第5話
「お、お待たせ」
奈々子の双子の姉で、私たちの通う
「この傷、やっぱり意図的。調べても良い?」
陽のオーラの申し子と言っても大げさではない
「良いんじゃない? 気になる。わたしも」
聞こえるはずのない声をこの場で唯一受け取った私は何も聞こえなかった風を装いながら、
「ご自由に」
そう答えて渚のスマートフォンを音々子さんに預けた。
「このスマホはいつまでに返却すれば?」
「よ、予備は沢山あるから。好きに使って」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
私は一番知りたかった着信履歴のデータが復元されているのを確認し、そのスマートフォンをポケットに仕舞った。
「大丈夫だよね? 本当に事件とかじゃ……」
「大丈夫。何かあれば天空が守ってくれると思う」
前言撤回。
無理そう。
でも、奈々子はそれで納得してくれたらしい。
「奈々子ちゃんは、音々子が守るから」
「音々子ちゃん!」
奈々子は頼りなくそう言った音々子さんに抱き付いてイヌのように尻尾をブンブン降っていた。言うまでもなく尻尾など見えないが。本当に、存在していないはずなのに
閑話休題。
「音々子さん、何かわかったら一応連絡ください。例えば、出てくるはずの無いものが出てきたとか」
「ま、任せて。
報道部という部活動が果たしてどの程度の力を秘めた部活動なのか、全く見当もつかないのだが、少なくとも私たちに協力的なことだけは確かだった。
「仲の良い姉妹だったね」
「えぇ、私たちとは違って」
「たち? 緋色って一人っ子でしょ?」
「一応」
私の場合、
「もしもし、緋色琴音です。お時間大丈夫でしたでしょうか?」
『琴音さん。電話をしてくれたという事は、何かを思い出してくれたという事かしら?』
「思い出したとは少し違いますが、事件かもしれないという証拠は見つけました」
『かもしれない証拠。それで立証するのは難しそうだけど、確認する必要はありそうね』
「中林さんの方は何か進展は?」
『捜査情報をそう
「そうですか」
『取りあえず、一度合流しましょう。あまりその辺の地理がわからないから、待ち合わせ場所は事件現場で良いかしら?』
「あまり良い気分はしませんが。わかりました」
『じゃあ、また後で』
「はい、失礼します」
電話を切ると、渚が自分の手のひらを見つめている姿が目に映った。
私の目に映る渚はどことなく薄くなっているように見えた。
「あんた、もしかして……」
「うん」
「やっぱり」
渚と一緒に居られる時間はもう……。
「わたし、生命線長かったのになぁって」
「あんたは本当に」
よく考えれば、霊体となった渚は最初からうっすら透けていたし、自分の死を受け入れている様子の渚が今更物悲しそうにするはずがなかった。
「ねぇ、どこ行くの?」
「現場。あんたの知らない私の姉と待ち合わせ」
「もしかして、警察のお姉さん?」
「知っているの?」
「見た。病室で」
「あんた、その時から居たの?」
「えぇ~!? 緋色を起こしてあげたのは、わたしなのに」
てっきり夢だと思っていたが、現実だったのか。
「全然、緋色に似てないよね。名字も違うし」
「当たり前でしょう。あの人はお父さんがお母さんと結婚する前に別の女性との間に出来た子供だから」
「似てたわ。鼻」
「ダウト。鼻はお母さん似だから」
「確かに、おばさん緋色に似て鼻高かったわ」
多分、渚は私のお父さんの事すら覚えていない。私ですらあまり記憶に残っていないのだから。
***
八重彦 「そろそろ限界かも」
華 「まさか、副総監の指示とはね」
八重彦 「これからどうする?」
八重彦 「無断捜査は出来ない雰囲気だけど」
華 「現場に来て」
華 「琴音さんが」
華 「事件の証拠を掴んだみたい」
八重彦 「嘘?」
八重彦 「証拠は全てもみ消されたはず」
華 「いいから早く来て!」
八重彦 「はい!」
八重彦 「でも、少しだけ時間下さい」
八重彦 「監視を撒かないと」
華 「一人でも監視を連れてきたら……」
八重彦 「もちろん!」
八重彦 「一人残らず撒いて」
八重彦 「速攻向かいます」
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