第223話「リオネル君が判断したのなら、お任せします」

ブレーズの使った高圧の水流、水斬剣を参考に、自分の能力へ応用。


風圧を著しく上げ、極度に威力を増した風弾、同じく風の魔力をまとった斬撃へ、

更に、必殺の奥義『貫通撃!!』を仕込んだリオネル。


バージョンアップした技で、

襲って来たガーゴイル10体の弱点も見抜いた上で、あっさりと退けた。


圧倒的な強さを見せたリオネルを目の当たりにし、

モーリス、ミリアンとカミーユは大いに喜んだ。


「おお、やったな! リオ君! 魔法と魔法剣で、ガーゴイル10体を一蹴いっしゅうとはな!」


「すっご~い! リオさん」


「風弾の魔法、風の魔法剣で瞬殺っすか! 『魔法剣士リオさん』っていう言葉の響きも、ほんと最高っすよ!」


ゴーチェも、


「うお! とんでもねえ! いつもの無敵ぶりに、一層拍車がかかってねえか!」


と大いに感嘆。


いつもは冷静沈着なブレーズも、さすがに興奮を隠せない。


「ほう! ガーゴイル10体を瞬殺とは、凄いですね」


「はあ、何とかです」


「いえいえ! 見事な手際てぎわですよ、リオネル君。風弾もそうですが、最後にガーゴイルを斬った剣技は、奥義なのですか? やはり正当な剣技ではなく、君の我流のようですが……」


「はあ、そんなものです」


曖昧あいまいに答えるリオネルへ、更にブレーズの突っ込みが……


「リオネル君」


「はい」


「私は風の魔法使いではありません。ですが、風の魔法の波動は分かりますよ」


「ええっと……そうなんですか」


「はい! 私の魔力感知では、リオネル君が放った風弾も、ガーゴイルへの斬撃にも、風以外の魔法が含まれていると感じましたよ」


「え? 風以外の魔法が含まれている?」


気配を読む魔力感知で、風以外の魔法が含まれていると感じましたよって……

さすがにブレーズ様は、鋭い!


感嘆し、苦笑したリオネルは、自然に無難な答えを切り返す。


「まあ、ブレーズ様のおっしゃる通り、ちょっとだけ特別な魔力をブレンドして使いました」


「ちょっとだけ特別な魔力をブレンドですか? ははははは、リオネル君は上手い言い方をしますね」


「はあ……」


「どうやら、私の使った奥義や技が、リオネル君の持つ技へ応用するヒントになったようですね」


ズバリ、ブレーズはリオネルへ指摘した。

ここは素直に認め、お礼を返した方が良い。


「ええ、ブレーズ様のお使いになった奥義を、いろいろと参考にさせて頂きました。ありがとうございます」


「ほう、私の使った奥義をいろいろと参考にですか、分かりました」


「ええ……」


「ふむ、私の奥義を即座に自分の技に活かすとは、リオネル君は、とても素晴らしいセンスを持っていると思います」


「あ、ありがとうございます」


「ふっ……まあ、良いでしょう……さあ、探索を再開しますよ」


満足そうに笑ったブレーズは、リオネル達に探索の再開を促したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


探索を再開したリオネル達。


……次に現れたのが、上位種の不死者アンデッドマミーである。


マミーは古代王国で葬られた高貴な人間が、邪なる存在として蘇ったものだ。

全身に包帯が巻かれた姿であり、つまりは『ミイラ男』である。


この世界のマミーは魔法を使わず、基本はパワー系なのだが、

おそましい呪いの波動を発し、対象者を金縛りにする特殊なスキル『束縛の呪い』を使う。


つまり『束縛の呪い』は、リオネルの行使する『フリーズ』に近いスキルだといえよう。


さてさて!

ケルベロス、アスプからの通報、自身の魔力感知で、

マミー5体の接近を認識したリオネル。


声を大きく張り上げる。


「敵襲です! 相手はレベル42のマミー5体。距離は約500m! 全員、戦闘態勢へ入ってください!」


警報を告げつつ、リオネルは頷く。


対マミーの作戦は考えてある。


毒、石化の無効化を試したように、再び、奥義『破邪霊鎧はじゃれいがい』の

絶対的な防御効果を試すのだ。


つまり、マミーから放たれる『束縛の呪い』無効化の実験をするのだ。

不安はある。

リスクはあるが、『破邪霊鎧はじゃれいがい』習得の際、

内なる声が告げてくれた毒、石化の無効化は……正しかった。


だから信じ、敢えてマミーの呪いを真っ向から受ける!


そして……

この試みが成功したら、ミリアンとカミーユにも戦って貰う。


「ブレーズ様、不死者アンデッドのマミーならば俺が戦います。そして、ミリアンとカミーユにも経験を積む為、出張って貰います。……いかがでしょう?」


対してブレーズは、


「ええ、リオネル君が判断したのなら、お任せします」


ブレーズのOKが出た。


すかさずリオネルの指示が飛ぶ。


「ミリアン! カミーユ! 俺が導こう! 一緒にマミーと戦うぞ!」


「はい! 不死者アンデッドならば、私達姉弟は戦い慣れてるよ! 共闘、お願いします! リオさん!」

「了解っす、リオさんとの思い出作りの集大成っす! 強敵の上位不死者アンデッドマミーどもを、ガンガン倒すっすよ!」


「おお! ふたりとも、前向きだな! 提案を受けてくれて、ありがとう! まずは、作戦を告げるぞ!」


「「はいっ!」」


「まず俺が奥義、『破邪霊鎧はじゃれいがい』を発動、全員の盾となりながら、破邪聖煌拳はじゃせいこうけん奥義、『破魂拳はこんけん』を使い、攻撃する!」


「わお! 師匠直伝ししょうじきでん! 必殺の『破魂拳』出たあ!」

「リオさん同様、俺と姉さんも『破魂拳』は。大が付く得意っす!」


「だな!! そしてマミーどもが、ひるんだところを、俺の合図とともに、お前達ふたりも『破魂拳』で一斉に集中攻撃し、とどめを刺す!」


「「はいっ!」」


「但し! お前達自身がヤバイと思ったら、けして無理をせず 状況を見て、防御に徹したり、臨機応変に戦う事! それと攻撃魔法を使う場合は誤爆防止の為、絶対に事前の声かけをする事! もろもろ注意だ!」


「「はいっ!」」


「それと! 俺が盾とはなるが! 奴らから放たれる金縛り、『束縛の呪い』には要注意だ!」


ここで、モーリスが叫ぶ。


「もしも『束縛の呪い』を、マミーどもに行使されても大丈夫だ! すかさず私が、戦いに加わり、呪いを解除する! 解呪ディスペルの魔法を使ってなっ!」


「ありがとうございます! モーリスさん!」


礼を言うリオネル。


同じく、ミリアンとカミーユも、師匠の言葉がとても心強く感じたらしい。


「ありがとうございます! 師匠!」

「師匠! 大感謝っす!」


やがて……


おおおおおお……

うううううう……


と、不死者アンデッド特有の恨みの念を込めた、

ぶきみな唸り声が聞こえて来た。


そして、リオネル達一行の前に、

朽ちた包帯で覆われた不死者、マミー5体が現れたのである。

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