君のとろけた顔が見たいのです。

柳瀬 新

第1話 興味がないので

 俺は運命の人に出会った。

 

 「好きです。俺と付き合ってください!」

 「ごめんなさい」

 

 彼女は微笑みもせずバッサリ断った。

 俺は、ショックを受け、涙を流す…


 ーーなんて、ことはない!

 

 いやぁ、断られたときはショックだったが、少し冷静になって考えてみると、まだ彼女、佐藤薫とは話したことがないんだよな。ただ俺が遠くから眺めてニヤニヤしてただけの関係だから。

 きっと、振られた原因は彼女が俺を知らなかったからだ!

 

 と、いうことで俺は、

 

 「好きです!」

 「ごめんなさい」

 

 …を毎日繰り返している。

 

 最近(始めてから約1カ月)やっと、薫(心のなかでは名前呼び)が2言で返事してくれるようになった。

 

 「好きです!」

 「ごめんなさい、興味ないので」

 

 2言返事になって1週間。 

 よし、そろそろ俺も次に進むか!

 

 「佐藤さん、愛してる!」

 「ごめんなさい、興味ないので。っていうかキモい」

 「よっしゃあぁ!!」

 

 「えっ? 何?」

 「いやぁ、初めて3言の返事をもらったから。嬉しくてつい」

 「キモいって言われたのに? もしかしてMなの?」

 「うっしゃあぁ!!」

 

 「今度は何?!」 

 「いやぁ、初めて会話が成立したから。嬉しくて」

 「いや、成立してないよね?」

 

 俺がまた雄叫びを発しそうになったせいか、薫に睨まれた。

 いくら喜びの声をあげたくてもそれのせいで好きな女に嫌われてしまうなら俺は我慢できる! 

 俺が喜びを噛み締めていると薫は不思議そうにため息をついた。

 

 「私のどこがいいの?」

 「たくさんあるけど、」

 

 俺が大好きポイントを語ろうとしたら薫に黙るように手を向けられた。

 あぁ、指も尊い…

 薫は俺の疚しい視線に気づいたのかそのきれいな指先を引っ込めた。

 

 「‥興味ないって、毎日言ったよね?」

 「俺のことを知ってもらおうと思ってたんだけど、」

 「いや、あなたのそのポジティブさがどこから出てくるのかは気になるから、あなたのことに興味がないんじゃないの」

 「つまり…!」

 

 もしかして…この展開は…!

 俺は期待に胸を膨らませて薫の言葉を待つ。

 

 「あのね、私、」


 薫はにっこりと微笑んだ。

 はうぅっ、初微笑み、いただきました!

 ……はっ、薫が尊くて放心していた。あのね私、の続きはなんだ?

 俺が落ち着いたのが薫にも伝わったのだろう。薫は囁くようにして俺に言った。


 「恋愛に興味がないの。」


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