第11話「こんな俺だって、いつかはデートしてみたい!」

チートスキル『エヴォリューシオ』『見よう見まね』を習得。

特異スキル『フリーズハイ』を習得。


はっきりとした手ごたえを感じ……

己の人生において、逆襲のリスタートを誓ったリオネルであったが……

はやる気持ちを敢えて抑えた。


……翌日、リオネルは、王都の外へ出かけなかった。


午前中から冒険者ギルドへ赴き、採取した薬草の納品を行ったのである。

当然ながら、職員の目の前で収納の腕輪から取り出すような愚かな真似はしない。


魔法、武技の奥義やとっておきのスキル同様……

有能な魔道具を所持している事、そしてその魔道具の効能効果は絶対に秘するものとしっかり認識していたからである。


宿屋でアンセルムから譲って貰った、小麦粉が入っていた大きなズタ袋から、

薬草を出して……

「どさっ!」とカウンターに積み上げた。


受付カウンターごしに、ギルドの若い女子職員ナタリーは目を丸くする。


「まあ、リオネルさん。デビュー間もないのに、回復、毒消しともたくさん採取したわね」


「え、ええ、ナタリーさん。何とかって感じです」


少し噛み、謙遜しながら、リオネルは答えた。


さりげなくナタリーをチラ見する。


ギルド職員のナタリーさん……

いつも優しく、冒険初心者のリオネルを気遣ってくれる女子である。


金髪碧眼、顔立ちが整っていて、スタイルも抜群、本当に綺麗な女子だなと、思う。

絶対に聞く事は出来ないが、年齢は、20代前半くらいなのだろう。


ナタリーに恋人は居るのだろうかと想像する。

いや、このような美人なら恋人のひとりやふたり、絶対に居るとリオネルは確信する。


対して平凡な容姿で、彼女居ない歴18年の自分には、ナタリーみたいな女子は、『高嶺の花』なのだと苦笑する。

さえない自分には可愛い『彼女』など一生縁がないとも思う……

でも、一回だけで構わないから……

こんな俺だって、いつかは女子とデートしてみたい!とリオネルは思う。


そんな妄想をしているとは、笑顔のナタリーは想像もしていないだろう。


「リオネルさん、薬草の……採取場所は、〇〇草原よね?」


「はい、そうです」


「採取権は問題なしでOKと。……あそこは結構な数のスライムが出現するけど……大丈夫だった?」


リオネルと話しながら……

ナタリーは、薬草を別の職員へ渡し、計量を命じた。


早速、別の職員により薬草は仕分けされ、計量。

現金換算される。


その間も、ナタリーとリオネルの会話は続いている。


「ええ、何とか、もう結構な数を倒しました」


「うふふ、見たところ、けがひとつしていないから、ノープロブレム、問題なしって感じね。じゃあ、薬草採取依頼同様、無期限のスライム討伐依頼を出すけど……構わないかしら?」


「はい、ぜひ! お受けします!」


リオネルはいかにも嬉しそうに応えた。

ナタリーと話すだけで、ささやかな幸せを感じていた。

仕事のみの会話だが、可愛い女子と話せるだけで満足だったから。


優しく微笑んだナタリーは、リオネルのカードを受け取ると、薬草の依頼同様、依頼の自動記録機へ登録した。


スライムを1体倒すと銅貨1枚だとナタリーは教えてくれた。

とても安いが、20体倒せば1日分の宿代になる。

そう思えば余計に気合が入る。


これで、リオネルがスライムを倒せば、自動的に記録される事となる。

一昨日、昨日とで倒した400体分はノーカウントとなるが、致し方ない。

経験値だけはカウントされるから、それで良しとするしかない。


スキルを習得し、レベル7となり、少しは強くなった。

だが、万全を期してリオネルはまだ草原でスライムと戦うつもりだ。

頑張って数を倒せば、薬草採取依頼の完遂と合わせ技で、やがてランクEへ上がる事だろう。


ここでナタリーの下へ、別の職員から銀貨が3枚渡される。

その銀貨3枚を、ナタリーはリオネルへ渡す。


「はい、リオネルさんの採取した薬草の代金、回復と毒消し、たくさんあったからトータルで銀貨3枚よ」


「ありがとうございました」


「うふふ、気を付けて、頑張ってくださいね」


リオネルがギルドを訪れた用件はまだある。

というか、ここからが本題だ。

ナタリーへは『表向きの理由』しか言えないが……


「あの……」


「何でしょう? リオネルさん、まだ何かありますか?」


「はい、お願いがあります」


「お願いですか?」


「はい、闘技場で行うギルドの実戦訓練。もしくはランク判定試験を見学させて貰えませんか? 後学の為に……」


「ええ、訓練と試験は午後からですけど、見学は構いませんよ。係員が居ますから、声をかけて、私の名を出して了解を取ったと伝えてください。その代わり見学は闘技場の観客席とか安全な場所でお願いします」


「了解です! ありがとうございます! それと、調べ物をしたいので、これからギルドの図書館も利用して構いませんか?」


「ええ、どうぞどうぞ。図書館はもう開いています。午後5時まで利用出来ますよ。どちらも所属登録証を呈示すれば、係員が対応しますから」


望んだ『ささやかな願い』は…あっさり叶い……

リオネルは礼を言い、深く頭を下げたのである。

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