第214話「意外な再会」

この英雄の迷宮は、リオネル一行にとって学びと経験の場である。

リオネルはモーリスから学び、経験し、ミリアンとカミーユは、リオネルから学び経験、

モーリスもリオネルから、ミリアンとカミーユへの接し方を学んで行く……


全員がおのおの課題を持ち、自分の人生を全うする為のかてとすべく、

悩みもがき、そして挑み続ける。

まさに人生、トライアルアンドエラーである。


さてさて!

話を戻そう。


最初は威圧とフリーズハイのスキルで出現した敵の戦闘能力を喪失させ、

ミリアンとカミーユに一方的にフルボッコさせる。

存分にダメージを与えた上、敵自体にも慣れさせる。


次に自らが盾となり、毒、石化の攻撃を一身に受けながら、

ミリアンとカミーユをかばいながら、戦いに臨ませた。


その繰り返しで、リオネルは確信した。


破邪霊鎧はじゃれいがい』レベル補正プラス40の習得により、

自分には、毒と石化の攻撃は全く効果がないのだと……

つまり『内なる声』は真実を告げていた。


やはり俺は、『内なる声』に従い、そして自分の信念を貫き生きるのだと、

リオネルは改めて決意した。


一方、ミリアンとカミーユは、毒と石化の恐怖に怯え、耐えながらも、

リオネルに守られながら戦い、徐々に7階層の敵に慣れて行った。


師モーリスより、破邪聖煌拳はじゃせいこうけんで徹底的に鍛えられ、

飛びぬけた反射神経を持つ双子の姉弟は、地下7階層に出現する敵の攻撃に際して、

相手の動きを含め、全てを見切りつつあったのだ。


また購入の際、金を惜しまず購入した予防ポーションが、効果を発揮したのも大きかった。

毒と石化を8割がた防ぎ、リオネルとモーリスの解毒、石化解除、そして体力回復の治癒魔法との合わせ技で、バジリスク、コカトリス、リザードマンとも充分に戦う事が出来たのである。


いろいろあったが、地下7階層の探索も終了。

公式地図は、変更あり、なしの書き込みでいっぱいとなっていた。


そんな中、ミリアンとカミーユは喜びの声をあげていた。

おのおのが設定した課題をクリアしたのは勿論、

『数字』にもはっきりした結果が出たのである。


「リオさん、私、遂にレベル20になったよぉ! 何か、大人って感じぃ」


リオネルは可愛い妹の成長を心から祝福する。


「おお、凄いな、ミリアン。おめでとう!」


「俺もレベル18になったっす! もっと頑張って姉さんに追いつくっす!」


「おお、おめでとう。頑張れ、負けるなよ、カミーユ」


などと、可愛い妹、弟のふたりを素直にねぎらうリオネル。

ここで、モーリスが、


「リオ君、今日も無事に、地下7階層の探索は終わった。急がば回れ、依頼完遂リミットまで、時間もたっぷりある」


「ですね!」


「ゴーチェ様と話し、同意もして貰ったから、一旦、5階層へ戻ろう。そして打合せをした上で、明日は、8階層へ直行だ」


モーリスの言う通り、急がば回れ、焦りは禁物である。


「了解です!」


リオネルは納得して賛成、ミリアンとカミーユも大賛成。

一行は、敵を倒しながら、6階層を経由し、地下5階層へと戻ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


地下6階層で、ケルベロスは異界へ帰還。

従えたアスプ6体もそのまま地下5階層へ連れていけないので収納の腕輪へ。

メンバーが傍から見て、アスプ達は消えたようにしか見えなかった。


さてさて!

地下5階層へ戻って来たリオネル達。


ここから、いつものパターンが展開する。


「さあて! 今日も無事に仕事が終わった!」


そんな事を言うゴーチェを見て、ミリアンとカミーユは不満顔だ。


「え~! リオさんと私とカミーユばっかり戦ったんですけどぉ! ゴーチェ様は、はっきり言って最後方で……何もしてないし」


ミリアンの皮肉を聞いても、ゴーチェはどこ吹く風。


「いやあ、完璧に楽させて貰ったわ」


と全くこたえていない。


一方、カミーユは、


「そうっす! ゴーチェ様は全く働いていないっす! あの師匠でさえ、仕事したっすよ。動物の鳴き真似と、回復魔法のみの、超手抜きだったすけどね」


さすがにモーリスが反論する。


「こらこら、ミリアン、私を空気化して、スルーするな! カミーユ! あの師匠でさえとは何だ! ふたりとも酷い事を言うな。私は、リオ君のかげになり日向ひなたとなり、しっかりサポートしていたではないか!」


ここはさすがに、モーリスをフォローしなければ。

破邪霊鎧はじゃれいがい』はそもそも、破邪聖煌拳はじゃせいこうけん無くしては習得不可能だった。

習得の決め手となった奥義『破魂拳』を放ったのはカミーユだが、大元は拳法の師たるモーリスなのだから。


だからリオネルはきっぱりと言い放つ。


「そうですよ。今日の俺の戦績はモーリスさんの教えがあってこそです」


リオネルのお墨付きが出た。

こうなると、モーリスは反り返るくらいの『えっへんポーズ』である。


「ほら、見ろ! リオ君も、はっきりと言い切ったではないかあ」


「仕方ないなあ、リオさんがそう言うんじゃ、いやいや認めるしかないわね」


「大いに不満ですけっど、仕方ないっすね」


「なんだなんだ、お前らあ! その物言いはあ!!」


というやりとりはあったが……


「じゃあ、行くぞお」


と嫌味を言われても全くこたえていないゴーチェに連れられ、

リオネル達は、いつもの居酒屋ビストロへ。


今さら断るのもいかがなものか……である。


しかし、ここで『意外な再会』があった。

通された個室に『先客』が居たのである。


いきなり、ゴーチェが直立不動で敬礼をした。

となれば、先客の正体はして知るべし。


「「「「ブレーズ様!?」」」」


「ふ! 皆さん、頑張っているみたいですね」


面白そうに短く笑ったのは、超多忙なはずのゴーチェの上司、

冒険者ギルド総本部サブマスター、ブレーズ・シャリエだったのである。

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