第143話「ついにざまあ! パートⅡ!」

王立墓地の管理人代行は、午後3時から明け方4時までの徹夜勤務となった。

最後にモーリスが結界を張り、依頼を完遂したリオネル達は徹夜明けの当日と、

その翌日いっぱいを自宅でゆっくり休養に充てた。


そして休日明け、午前7時30分、全員が馬車で冒険者ギルド総本部へ。

まずは依頼完遂の報告と精算を行う。


1階フロアの業務カウンターは例によって大混雑していたが……

サブマスター、ブレーズの配慮で、エステル・アゼマが優先して対応。

待ち時間がほどんどなく、精算手続きを行う事が出来た。


気になる受け取り金額は、モーリスが、分配する依頼完遂料一時預かりの金貨100枚に、討伐料115枚を加え215枚。

リオネルは討伐料155枚。


そして初報酬という事で、ミリアンとカミーユは大喜び。

ミリアンが討伐料金貨50枚、カミーユも討伐料金貨45枚を受け取って、更に喜びは倍増した。


そして全員が当座の現金だけ受け取り、新システムで残金をプールした。

ちなみに、モーリスが受け取った依頼完遂の報酬金貨100枚は、全員で相談の上、

家賃の支払いを含めた当座の生活費とした。


さてさて!

ここからこの日、4人は別行動となる。

ミリアンとカミーユは、エステルに連れられ、それぞれ別の講座を受講。

講座の開始時間が迫っているので、急ぎ移動した。


リオネルも『召喚術』の応用を受講する。

チートスキル『エヴォリューシオ』の効果により、

習得済みの『召喚魔法初級』から派生し、『召喚魔法上級』レベル補正プラス50を習得した。

だが、あくまで感覚的な部分が多い。

しっかり講義を受け、理論的な知識も改めて叩き込みたいと考えたのである。


また「ケルベロス以外も召喚したい」という希望もあるし、

元々召喚術の基礎を終了した時点で予約を入れていた。

なので、「渡りに船」という事でもあった。


という事で、リオネル、ミリアン、カミーユは午前中の講義終了後に一旦集合、

ギルド内でランチ。

午後に入っても、じっくり講義を受講。

本日の講義が終了後、ワレバッドの街の見物をして、帰宅する事となっている。


一方、モーリスはひとり帰宅する。

長椅子ソファに座るリオネルに、「ひらひら」と手を振った。


「じゃあ、リオ君。馬車でひと足先に戻る。ミリアンとカミーユを頼む」


「了解です」


「私は帰ったら、今日もゆっくり休むよ。40歳を過ぎるとやはり君達、若い子と同じようにはいかん。それと途中で料理をテイクアウトして持ち帰っておくよ。晩飯はそれでOKだ」


「はい、お気遣い頂きありがとうございます」


「はははは、その代わり、購入する料理や飲み物は任せてくれ。いつもリオ君にメシの世話をして貰っているからな。今日は少しでも楽をしてくれよ」


「はい、助かります」


という事で、モーリスは去って行った。

リオネルもあと20分ほどで、講義開始の時刻となる。

もう少ししたら、教室へ移動しようとしたその時。


知った気配が1階フロアへ入って来た。

この気配は……


「お、おいっ!? な、何だ! しばらく顔を見ないと思ったら、あいつ、こんな場所に居やがるぜ!」


「おおっ、本当だっ! 久々にゴミ屑の顔を見るな! 場違いもはなはだしい野郎だぜ。くそ使えないくせによ!」


しゃべくりながら入って来て、目ざとくリオネルを見つけた少年がふたり……

何と! 王都オルドルの魔法学校で「超劣等生だ」とリオネルを最も馬鹿にした、

かつての同級生ふたりだったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


元同級生のふたりは、「暇つぶしでいじるのに格好の相手を見つけた!」

とばかりに近寄って来て、話しかけて来た。


「おい、くそのリオネル、お前、冒険者なんかやってたのか」


「どうせ他に就職口がなく、仕方なくって事だろ、あははははは!」


「だな! 俺達はさ、バッチリ就職が決まって、つなぎの短期バイトだよ。小遣い稼ぎで、ゴブリン倒せばOKって事で、片手間に冒険者をやってるんだけどな」


ふたりが「短期バイトで、片手間に冒険者をやっている」と聞き、リオネルの表情が曇る。


「お前ら、冒険者を、そんな『いい加減な気持ち』でやらない方が良いぞ」


「おお、リオネル! てめえ、くそのくせに、生意気言うじゃんか! 俺達はもうランクEだぞ! 無能なお前なんか、超雑魚のスライムくらいしか倒せない、最底辺のゴミ屑のくせによ!」


「おいリオネル! どうせ、グズのお前はランクF、戦闘なしの雑用担当なんだろ。土下座してお願いしたら、俺達のクランで雇ってやっても構わないぜ。当然! 荷物持ちだけどよ!」


「でもよ! 体力全くナッシングのひ弱野郎でダメなコイツじゃ、荷物持ちも務まらないぜ!」


「そうだよなあ! あははははは!」


「あ~ははははははは! ば~かあ! 死ね!」


ふたりが罵詈雑言の上、大きな声で嘲笑したその時。


「おお、リオネル君、おはよう!」


「リオネル様! おはようございます!」


傍を通り、声をかけて来たのは……

サブマスターのブレーズ・シャリエと秘書のクローディーヌ・ボードレールである。

ふたりは、これから外出するところらしい。


リオネルは、「すっく!」と立ち、うやうやしく礼をした。


「サブマスター、そしてクローディーヌさん、おはようございます!」


大いにびっくりしたのは元同級生のふたりである。


信じられない光景であった。


騎士爵でもあるサブマスターと美しいストロベリーブロンドの秘書が、

馬鹿にしていたリオネルへ、親し気に話しかけているのだ。


「な!!?? サ、サ、サブマスターああ!!?? ま、まさか! ブ、ブレーズ・シャリエ様ああ!!??」


「サ、サ、サブマスターって!!?? あ、あ、あの有名な! け、け、剣聖のぉぉ!!??」


驚愕する元同級生ふたりをしり目に、ブレーズとクローディーヌは、

リオネルへ話を続ける。


「リオネル君、良くやった! 先日の依頼完遂、お疲れ様。数多あまた不死者アンデッドを鬼のように倒したそうだな。さすが私が見込んだ『荒くれぼっち』だ! 業務部から詳細な報告が入っているよ」


「うふふ、さすがランカーのリオネル様! もうまもなくランクAですねっ! 素敵ですっ♡」


「はああっっ!!? リ、リ、リオネルが!? ア、ア、不死者アンデッドをぉぉ!!?? お、お、鬼のように倒したあ!!??」


「ば、ば、ば、ば、馬鹿なあっっ!!?? リ、リ、リオネルがランカー!!?? そ、そ、そ、それもっ!? ももも、もう、ま、ま、ま、間もなくランクAぇぇ!!??」


「ああ、リオネル君。相変わらずご多忙で時間がままないらしいが、総マスターの、ローランド・コルドウェル閣下も君に早く会いたいとおっしゃっていたぞ」


「はい! サブマスターのおっしゃる通りです! 閣下のご都合がついたら、閣下の秘書からすぐ連絡を貰える事になっていますよ!」


「はああっ!!?? リ、リオネルにぃぃ!!?? あ、会いたいぃぃぃ!!??

ロ、ロ、ローランド・コルドウェル伯爵があ!!??」


「そ、そ、そ、総マスターがあ!!?? ワ、ワ、ワ、ワレバッドのぉ!!?? ご、ご、ご領主さまがああ!!??」 


リオネルも、驚愕しっぱなしの元同級生を完全にスルー。


「サブマスター、クローディーヌさん、とても光栄だと、閣下へお伝えください!」


「ああ、閣下も君には大いに期待しているとおっしゃっていた」


「リオネル様は魔法使いとして、マルチで素晴らしい才能をお持ちだと思いますよぉ♡」


こうして……

リオネルと、ブレーズ、クローディーヌは数分間立ち話をした。


数分後、ブレーズとクローディーヌが去った後、周囲を見れば……

いつの間にか元同級生のふたりは居なくなっていた……


元同級生のふたりは、ばつが悪くなり、「こそこそ」と負け犬のように逃げ出したのである。


その後……リオネルが伝え聞いた話だと、

元同級生のふたりは、遊び半分で依頼を遂行中、ゴブリンの群れに襲われて大けがをしたという。

内緒で冒険者のバイトをしていた事もあって、不心得者! うかつ者! 

と魔法学校と内定先の職場から厳しく叱責され……

挙句の果てに「決定していた就職も取り消し」……になったらしい。


まさに、ざまあ!!!

まさに因果応報!!!


リオネルを散々おとしめ、最底辺のゴミ屑扱いした天罰が、

元同級生ふたりへ、「ずがががーん!!」と下ったのである。

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