終わりの始まり? 始まりの終わり?

隅田 天美

終わりの始まり 始まりの終わり

 ここ最近、ネットではオリンピックでも都議会議員選挙(補欠)でもなくユーチューバーの無法飲み会でもなく、ある漫画が話題になった。

 きっと、私よりも皆様のほうが知っているかもしれない。


 事の経緯はこうだ。

 ある雑誌にある漫画は新連載された。

 毎度というか、昨今の流行りなのか原作付きの漫画で原作者は以前一発ヒットを飛ばしていた。

 さて、それなら何の問題もないが、問題は内容にあった。

 さながら、『スーパーライトノベル大戦』(元ネタ スーパーロボット大戦)とでもいうべき今を時めくライトノベルの人気作品(の主人公)が集結した。

 しかも、本来正義(味方)側である主人公たちを邪悪な悪(敵)に仕立てた。

 これにファンや元来の出版社、もしかしたら、雑誌の編集部内でも物議をかもした。

 結果、雑誌初掲載第一話にして打ち切りということで、炎に油が注がれた。

 各所で考察や感想が述べられている。

 作者たちのモラル、出版社の検閲機能などが問われた。

 

 妄想自体を私は否定しない。

 いや、妄想こそが物語を書く原点だ。

 そもそも、『オリジナル』とは何だろう?

 突き詰めれば文字ですら、他者から教わったもので自分自身で考えたものではない。

 そこまで極論ではなくても、暗黙の了解で『中世風』と言えばヨーロッパ辺りの石畳の街並みに洋服を着た金髪碧眼が思い浮かぶし、『江戸時代』と言えば江戸城があって男の人は着流しを着て……

 ほぼ『物語』は「お約束」で出来ている。

 もちろん、それを逆手にとったのが昨今流行りのライトノベルなのだろう。


 では、冒頭の漫画はどうだったのだろう?

 先ほどのまでの私の考えが正しいのであれば、打ち切りにはならなかったはずだ。

 むしろ、拍手されていたのかもしれない。

 だが、現実の世間の反応は厳しかった。


 では、何がそんなに反感を買ったのか?

 私はライトノベルに明るくないし、やみくもに非難しない主義だが(え?)非常に照れ臭い言葉で言うのなら『愛』がないのだと思う。

 もっとも、テンプレ作家などが『オマージュ』などと称してまるパクするご時世なのだからある意味では生まれるべくして生まれた不運の漫画だったかもしれない。

 それでも、作品や登場人物、作者に最低限敬意を持ってほしい。

 その敬意から名作は生まれる。

 と思うよ。


 果たして、既に天界にいる文豪たちは、この出来事をどう思っているのだろう?

 そういえば、天界にはアカシクッレコードとかいう未来も過去も見られる本があるという。

 さて、これからのライトノベル、いや、日本の小説はどうなるのだろう?

 それをちょっと知りたい。

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終わりの始まり? 始まりの終わり? 隅田 天美 @sumida-amami

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