に大幅アップしました。

スキル『見よう見まね』の効果により跳躍力が特に大幅にアップしました。


五感が全般的に大幅アップしました。


体内魔力が大幅に増量しました。


魔力回復力が大幅にアップしました。


魔法攻撃力が大幅にアップしました。


物理攻撃力が大幅にアップしました。


対魔法防御力が大幅にアップしました。


対物理防御力が大幅にアップしました。


と、各種スペックが大幅に向上。

リオネルはまたも、大きな成長を遂げた。


よっし!


やったああ!!


とリオネルが喜んでいると、モーリス、ミリアン、カミーユが声をかけて来る。


「どうした、リオ君」


「どうしたの、リオさん」


「どうかしたっすか、リオさん」


ブレーズとゴーチェも、リオネルへ注目した。


リオネルは全員へ告げる。


「いや、地下10階層を目前に、俺、レベルが上がりました」


おお!

と歓声を上げる5人に対し、


「このレベルアップは、忘れられない想い出のひとつになるでしょう。俺を支えてくれたみなさんのおかげです、ありがとうございます!」


ここまで長らく旅をして来た中、

リオネルは心からの感謝の気持ちを告げていたのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る