第93話「戦闘準備」
翌朝早く……
リオネル、モーリス、ミリアン、カミーユの4人は村長パトリスへ、自分達が戻るまで厳重に警戒を続けるよう言い残し、キャナール村を出発。
ゴブリンの残党2,000体が潜む洞窟へ向かった。
天気は快晴。
空を見上げれば雲ひとつなく、かと言って風もそう吹いていない。
絶好の討伐日和? ……である。
まあ、冗談はさておき、悪天候に紛れて奇襲とか、そのような特殊ケース以外、
戦闘の際、天候は良好である事に越した事はない。
気分が良ければ、戦意を失わず、モチベーションも良い状態でキープ出来るからだ。
リオネル達は、あまり速度を上げず、馬を走らせる。
帰りを考え、疲労させないよう、疾走はさせず
駈歩の速度は、時速20㎞ほどであり……5㎞の距離も15分ほどしかかからない。
ギルドで徹底的に練習したリオネル、年季の入ったモーリスの乗馬の腕は確かなものだ。
ミリアンとカミーユの双子姉弟も、そこそこの腕を持っている。
これなら乗馬に関し、余計な心配は無用だろう。
……洞窟に到着するだいぶ前から、リオネルは索敵を最大限に張り巡らせている。
現在のリオネルの索敵カバー範囲は、四方800m強。
その範囲内に、ゴブリンどもの気配はない。
ちなみに、まだまだ上がる雰囲気があるから、期待大、頼もしい限りだ。
結局、道中はゴブリンが出現せず、全員無事に洞窟へ到着した。
リオネルとモーリスは洞窟前から、200m離れた場所に陣地を設営する事とした。
乗って来た馬は、ゴブリンの気配や姿に怯えないよう、
陣地予定地から少し離れた場所の木につないでおく。
万が一の場合、馬が撤退の生命線という事で、『遊軍』担当のカミーユが『馬の番』も買って出た。
戦いながら、後方の馬の様子を注意する難しい役目だ。
リオネルは、彼が難儀したら、フォローすると決めた。
馬から降りて、陣地予定地へ移動。
全員改めて、身支度をする。
リオネルは出発時からスクラマサクスを提げていたが、盾を左の手甲とし……
モーリス、ミリアン、カミーユは、
『強化ミスリル製ガントレット』を装着する。
ここでリオネルは、カミーユを気遣う。
「前方のゴブリンと後方の馬、両方へ注意しながらって、大変だけど、大丈夫か? カミーユ」
「お気遣いありがとうございまっす! 任せてよ、リオさん。ノープロブレムっす! これくらいの対応が楽勝で出来ないと、俺が目指す腕利きのシーフにはなれないっすよ」
「そうか! じゃあ、頼むぞ、頑張ってくれ!」
リオネルはカミーユを励ますと、モーリスへ向き直る。
「モーリスさん、洞窟の周囲を確認がてら、早速土壁の生成をお願いします。洞窟の出入り口左右と、俺達の陣地の前です」
「うむ、無理やり、多勢に無勢のルールを変える……だな!」
「ですね」
「了解だ! じゃあ、リオ君。君が具体的な位置を指定してくれよ。ええっと、洞窟の脇の土壁は長さ10m、高さ5m、厚さ1mのモノをふたつ。陣地前は長さ10mで、高さ1,5m、厚さ1mのモノをひとつ……で良いんだよな?」
「ええ、OKでっす」
「強度も強くし、頑丈にするよ」
サイズの確認が済んだので、リオネルとモーリスは洞窟の手前まで移動する。
ミリアンとカミーユはその間、周囲を確認しながら、陣地予定地から馬を見張る。
まずリオネルとモーリスは慎重に洞窟の出入り口へ近づき、中を覗き込む。
出入り口付近に、ゴブリンの気配はやはり感じられない。
僅かに感じる気配は、昨日同様、最奥付近にあった。
これは、仕掛けと陣地を設営する絶好のチャンスである。
「モーリスさん、土壁の位置は『ここ』と『ここ』です」
リオネルは土壁を生成する位置を具体的に指示、モーリスは頷き、
「OK! じゃあ、行くぞ! ……ビナー、ゲブラー、母なる大地よ! 我らに仇なす侵入者を防ぐべく、大いなる力を与えよ!」
ぼこぼこぼこぼこ! ぼこぼこぼこぼこ! ぼこぼこぼこぼこ!
呼吸法を使い、体内魔力を高めたモーリスの口から……
地属性魔法の
……やがて、盛り上がった地面はリオネルがリクエストしたサイズ通りの『土壁』となった。
モーリスは反対側でも同じタイプ、サイズの土壁を生成する。
「これで良し! と、後は私達の陣地前の防護壁だ。長さ10mで、高さ1,5m、厚さ1mのモノをひとつ……だったな」
「はい! 確認OKです!」
「うむ!」
ぼこぼこぼこぼこ! ぼこぼこぼこぼこ! ぼこぼこぼこぼこ!
防護壁も完成。
これで、土壁は全て生成。
陣地の設営は終了した。
傍らでじっくりと、モーリスの魔法発動を見ていたリオネル。
予感がする。
いつか地属性魔法を習得出来ると。
リオネル自身ぜひ習得したいと願う。
いろいろ応用が利きそうだからである。
ここで馬の番をモーリスに任せ……
リオネルは、ミリアンとカミーユを連れ、洞窟の入口へ向かったのである。
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