第28話
バスケットボールの試合に出ていた
『優美さんのこと非常に心配だと思いますが、会場の外に来て下さい。 音々子』
というメッセージが送られてきた。
私も
「どゆこと? これ」
「これは一体どういう事なの?」
バスケットボールの試合会場の外で私を待っていた人物たちを見て私たちは似たような反応を見せた。
「お、お久しぶりです。
「大丈夫、少し嫌なこと思い出しただけだから」
「
「ちょっと、
「琴音さんも来たところで少し場所を移しましょう。座れる場所の方が琴音さんも落ち着く事ができるでしょうし、私たちの関係を話すには少し長くなりそうなので」
「ここ、落ち着かなくない?」
移動先……私の
その苦言に対しては私も完全に同意ではあったが、警察、明才元生徒会長、報道部それぞれから感じ取れる緊張感の中でどこかの亡霊のように軽々しく発言出来るはずがなかった。
「さて、気を取り直して私たちの関係について琴音さんにお話しするとしましょうか」
そう告げてコホンと小さく咳払いをした千景さんは咳払いの前後で雰囲気がガラリと変わり、私は自然と背筋が伸びたような気がした。
「琴音さんが一番聞きたいのは、私についてですよね?」
「……はい」
渚も私も警戒度は違えど先本千景という人物を怪しんでいるのは確かであり、音々子や華さんといった信頼を置ける人物と共にいるのが不思議なくらいだった。
「両肩が上がり、表情が引き
「ち、違いましゅ……す。あれは事前に情報を得られなかった音々子の……報道部の責任です!」
「今回の捜査で報道部の指揮を
「犯人を……取り逃した?」
私の言葉ではなく、わたしの言葉だった。
しかし、気持ちは
「わかっているの? 優美を怪我させた犯人を」
「報道部が既に特定はしている。まだ所在は掴めていないけれど」
「誰? わたしの知っている人?」
「実行犯は君も、優美さんも、渚さんも知らない人物だ」
何故、今回の事件には全く関係の無い渚の名前が出たのか。私は不思議でならなかったが、その理由はすぐに語られた。
「実行犯を手引きしていると思われる人物は、君たちに少なからず関係のある人物だと私は確信している。……
「また……」
わたしは私の身体を震わせた。それが怒りによるものであることは文字通り一つになっている私には容易に理解出来た。
「二年前の事件……琴音さんの幼馴染である天空渚さんを殺害した犯人の名前が
「義妹って……」
「先本にこれまでの事件を、不審な動きをし始めた津ヶ原を探ってもらったのは私。警察という立場では立ち入れないところもあるから」
華さんはそういう立場であってもずかずかと踏み込んでいたはずだが、その表情はとても冗談で言っているようには見えなかった。
「さあて、
「もちろん!」
考えるまでもなく、そう言うだろうと思った。だってわたしは津ヶ原により人生を失った被害者なのだから。
私と音々子、千景さんと華さんたち警察組の二方向で津ヶ原を追うことで話がまとまるとその場は一度お開きとなった。
「ねえ、ひとつ聞いても良い?」
音々子と二人きり(正確にはもう一人いるが)になった私は先ほどの話の中でずっと気になっていたことに関して聞いてみる事にした。
「優美に怪我を負わせた犯人を特定したとは言っていたけど誰なの?」
「名前を聞いてもわからないと思いますよ」
「まぁ、千景さんもそう言ってはいたけど。気になるから」
「
「まだ数十分しか経っていないのにそんなことまでわかってしまうなんて、相変わらず報道部という部活は敵に回したくは無い組織ね」
「ありがとうございます」
褒めたつもりはなかったのだが、音々子が誇らしそうにしていたので訂正はしないでおく事にした。
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