第15話
「……明?」
「琴音姉さん……」
コンビニエンスストアの帰り道、私は制服姿のままファストフード店から出てくる渚の妹……天空明と出くわした。
「午後九時、中学生が出歩いて良い時間ではないと思うけど?」
「放っておいて下さい。琴音姉さんには関係の無いことです」
「それは無理。明の事は私にとって関係の無いことじゃないから」
***
「頼んでも良い? 明のこと」
ある日、渚は真面目なフリをして私にそう告げてきた。
「あんたに心配されるような子じゃないでしょ。明は」
「親には言えない事とかあるでしょ? そんな時に……さ」
***
生前の渚が明の相談相手になっていたとは思えないが、託されてしまった以上は知らないフリをして放っておくなんてことは出来なかった。
「おばさんには連絡しておくからうちに来な」
私は明のお母さんに適当な理由を付けて今夜は私の家に泊まることになったという嘘の連絡を入れて、明を家に招いた」
「で、こんな時間まで何してた? 家にはまだ帰っていなかったみたいだけど」
「勉強です」
「関心じゃん」
私は疑うようなことはせず、ただ一言そう返した。
「疑わないんですか?」
「別に疑う必要は無いでしょ。渚ならともかく、明は普通にしそうだし。ただ、どうしてこんな時間まで?」
「……」
その問いに明は口を閉ざしてしまった。
「中二なんだから受験勉強って訳じゃないし、学年末の試験はもう少し先でしょ? こんな時間まで真剣に勉強する必要なんてある?」
人によってはするだろうが、少なくとも私の知っている天空姉妹は自ら進んで勉強をするような性格ではなかった。
「夢のために……」
夢それはまだ私が持っていないものだった。
「夢を叶えるためには……本当の正義を守る警察官になるには今から猛勉強をしないと……」
「警察官……」
その言葉を聞いて真っ先に頭に浮かんだのは義理の姉の姿だった。
「明、警察を目指しているの?」
「お父さんもお母さんも首を縦には振らないけど……」
「まぁ、気持ちはわかる。わかるけど……明が自分で悩んで選んだ道なら人の意見なんか気にせず進めばいいと思う」
きっと渚も同じ答えを出しただろう。知らんけど。
「取りあえず、私から一個アドバイス」
「な、何ですか?」
「
「どうしてですか?」
「渚が入れたくらいだから」
「あぁ……」
渚は決して頭が悪い訳ではないが、渚が入れるレベルでは警察官など夢のまた夢に過ぎなかった。
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