第12話「冒険者ギルドでインプット!」
女子職員のナタリーから教えて貰った冒険者ギルドの図書館は、敷地内にある大きな建物だ。
魔導書や冒険譚、王国、世界の地図など貴重な資料がいっぱいである。
実戦訓練や判定試験を行う闘技場からも、あまり離れていない。
何故、リオネルは図書館を利用しようと希望したのか?
実は、習得したスキルについて詳しい知識を得ようと考えたのだ。
一瞬、書店通りへ行く事も考えたが……
本を買う金、書店へ行く時間、探す手間も考え、冒険者ギルドの図書館を利用する事にしたのである。
……図書館の内部は武骨な外観以上に洗練されていて、利用者の使い勝手が考慮されていた。
まず席を確保し、司書へ尋ねる。
リオネルはスキル関係の本を何冊も取り寄せて貰うと、隅から隅まで丹念に目を通して行く。
古文書の写本もあるが、オリジナルの内容ではない。
ところどころ解説が付き、表現も今風に修正してあるから分かりやすい。
たとえば、1割が10%、10割が100%などなど。
リオネルは一冊の古文書の写本を、まずスキルの記載を見る。
スキルとは……
『スキルは、基本生涯に、たったひとつのみ。スキルのレベルアップや、変更はない』とあった。
え?
あの司祭の言った事は本当だった、嘘吐きじゃなかったのか……
思わずリオネルは苦笑した。
ちょっと、申し訳ないと思ってしまうのが、リオネルのお人好しなところだ。
あんなに馬鹿にされたのに……
だが『但し書き』もあった。
稀に例外はあると。
そうか……
特異スキルを習得し、チートスキルも習得した「俺は稀な『例外』なのだ」
とリオネルは思う。
次に注目したのは特異スキルの項目である。
特異スキルとは……
『通常スキルのイレギュラーなバージョンアップ型』である。
そして、飛びぬけたスペックを誇ると。
そしてチートスキルの項目。
探したら『エヴォリューシオ』は……あった。
ある古文書の写本に記載されている。
チートスキル『エヴォリューシオ』は、新たなスキルを術者に与えるとともに、術者の有する身体、魔法の各能力、スキル、特技を成長、変貌させ、名称を変える事もあるチートスキルであると書いてあった。
『またイレギュラーで、レアなギフトスキルが贈られる』とも。
そして、『エヴォリューシオ』は極めて稀なスキルであり、数千年にひとりか、ふたりの割合で習得者が現れると記載されていた……
おいおいおい!!
な、何だあ!?
俺が習得した『エヴォリューシオ』って、そんなに超ウルトラレアなチートスキルなんだ!?
スキルが成長して、名称を変える事もあるって……まるで出世魚じゃないか!!
そして、違う古文書の写本に、超レアという位置づけで、
チートスキル『見よう見まね』もあった。
『見よう見まね』とは、『術者が対象者の有する能力を視認、もしくは体感した場合、最大100%の割合で対象者の能力を獲得する事が出来る』
おお、成る程。
獲得は、最大100%なんだ。
つまり対象者の能力を完全に習得するって事なのか。
更にリオネルは読み進めて行く。
『対象者から獲得した能力は、術者の有するレベル等により、著しく異なる。あまりにも高位の能力は習得不可能な場合もある』
ふむふむ。
『内なる声が告げる、対象者の有する能力に換算した割合と、ぴったり当てはまらない場合も多々ある』
ここでリオネルは頭の中を整理し、必死に考える。
そして、考えがまとまった。
ううむ……つまりこういう事か。
例えばウサギの能力を50%習得と、内なる声から言われても、そのまま習得したとは限らない。
上にでも下にでも、結構な誤差が生じる可能性がある……
そしてまだまだ記載がある。
リオネルは食い入るように読んで行く。
『能力を見て真似る対象者が人間ではなかったり、種族が異なる場合は猶更である。ちなみに熟練度を増す、習得後の能力アップ訓練は可能であり、大いに推奨する』
そして、最後に……『エヴォリューシオ』と同じく、
『数千年にひとりか、ふたりの割合で習得者が現れる』非常にレアなスキルだとの記載がある。
『見よう見まね』は、全知全能且つ万能なスーパースキルに思えたが、全く違う。
そうリオネルは冷静に分析した。
貰えるのは……新たな能力の、ほんのきっかけに過ぎない。
自分のレベルなどにも微妙に反映される。
何故なら、今のところリオネルが獲得しているのは最大5割――50%まで……
やはり楽して強くなるのは不可能なのだ。
最後は……己の努力から身につけた実力に尽きると。
そういう事を踏まえ、「能力を貰えたら儲けもの、超ラッキー!」くらいの気持ちで、『見よう見まね』を大いに活用しよう。
この後、ギルドの闘技場で行われる午後の実戦訓練、もしくはランク判定試験を見学し、ビルドアップのきっかけをつかもう!
そして俺がこれらの超レアスキルを持ち、使う事は、やはり、絶対秘密にしよう。
リオネルはそう考え、本を静かに閉じたのである。
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