第95話「初戦、勝利!」

洞窟から「もくもく」と白煙が上がり……

間を置かず、


洞窟の奥から……

悲鳴に近い人外の叫び声が聞こえて来る。


リオネルの索敵に『大量の魔力』を感じる。


……ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう!


「そろそろ奴らが来ますよ、全員スタンバイしてください!」


「「「了解!」」」


4対2,000……

これから激戦が始まるとあり、ランカーのモーリスも緊張気味である。

先ほどひとりで1,000体を蹴散らしたリオネルも3人に気を遣いながら戦うのは勝手が違って来る。


魔法が使えないカミーユ以外は全員体内魔力を上げ始める。


このわずかな時間に……

リオネルは事前に告げてある作戦を、メンバー全員へ復唱する。


「モーリスさん、岩弾のサイズは抑えめに、ご自分の拳より、『やや大きいくらい』でお願いします。それと洞窟の入り口に造る土壁分の魔力は必ず温存してください」


「了解!」


「ミリアン、慌てるなよ。洞窟の入り口、ど真ん中を狙え。奴らは土壁にはばまれ、密集している。勝手に当たってくれる」


「りょ、了解!」


「カミーユ、馬は敏感な生き物で俺達の生命線だ。前方に注意しながらも、様子をしっかり見ていてくれ。馬が興奮したり、パニックになってやばそうだったら、戦闘は任せて『なだめ』に行け、そして守るんだ」


「りょ、了解!」


「モーリスさん、ミリアン。まず俺が軽く魔法を撃ち、奴らの注意を向けます。その上で威圧し、足止めします。そしてふたりの名前を呼び、撃て! と合図をしますから、そのタイミングで交互に魔法を撃ってください!」


「「了解!」」


これで完全に戦闘準備がスタンバイとなった。


そして、洞窟から漏れ出でる白煙は、ますます激しくなり……


ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう!

ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう!


ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう!

ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう!


うじゃうじゃうじゃ! うじゃうじゃうじゃ! うじゃうじゃうじゃ! 

と、おびただしいゴブリンの大群が、洞窟の入り口に現れた。


おおまかだが、数はざっと100体を超えるくらいだ。


唐辛子を含んだ白煙が相当に痛いのであろう、ゴブリンどもはほぼ全てが目をこすっていた。


3人には伝えていないが、ゴブリンどもの足止めには、スキルと威圧を最大限行使するつもりだ。

傍から見れば、混在して行使しても見分けはつかない。


リオネルは、まず特異スキル『フリーズハイ』レベル補正プラス15を連射する。

有効時間は5分、射程は500mへ延長、連射は5回。

それを淡々と繰り返す。

『フリーズハイ』をかいくぐって、こちらに向かって来る者は

ギフトスキル『ゴブリンハンター』の『威圧』で足止めするのだ。


どしゅ! どしゅ!


リオネルが軽く風弾を撃った。


ぎゃう!? おうう!? ひえっ!? わうお!?


ここでようやく、スキルの影響を受けていないゴブリンどもの何体かが、リオネル達に気付いた。


ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう、ぶぎゃう!


驚きの声を上げると、リオネル達を威嚇する。


ごはあ! ぐあお! がああ! きいあっ! ごおお! かああっ!


「くおらっ!」


気合一発!!

リオネルが放った魔力と視線が、迫り来るゴブリン達を「びたっ!」と止めた。


これで、洞窟入口に現れたゴブリンどもの半数以上が戦闘不能となる。


「今だっ! モーリスさん、撃てっ!」


おう!」


どしゅっ! どしゅっ! どしゅっ! どしゅっ! どしゅっ!


ぎゃっぴい!? ひええん! くおおん! ひいいん! うわぁおおん!


リオネルの指示通り、拳大の岩弾に砕かれ、ゴブリンは絶命した。


モーリスの岩弾は5回までの連射。


「今だっ! ミリアン、撃てっ!」


「はいっ!」


ひょおっ! ひょおっ! ひょおっ!


ぎゃっぴい!? ひええん! くおおん! 


今度はゴブリン3体が絶命する。


ミリアンの氷矢は3発の連射。

威力は合格。

後は、再行使までの所要時間の確認である。


「メンバーの持てる技のスペックをしっかり把握し、使いこなす事もリーダーの役目だぞ」


そう、宿の主アンセルムから教えて貰った。


つらつらと考えながら、リオネルは自分の魔法『風矢』を放つ。


「最後に俺の『風矢』行きま~すっ!」


ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお!!

ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお!!

ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお!!

ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお!!


ぎゃっぴい!? ひええん! くおおん! ひいいん! うわぁおおん!

ぎゃっぴい!? ひええん! くおおん! ひいいん! うわぁおおん!

ぎゃっぴい!? ひええん! くおおん! ひいいん! うわぁおおん!

ぎゃっぴい!? ひええん! くおおん! ひいいん! うわぁおおん!


「うわっ!! リオ君、す、すげ~な!!」

「凄い!! リオさん!!」

「すげ~や!! リオさん!!」


モーリスの『岩弾』、ミリアンの『氷矢』と比べ、

リオネルの『風矢』の威力は断然、というか『圧倒的』である。


半数以上が身体の自由を奪われているところへ、

岩弾で蹴散らされ、氷矢で貫かれダメージを受け……


無数ともいえる『大気の矢』が驚き、戸惑うゴブリンどもの群れへ降り注いだ。


ぎゃっぴい!? ひええん! くおおん! ひいいん! うわぁおおん!

ぎゃっぴい!? ひええん! くおおん! ひいいん! うわぁおおん!

ぎゃっぴい!? ひええん! くおおん! ひいいん! うわぁおおん!

ぎゃっぴい!? ひええん! くおおん! ひいいん! うわぁおおん!


作戦はひとまず成功した。


リオネル、モーリス、ミリアンの魔法攻撃により……

最初に現れたゴブリン約100体は、殆どが絶命していたのである。

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