第96話「連携プレー」

洞窟出入り口前には……

リオネル、モーリス、ミリアンが攻撃魔法で倒したゴブリン達が折り重なって倒れていた。

まさに『死屍累々ししるいるい』の趣きである。

魔導発煙筒の白煙は出ていたが、後続のゴブリンどもがすぐに出て来る気配はない。


リオネルは索敵を行使するが、反応がやや遠い……

ゴブリンどもはまだ少し奥に居るようだ。


「やったな!」

「やったよ!」

「やったあ!」


「やりましたね。とりあえず『初戦は快勝』……というところでしょうか」


しかし!

小さな勝利の余韻も一瞬で終わる。

ゴブリンはまだまだ、残っているのだ。


……ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう!


「そろそろ『次』が来ますよ、全員スタンバイしてください!」


「「「了解!」」」


ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう!

ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう!


ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう!

ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう!


うじゃうじゃうじゃ! うじゃうじゃうじゃ! うじゃうじゃうじゃ! 

と、再び!

おびただしいゴブリンの大群が、洞窟の入り口に現れた。


再び!

モーリスの岩弾、ミリアンの氷矢、リオネルの風矢が放たれる。


どしゅっ! どしゅっ! どしゅっ! どしゅっ! どしゅっ!


ぎゃっぴい!? ひええん! くおおん! ひいいん! うわぁおおん!


ひょおっ! ひょおっ! ひょおっ!


ぎゃっぴい!? ひええん! くおおん! 


ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお!!

ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお!!

ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお!!

ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお!!


ぎゃっぴい!? ひええん! くおおん! ひいいん! うわぁおおん!

ぎゃっぴい!? ひええん! くおおん! ひいいん! うわぁおおん!

ぎゃっぴい!? ひええん! くおおん! ひいいん! うわぁおおん!

ぎゃっぴい!? ひええん! くおおん! ひいいん! うわぁおおん!


リオネル達は、同じようにゴブリンどもを討伐したのだ。


……同じ事が、更にあと3回あり、計5回繰り返された。


リオネル達は、1回100体余りの襲撃を5回、

見事!

総計500体以上のゴブリンをほふったのである。


「よし!」


「ふむ、順調だな!」

「絶好調!」

「そうそう!」


しかし、「好事魔多し」ともいう。

つまり、物事がうまく進んでいる時ほど、落とし穴があるものだ。


リオネル達が勝利の余韻よいんに浸っていたその時。


ぶひひひひひんんん!!!

ぶひひひひひんんん!!!


けたたましい馬のいななきが、辺りに大きく鳴り響いた。


リオネル達が見やれば……

少し離れた場所の木につないだ馬が暴れている。


「い、いっけねぇ!」


『馬番』のカミーユがすっ飛んで行った。


本来、馬は臆病な動物だ。

リオネル達とゴブリンどもの戦いの様子を見て、音を聞き、気配を感じ、

怯えたに違いない。


「間が悪い」という言葉がある。

その言葉がぴったりな事件が起こった。


後続のゴブリンの気配が……リオネルの『索敵』に感じられたのだ。


「モーリスさん、ミリアン、また次が来ますよ! スタンバイしてください!」


リオネルが呼びかけても、ふたりはカミーユを気にしている。


「むむ! 了解! だが馬をなだめに行ったカミーユは大丈夫なのか?」

「カ、カミーユぅ!」


ぶひひひひひんんん!!!

ぶひひひひひんんん!!!


一方、カミーユは慌てていた。

4頭の馬が立ち上がって暴れるのに、手がつけられない状態なのだ。

人間の力では敵わないし、下手にちょっかいを出せば、蹴られてしまう。


「どうどうどう! ち、ちっくしょ~、お前達ぃ、お、大人しくしろぉ!」


ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう!

ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう!


ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう!

ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう!


不気味な不気味な唸り声が聞こえて来る。


ここで、いまだ白煙が出ている洞窟の出入り口より、ゴブリンどもが現れた。


これまでに現れた個体数の中では最も多かった。

ざっと見て、200体は居るに違いない。


リオネルはゴブリンどもを見た。

モーリスと、ミリアンを見た。

そして、「暴れ馬にてこずる」カミーユを見た。


リオネルは、モーリスとミリアンへ呼びかける。


「モーリスさん、ミリアン、敵ですよ! 集中しましょう!」


「お、おう!」

「分かったわ!」


気持ちを引き締め直すふたり。


この間に、ぱぱぱぱぱぱ! とリオネルは思考を巡らせる。

『考え』があっという間にまとまった。


まずは特異スキル『フリーズハイ』レベル補正プラス15を、

5連射! 5連射! 5連射! 5連射! 5連射! 5連射!

威圧を行う暇はない!


ゴブリンどもが身体を束縛され、崩れ落ちる。

後続は仲間につまずき、こける! こける! こける!


「モーリスさん、岩弾を撃たず、スタンバイしてください」


「お、おお、了解!」


「ミリアン、攻撃魔法、最大連射」


「了解! 氷矢!」


ひょおっ! ひょおっ! ひょおっ!


ぎゃひ! どべっ! がひいっ!


ゴブリンどもは悲鳴をあげ、息絶えた。


次は、リオネルが『風矢』を行使する。


「リオネル、『風矢』行きま~すっ!」


ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお!!

ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお!!

ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお!!

ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお!!


ぎゃひ! どべっ! がひいっ! ぎゃひ! どべっ! がひいっ!

ぎゃひ! どべっ! がひいっ! ぎゃひ! どべっ! がひいっ!


ぎゃひ! どべっ! がひいっ! ぎゃひ! どべっ! がひいっ!

ぎゃひ! どべっ! がひいっ! ぎゃひ! どべっ! がひいっ!


リオネルが放った大量の風矢は、次々とゴブリンどもを射抜き、その命を奪って行く。


「モーリスさん、宜しいですか? 俺が移動してカミーユをフォローします! ゴブリンどもの手前に『足止め用の土壁』を宜しく! 出入り口と同サイズでっ! 洞窟出入り口を土壁で三方から囲ってしまうんです!」


「お、おお! そういう事か! りょ、了解!……ビナー、ゲブラー、母なる大地よ! 我らに仇なす侵入者を防ぐべく、大いなる力を与えよ!」


ぼこぼこぼこぼこ! ぼこぼこぼこぼこ! ぼこぼこぼこぼこ!


ここで更に、陣地の手前に、リオネルは防御魔法『風の壁』を張り巡らす。

モーリスの土壁とともに、迫り来るゴブリンに対し、二重の防壁とするのだ。


超バージョンアップした『風の壁』は、

長さ20m、高さ10mの巨壁を張り巡らす事が可能。

継続時間も、魔力は余計に消費するが30分までOKである。


もしもモーリスの土壁を乗り越えて、陣地に迫っても攻撃を阻むはずだ。

これで少しは時間を稼げる。

その間にカミーユをフォローするのだ。


それに万が一、二重の防壁をかいくぐり、数体くらい陣地へ来ても、大丈夫。

モーリスが習得した破邪聖煌拳はじゃせいこうけんがさく裂するであろう。

ミリアンも弟を守る為、必死となるはずだ。


モーリスとミリアンが敵を倒すイメージが浮かび、大きく頷いたリオネル。


「モーリスさん、ミリアン、そちらは一旦お任せします。俺、カミーユをフォローしますからあ!」


「おお! リオ君、カミーユを頼む! こっちは任せろ! 上手い具合に残存部隊は足止めされとるぞぉ!」

「リオさん、弟をお願いしますっ!」


「任せて!」


リオネルは鋭く叫ぶと、馬がつながれている後方へ、勢い良く駆け出していたのである。

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