第13話

奈々子 「風邪ひいちゃった」

奈々子 「今日は休むね」

優美 「ゆっくり休めよ」

琴音  「必要なものがあれば連絡して」



***



「奈々子が風邪をひくなんてな」

 流行病はやりやまいが流行る前には必ずマスクを着用し、いつもの三人四人で最もウイルス感染予防を徹底していた奈々子が風邪をひいたという事実は今年一番の衝撃だった。

「帰りにお見舞い買って行く?」

「琴音ナイスアイデア! きっと、音々子ちゃんも喜ぶよ」

「引きこもりのお姉さんではなくて、奈々子へのお見舞いだから」

 双子の姉が居ることを公表してから極度のシスコンを隠そうとしなくなったに私は呆れながら……は?

「おい、奈々子……お前」

私に続いて優美が夢でも見ているかのような事実に気付いた。

「奈々子、たった今風邪で休むって……」

「目は死んでいるみたいだけど……元気そうだな」

「にへっ、潜入……成功」

 奈々子はマスク越しにボソッと呟くと、に二次元バーコードを映し出して私たちに見せつけてきた。

「読み取れば良いの?」

 コクリと頷く奈々子の指示通りに二次元バーコードを読み込むと、私たちが普段使っているメッセージアプリにある人物が登録された。



***



音々子 「いつも奈々子ちゃんが」

音々子 「お世話になっています」

琴音 「音々子さんだったの」

優美 「音々子って奈々子の姉ちゃんの?」

音々子 「奈々子ちゃんかと思った?」

音々子 「残念! 音々子ちゃんでした」

音々子 「m9(^Д^)プギャー」

優美 「初対面だけど」

優美 「めっちゃムカつく」

音々子 「ご、ごめんなさい」

音々子 「音々子、調子に乗りました」

音々子 「琴音さんと優美さん」

音々子 「話、いっぱい聞いてます」

琴音 「私たちも話は毎日のように」

優美 「耳にタコが出来るくらいな」

音々子 「奈々子ちゃんの言う通りの人たち」

音々子 「良かった」

琴音   「ところで、どうしてここへ?」

音々子 「奈々子ちゃん、風邪ひいたから」

音々子 「音々子が代わりに」

優美  「影武者って事か?」

音々子 「そう、影武者」

琴音 「音々子さんの方の学校は?」

優美 「明才高校も今週からだったよな?」

音々子 「音々子、特別スクーリング生だから」

琴音  「優美、分かる?」

優美 「やりたいことに集中できる制度だよな」

優美  「明才の運動部に何人か居るんだ」

音々子 「今日は登校日じゃないから」

音々子 「奈々子ちゃんの影武者」

音々子 「他の人には内緒にして欲しい」

琴音 「内緒と言われても……」

優美 「見た目だけじゃなくて」

優美  「声も仕草も奈々子のまんまだからな」

琴音  「言ったところで信じてもらえない」



***



「にへっ、じゃあ今日一日よろしく」

 知っている姿の人物が全く別の人物であるというのは、まるででも見ているかのように不可思議だった

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