第190話「このままで行こう!」

リオネルが破邪魔法の奥義『破邪霊鎧はじゃれいがい』を習得し、

モーリス、ミリアン、カミーユは大いに驚いた。


そして実際にリオネルが、

破邪霊鎧はじゃれいがい』を発動、行使すると、

その凄まじい『効能効果』を目の当たりにして、驚いた。


内なる声が告げた通り、リオネルの各種能力はビルドアップした上、

低位の不死者アンデッドは、リオネルに攻撃を仕掛けただけで、

塵となり消え、浄化されてしまうのだ。


英雄の迷宮3階フロアには、

高位の不死者アンデッド、ヴァンパイア等は、出現しない。


だから実際に試してはいないが、

高位の不死者アンデッドに対し、

圧倒的なアドバンテージとは言い切れずとも……

攻防に関しては、以前よりも「遥かに強力になった」とは言えよう。


この『破邪霊鎧はじゃれいがい』……

発動中は、結構な魔力を消費するのが難点なのだが、

リオネルの体内魔力が、常人の数倍あるのと、

回復力がこれまた凄まじい。

全く、ノープロブレムであった。


さてさて!

3人は、リオネルの持つ底知れぬ才能に驚くとともに、凄く『前向き』となった。

中でも、ミリアンとカミーユは、

「3階の未探索部分に関して、自分達に前衛をやらせてくれ」と自ら申し出るくらいである。


その原因とは……ふたりが、リオネルの『驚異的な能力覚醒』を、

「アシストした」満足感によるものだ。


全属性魔法使用者オールラウンダー覚醒をアシストした姉ミリアンに、

大いに『引け目』をかんじていた弟のカミーユであったが……


自らが撃った破邪聖煌拳はじゃせいこうけん奥義、

破魂拳はこんけん』により、

リオネルが破邪魔法の奥義『破邪霊鎧はじゃれいがい』を習得、

姉に対する引け目が完全になくなったのだ。


という事で、姉弟ふたりとも『やる気満々』

シーフ、盾、攻撃役を兼ねる先導のケルベロスも、

『亡者の不死者アンデッド』に関しては圧倒的な優位性がある為、

リオネルは、ミリアンとカミーユに『前衛』を任せる事にした。


という事で、

フォーメーションは一時変更。

魔獣ケルベロス先導は、変わらずとも、

2番手、3番手の前衛ミリアンとカミーユが張り切って前を歩き、

リオネルが中段、モーリスが最後方の殿しんがりという形となった。


空中を飛び回るウィルオウィスプ。

更に姿を消して、所在がつかみにくいポルターガイスト。

……に、関しては中段のリオネルがフォローした。


また、シーフ修行中のカミーユは、敵の捕捉を充分に行えず、

不十分な情報を伝え、ミリアンから度々叱られたが、

これまた中段のリオネルがふたりへ、しばしば正確な情報提供のフォローをしたので、敵に付け込まれる事無く、どうにか戦う事が出来たのである。


結局、基本的には、ゾンビ、亡霊、スケルトンは、問題なくミリアンとカミーユが、

破邪聖煌拳はじゃせいこうけん奥義、『破魂拳』を駆使しながら、撃破。


またミリアンはメイス、葬送魔法を込めた魔法杖を。

カミーユはスクラマサクスとシールドバッシュを。

それぞれ織り交ぜながら、敵を圧倒し、討伐して行った。


そして……

地下3階層フロアの探索、確認も無事に終わったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


地下3階層フロアの探索、確認も無事に終わり……

リオネル達一行は、地下4階層への階段付近の小ホールで休憩していた。


小ホールには、他のクランがいくつか居たが、

ルーキーキラーのような殺気がないし、馴れ馴れしい者も居ない。

なので、4人全員がリラックスしていた。


ちなみに魔獣ケルベロスは、一旦異界へ帰還させて居る。

こちらも休憩を兼ねてである。


なんやかんやで、時間は午後3時過ぎ……

「今後の予定をどうするのか?」という、打合せも行われている。


モーリスが嬉しそうに言う。

道すがら、ミリアンとカミーユが更にやる気が出たのは、

「リオ君、君のお陰だよ」と、礼を告げていた。


今度は、ミリアンとカミーユをねぎらう。


「うむ! ミリアン、カミーユ、ふたりとも本当に良くやった。たっぷり実戦経験を積んだな」


「うん! 師匠、私は、まだまだ気合ばっちりよ!」


「師匠! 俺もっす! 余力充分、余裕っす!」


ここでミリアンがカミーユへ突っ込む。


「カミーユ、何が余裕よ。シーフのあんたは、もう少し探知の確度をあげなさい!」


「うっわ! 姉さん申し訳ないっすう!」


ミリアンから叱られ、頭をかき、恥じ入るカミーユ。


機嫌が良いモーリスは「それも愛嬌」とばかりに微笑む。


「うむうむ! まあ、良い! ところで次の地下4階層は、上位種が混在するゴブリンオンリーのフロア、通称、ゴブリン王国だな」


そう、昨夜も公式地図を前に打合せして、全員が認識しているが、

地下4階層は、上位種が混在するゴブリンオンリーのフロア、

通称、『ゴブリン王国』である。


まあ王国といっても迷宮のワンフロア。

リオネルが無双した広大な『ゴブリン渓谷』の規模には到底及ばない。


一方、ミリアンとカミーユは、何度もゴブリン戦を経験しているが、

ゴブリン戦には圧倒的な強さを見せるリオネルが居るので、余裕しゃくしゃくだ。


「ゴブリンなら、『天敵』リオさんが居るから、全然ノープロブレムね♡」

「リオさんなら、対ゴブリンは戦い慣れているから、『完璧に無双』っすね! 当然お任せっす!」


「と、ふたりは言っているが……リオ君、どうする?」


と、モーリスが笑顔で尋ねて来た。


どうするとは、フォーメーションを含む『戦い方の方針』に関してであろう。


対して、リオネルの答えは既に決まっている。


「現状のまま、このままで、行こうと思っています。ミリアンとカミーユに前衛を任せたいです」


「ふむ、理由は?」


モーリスは再び、教師然として尋ねて来る。

対してリオネルが、


「ふたりとも、体力、魔力に充分余裕がありますし、モチベーションも高いです。ゴブリン戦の経験も充分にあるし、ゴブリンシャーマンを始めとした上位種の戦い方は先ほど同様、俺が援護とフォローをします。結果、現状のフォーメーションと戦法で問題ないと思いますよ」


と、よどみなく答えると、モーリスは嬉しそうに破顔一笑した。


「ははははは。だな! 私も大が付く賛成だ。で、ミリアンとカミーユ自身は、どうだ?」


「全然OK!」

「問題なしっす!」


ここで、リオネルが「はい!」と挙手をした。


「但し、時間を切りましょう。現在、時間は午後3時過ぎ。……午後5時まで地下4階層で探索しつつ、ゴブリンの討伐を行い、時間が来たら、5階の安全地帯へ移動。翌日朝から、再度、残りの4階層エリアを探索するのが宜しいと思います」


ミリアンとカミーユの為にも、けして無理はしない。

そして、リミットを切った方が気持ちに余裕が出るし、集中も出来る。


リオネルの提案を聞き、様々な意図を読み取り、モーリスは嬉しそうに頷く。


「うむうむ! そのリオ君の意見も賢明でグッドだ。よし! では、4階層は、5時までの探索且つ討伐としよう」


「モーリスさん、ありがとうございます」


そう礼を告げるリオネルに再び頷いたモーリスは、


「うむ! では、ゴブリンシャーマンを始めとした上位種の戦い方に関して、ゴブリン渓谷を無双したリオ君に詳しくレクチャーして貰おう」


と、いう事で、リオネル達は続いて、対ゴブリン戦の打合せをしたのである。

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