第109話「洞窟探索の手ほどき」
改めて作戦会議が始まった。
洞窟突入前は、本日行ったバトルを踏襲しようという事で意見が一致している。
「リオさん、この前、ほんの少し入ったけど、どきどきしちゃった。洞窟探索の事、いろいろ教えて♡」
「そうっす! 俺もどきどきしたっす。いろいろ、リオさんから教わりたいっす!」
「うむ、リオ君。私にもいろいろ、教えてくれないか」
「いろいろ教えてくれ」が3連発。
微笑んだリオネルは、当然快諾する。
「分かりました。話すのは、俺の経験と、冒険者ギルド教官の受け売りなんで、それで宜しければ……モーリスさんはご存じの事も多いでしょうから、だいぶ重複すると思いますが」
「ああ、全然構わない。昔習った事の復習だと思い、拝聴するよ」
「ええ、お願い! リオさん!」
「お願いしまっす!」
という事で、リオネルが講師役となり、洞窟探索のレクチャーを行う事となった。
ゴブリン渓谷での洞窟探索の経験がメインとなる。
説明するロジックは、王都で受講した冒険者ギルド講座の受け売りなのだが……
ちなみに、「質問は最後に」という事で、まずはひと通り聞いて貰う。
「例えて言えば、洞窟探索は真っ暗闇で、切り立った断崖絶壁において、つまさき立ちで登山をしているくらい、非常に危険だと思ってください」
「「「……………」」」
「やるべき事、こころがける事は、まず帰還の確保です。という事で、照明魔法に、『帰還マーキング』を施します」
「「「……………」」」
「洞窟、迷宮の出入り口、そして途中の任意の場所へ、魔力を込めた『マーキング印』を施しておきます。帰還する際、『魔導光球』を放ち、マーキング印へ向かうよう命じれば、双方が反応し合い、道に迷った術者を導いてくれるのです。これで迷うリスクが大幅に減らせます」
「「「……………」」」
「照明魔法が使えない場合は、携帯魔導灯やたいまつ等を用いながら、魔法蛍光薬で、こまめに目印をつけておくことをお勧めします。あと念の為、公的な洞窟、個人所有の洞窟は汚したり、壊したりするのは厳禁ですから。まあ、一応言っておきます」
「「「……………」」」
「さあ、いよいよ探索です。地図がない未知の洞窟の場合は、勝手が全く分かりませんので、敵襲以外に『歩行』にも注意してください」
「「「……………」」」
「まず進む際は、広く分かりやすい主洞を行く事。主洞とは道でいえば幹線道路の事です。洞窟内部は複雑な構造になっている事が多いのです。つい好奇心にかられ、狭く入り組んだ支道や横道へ入る行動は迷う原因になるので厳禁です。単独行動も同じく厳禁ですし、俺の指示には必ず従ってください」
「「「……………」」」
「そして、登山の例え通り、洞窟の通路は平坦ではありません。暗い上に、穴が開いていたり、崩れやすい場所もあり、狭い。天井には鋭い突起物がある場合も多いので、頭上、足元、自分の周囲を充分に注意して怪我をしないようにしてください」
「「「……………」」」
リオネルの説明は丁寧で簡潔である。
しかしまだまだ、洞窟の歩き方にすぎない。
更にリオネルはいろいろと説明した上、質問に答え、
『洞窟探索講座』の『第一部』は終了したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
続いて、リオネルの『講座』は、『第二部』へ移行する。
「洞窟歩行の基礎はざっくりとご理解出来たと思いますので、次に戦闘の際、注意する事をお話します」
「「「……………」」」
「いろいろ、ご意見はあると思いますが……」
リオネルは前置きして説明する。
「基本的には地上と同じですね……ですが視界が悪い洞窟の場合は特に、敵の接近、行動をいち早くキャッチ。常に先手を打てるよう、あらゆる情報を収集、取捨選択。その情報を基に現状分析、現場で対応出来る判断力、行動力が必要です」
「「「……………」」」
「うんうん」と納得して頷くモーリス以外、
ミリアンとカミーユは「リオネルの話が難しい」という表情である。
微笑んだリオネルは、ミリアンとカミーユへ言う。
「大事なのは、敵の存在を先に知る事さ。位置が分かればなお良い。個人差はあるが、魔法使いなら魔力感知、シーフならば、気配を読む危機回避能力を最大限使い、敵から先に攻撃を受ける事を防ぐようにするんだ」
リオネルが言い、ミリアンとカミーユを再度見やれば、ふたりとも頷いていた。
どうやら理解してくれたようである。
「逆に考えれば、常に敵に存在を知られないようにし、こちらから先制攻撃をする事を考える。隙も極力見せないよう注意する。ミスは命取りになってしまうからな」
リオネルの話を、モーリス、ミリアン、カミーユは真剣に聞いていた。
3人のうちでは、特にカミーユの喰い付きが凄い。
リオネルに諭された事が身に染みたに違いない。
「出会い頭で敵といきなり遭遇する事も、極力避ける。索敵役は、正確な情報を得て、正確な判断をし、正確に伝えなければならない。……では次に俺達のメンバー構成を考えた攻防に関してお話しします」
リオネルの話はこの後、しばらく続いた。
話の後は質問タイムとなり……
4人は結構な時間まで、じっくりと会話を交わしたのである。
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