第224話「試してやる!」

リオネルのマミー戦における課題。


まずは、共に戦うミリアンとカミーユの安全が最優先する。

これは、絶対だ。


その安全を確保する為に、破邪魔法奥義『破邪霊鎧はじゃれいがい』レベル補正プラス40の実証実験、『呪いの無効化』を確認する。


つまり、マミーが発する『束縛の呪い』を敢えて受けるのだ。

先ほど、アスプ、バジリスク、コカトリスの毒、石化の攻撃を敢えて受けたように。


そして今回は、『破邪霊鎧はじゃれいがい』を発動して戦う事から、


発動時は、高位の不死者アンデッドの攻撃力を50%軽減。

発動時は、対不死者アンデッドへの攻撃力を50%上昇。


という、ふたつの効能効果も確かめるのだ。


ちなみに先ほど、地下6階層において……

ブレーズの目前で、『破邪霊鎧はじゃれいがい』を発動、

バジリスク、コカトリスと戦った際、わざと数回、攻撃を受けた。

……結果、発動時の物理防御力が50%増加に関しては、しっかりと確認済みなのである。


破邪霊鎧はじゃれいがい』の効能効果が実証され、リオネル自身の課題をクリア。

その上で、ミリアンとカミーユにも存分に戦って貰う。


そしていざとなれば、バックアップのモーリスがすかさず救助へ入る。


マミーの出現を捕捉してから、リオネルは、ぱぱぱぱぱぱ!と考えをまとめていた。


「では、行きますね。ビナー、ゲブラー、『破邪霊鎧はじゃれいがい』!」


ぱああああっっっ!


と、発動と同時にリオネルの身体がまばゆい発光に包まれた。


傍らで、ブレーズが満足そうに頷いている。

二度目の確認で、リオネルが完全に、破邪魔法の奥義を習得していると、

確信したに違いない。


おおおおおおおおおおおおお!!


リオネルのまばゆい発光を見たマミーが不気味に唸り、威嚇して来た。

底知れぬ何かを感じたという趣きである。


しかし、リオネルは全く恐怖を感じない。

ひどく落ち着いているのが、実感出来た。


狼のスキルのみでなく、『破邪霊鎧はじゃれいがい』の効果もあるようだ。

または、ここまで叩き上げた、実力が気持ちを後押ししているやもしれない。


「ミリアン! カミーユ!」


「はい!」

「はいっす!」


「安全が確保出来るまで、絶対、前に出るな! 俺の後ろに! 安全な位置に控えているんだ!」


「はい!」

「はいっす!」


リオネルはミリアンとカミーユの返事を聞くと同時に、

前に一歩、二歩、三歩と、ゆっくりと足を踏み出したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


もしも自分がマミーだったら、99%の確率で『束縛の呪い』を発して来る。

そう、確信する。


最低でも牽制けんせい、あわよくば動きを止め、5体が全て、

自分ひとりに対し、速攻でとどめを刺す為に。


リオネルは念話で波動を読む前に『勘』も異様に鋭くなっていた。

そう、危機回避能力も著しく増大していたのだ。


おおおおおおおおおおお!!!!!!!!


案の定というか、お約束というか、やはり5体のマミーは一斉に、

『束縛の呪い』を放って来た。


リオネルは……真っ向から、受けた。

不気味なミイラどもをまっすぐに見据えながら。


………………………………………………………………………………………………………………沈黙が、迷宮の空間に満ちた。


マミーは、対象を『束縛の呪い』で行動不能にしてから、攻撃をして来るようである。


じっと、リオネルを見て動かなかった。


しかし、マミーの期待は、残念な結果に終わった。


ふっ、全然、効かないな……

破邪霊鎧はじゃれいがい』は、自分のレベルを認識した上で、

相手さえ見極めれば最高の防御魔法だ!


ふっと笑ったリオネルは、再び、前に一歩、二歩、三歩と、

ゆっくりと足を踏み出した。


おおおおおおおおおおお!!!!????


同じような唸り声を発したマミーどもだが、先ほどとは、

中身が全く違っている。


戸惑い、怖れの波動を、はっきりと発していたのだ。


「お前ら、いつも相手を動けなくして、戦うっていう、やり方なんだな」


と、リオネルは淡々と言い、


「俺も……全く同じだよ。同じようなスキルを使う、卑怯者なんだ」


『威圧』、『フリーズハイ』のスキルを交互に発動した。


こちらも、上位不死者であるマミーにどこまで有効かの実証実験であり、

お返しのカウンターでもある。


補正の作用もあり、スキルは有効であった。


逃げ腰のマミーどもは……完全に動けなくなり倒れ、迷宮の床へ伏した。


しかしリオネルは、言葉と裏腹に、マミーも自分も卑怯者だとは思っていない。


持てる力を出し切り、リオネルは戦って来た。

時には工夫をし、遥かに格上の相手にも勝利した。


生き残り、魂の絆を結んだ仲間を必ず守る。

その為には、使えるものは使い切る。

利用するものは利用する。


そのように泥臭く戦い、ここまで生き抜いて来た。

邂逅かいこうした数多あまたの人々の『盾』となった自負がある。


……俺の旅はまだまだ続く。


これまで戦って来た奴ら同様、俺を殺そうとしたお前らにも、

かてに、経験値となって貰うぜ!


リオネルは神速で体内魔力を上げた。

強力な魔力が体内に満ちた。


試してやる!

最強の不死者アンデッド討伐技をなあ!


おもむろに手を挙げたリオネルは、

破邪聖煌拳はじゃせいこうけん奥義、破魂拳はこんけんに、

スキル『貫通撃!!』の魔力を込め、思い切り放ったのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る