第174話「虫バトル!」
議論バトルやら、なんやかんやあったが……
英雄の迷宮地下2階層の探索は再開された。
魔獣ケルベロスを先行させるフォーメーションは基本変わらない。
だが、番手のリオネルが突出する形となり、少し後ろにカミーユ、ミリアン、そしてモーリスが続く。
ケルベロスには『理由』を話し、洞窟のゴブリン討伐同様、敢えて『勢子』をやって貰う事にした。
「虫が苦手だ」と言ったら、「もう少し強くなれ」とケルベロスには少し呆れられたのだが……余計やる気になった。
「よし! 改めて自分へ言おう! 俺の戦いはこれからだ! 英雄の迷宮で、
と、自身を熱く鼓舞。
それに発想も転換する。
ことわざも次々に浮かんで来る。
死中に活あり……死を待つくらい絶望的な状態の中にあっても、なお生きるべき道を捜し求める。 また、難局を打開するために、あえて危険な状況の中に飛び込んで行く。
肉を切らせて骨を断つ……自分もダメージを受ける代わりに、相手にそれ以上に痛恨の一撃を与える。 捨て身で敵に勝つ。
逆手に取る……機転を利かせて不利な状況を活かす!
却って好機到来!
ピンチは、逆にチャンス!
そうだ!
この戦いは、虫どもに対し、
俺が習得したあらゆるスキルや特技が通用するのか、
試す、最大の『チャンス』じゃないか!
気合をみなぎらせ、歩き出したリオネルに対し、地下2階層の虫軍団は、
ケルベロスから追い立てられ、容赦なく襲って来た。
まずジャイアントアント、これは体長50cmにもなる巨大な漆黒の蟻であり、
当然ながら、群れで襲って来た。
その数、約20匹。
口から、通常の蟻と同じく、『蟻酸』を吐く。
当然毒性は圧倒的に強く、触れるとダメージを受ける。
普通はとても小さな蟻も、ここまで大きいと肉食獣となるし、見た目もグロイ。
けして平気ではない。
しかし、コードネームGに比べれば、全然マシだ。
リオネルは『蟻酸』の直撃を受けないよう、注意し間合いを取る。
まず威圧を行う。
ミリアンのナンパ撃退では、功を奏した特技だ。
しかし、ジャイアントアントは一旦止まったものの、再び怯えを見せず進軍して来る。
理由は不明だが、人間や動物、そしてゴブリンなどの魔物に比べ効果が薄いようだ。
で、あれば特異スキル『フリーズハイ』レベル補正プラス40を発動。
連射する。
これは効果があった!
襲って来た全てのジャイアントアントは動きを止めた。
確かジャイアントアントのレベルは10~12……
『フリーズハイ』レベル補正プラス40は、
リオネルの『レベル16』を考えれば、レベル55までの動きを5分止められる。
相手により無効化される事もあるというが、通用すれば楽勝な相手だ。
ちなみに有効時間、射程、連射等のスペックは補正プラス15と変わらない。
通用する相手のレベルが変わっただけだ。
動きがリオネルはまず風の魔法『風弾』で潰し、数を減らすと……
愛用のスクラマサクスを振りかざし、ジャイアントアントを切り刻んで行く。
そして動きが止まっているうちに、炎弾、火壁を発動。
残りのジャイアントアントを焼き尽くしたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
……次に現れたのは、黄色に黒の配色、
スズメバチを思い切り大きくしたような肉食蜂、
ジャイアントビー20体の群れである。
これまた体長30cmにもなる巨大な蜂であり、刺されるとマヒしてしまう、
神経毒が武器であり、獲物をかみ砕く強力なあごを持つ。
動きも敏捷であり、攻撃魔法も当たりにくいから難儀な敵であるが、厚手の金属製の鎧で毒針を防ぐ事が出来る。
なので、金属鎧に身を固めた盾役、攻撃役が撃破するのが通例である。
しかし、リオネル達一行は全員が革鎧を装着していた。
魔法で強化しているとはいえ、完全には毒針を防げない。
ここはまた、『フリーズハイ』レベル補正プラス40の出番である。
リオネルが連続発動すると、身体を硬直させ、バタバタバタと面白いように落ちて来た。
よし!
他のスキルも試してやれ!
いつかの強盗と一緒だ!
人間でない分、人を襲う魔物だから! 思い切り試せる!
特異スキル『シャットダウン』レベル補正プラス40!
特異スキル『フォースドターミネィション』レベル補正プラス40!
『フォースドターミネィション』はやはり連射は不可であったが、ばっちり効いた。
風の魔法で潰し、スクラマサクスで斬り刻む。
そうこうしているうち、新手のジャイアントビー20体が現れる。
既にジャイアントビーの移動速度を知り、見切ったリオネルは、
自身の移動速度、俊敏さのギアを上げ、攻撃をかわしながら……
敢えて、フリーズのスキルを行使せず、風矢の魔法で撃ち落とした。
撃ち落としたジャイアントビーは火壁で焼き尽くす。
そして次に現れたのが、全身が緑色をしたミドルマンティス3体である。
体長は約2m……
上位種ジャイアントマンティスの5mほどではないが、とんでもなく大きなカマキリである。
普通のカマキリ同様、威嚇のファイティングポーズを取る。
ジャイアントビー以上に肉食獣! という趣きである。
しかし、蟻や蜂と同様、グロイが怖くはない!
リオネルは先に2体をフリーズで動きを止め、風の魔法で倒した後、
スクラマサクスで、相手の鎌と戦う余裕さえ見せた。
良いトレーニングになると言わんばかりに……
カウンターで、ミドルマンティスの頭を斬り落とし、絶命させたリオネルは、
またも火壁で、3体を焼いた。
戦いを重ね、虫に対する苦手意識もだいぶ薄れて来た。
リオネルの戦いぶりを喜び、後方で待機モーリス、ミリアン、カミーユが駆け寄って来た。
「やったじゃないか、リオ君。威圧で相手の動きを止めて燃やすなんて凄いぞ! 火の使用リスクを案じた、私の懸念は杞憂に終わったようだな」
「リオさん、素敵♡」
「もう、虫は平気っすね!」
だが、まだ肝心の敵が現れていない。
そう、コードネームGと、リオネルはまだ戦っていないのだ。
と、その時。
念話でケルベロスの声が聞こえる。
『
……笑われて……失笑されてしまった。
しかし、リオネルはそれどころではない。
『い、い、一番苦手な奴!? りょ、了解っ!』
く、来る!!
や、奴らが!!
い、いよいよ来るっ!!
気合を入れ直したリオネルの索敵は……
急接近する『コードネームG』複数の気配をしっかり捉えていたのである。
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