第2話 エッチしてください

 「それじゃ、俺と付き合ってくれ!そしたら恋愛に興味が出る!」

 「根拠は?」

 「ない!」


 薫はあきれたようにため息をつく。

 くうぅっ!ため息をつく薫もかわいい!


 「悪いけど無理‥って言ってもあなたは諦めなさそうね」

 「当たり前だ!」


 俺は自信満々に胸を反らせた。

 

 「…実際に知ってもらう方が諦めがつくかな…」


 薫が何か小声で言った。


 「ねぇ…これからあなたの部屋に行ってもいい?」

 「まっまっまっマジっ?本気で言ってる?!」

 「そうよ。本気マジよ」


 薫はめんどくさそうに言った。


 「さっさと連れて行ってもらえるとありがたいんだけど」

 「大歓迎です! 大感動です! さぁ行こう! 俺たちの愛の巣へ!」

 「愛の巣じゃないけど」

 「細かいのはいいんだ!」


 「ところで、」


 薫はスッと目を細めた。


 「あなたの名前は?」





 俺の住むアパートに歩いて向かう途中、薫がドラッグストアに寄ろうといった。


 「佐藤さん、何か必要なものでもあるの?」

 「あのねぇ、私を妊娠させるつもりなの?」

 「!! まじで、ヤっていいのか?!」

 「なんのために部屋に行こうって言ったと思ってるのよ…」


 俺は地に足がつかない気持ちだった。

 1カ月と2週間の努力が報われたような達成感に浸る。

 薫が例のモノを持ってレジに向かったとき、俺の中にいる良心の呵責が沸き起こった。

 相手は俺のこと、好きじゃないんだぞ? なのにヤってもいいのか? それは本当に相手のためなのか? 自分の欲求を満たすためじゃないのか?

 葛藤しているうちに薫が戻ってきた。


 「ねぇ…佐藤さん。やっぱり俺、やれないよ。」


 薫はひょいと形の良い眉をあげた。


 「あらそう。じゃ、もうコクってこないでね。」

 「それはっ、」


 薫はため息をつく。

 ―なんか、今日、ため息つきすぎじゃない?


 「それじゃ、言い換える。私とエッチしてください。」

 「ええぇぇっ!!」

 「あのねぇ、自分のお金で色々買ってんだから私の積極性くらい気付いてよ。」


 そうだったのか…!


 なんかスッキリとはしないがまあ、いいだろう。

 10分もしないうちに俺の住むアパートについた。一人暮らしなので当然誰もいない。

 玄関の鍵を開けたところで俺はあることに気づいた。


 「ご、ごめんっ!まだ入らないでくれ!!」


 俺は部屋に駆け込みアレ(男の必需品)を押し入れの奥に押し込む。

 い、いやぁ、最近は使ってなかったから…(もちろん、最近は薫でやってた)

 あんなの薫にばれたら口だけのダメな男認定されてしまう。ひゅう、危なかった…


 「へぇ、やっぱり男子はみんな持ってるのねぇ」

 「ひいぃっっ!」

 

 ぎこちなく首を回し背後を見ると、仁王立ちの薫が!! 無駄だと思うが俺はしらを切る。


 「ええっと!何のことかなぁ!」

 「エロ本。」

 「ぎゃあぁぁぁっっ!!!」


 俺は叫び悶える。

 バッチリ見られてたぁっ! 

 身悶える俺には目もくれず、薫はベッドへ向かい身を投げ出した。バフっとベッドは薫の身体を受け止める。えっ? まさか? もう?


 薫は固まっている俺を一瞥すると、めんどくさそうに言った。


 「ほら、早くしてよ。」


 



 



 

 

 

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