第42話※

「………………………あ」


「………………………!?」



少し驚いた表情をした男が目の前にいる。

こいつは……、こいつは……、機洞!機洞 連だ。


機洞が目の前に裸でいる。


下を見たら俺も裸でいる。


なぜか機洞と密着している。なんなら、足を絡ませている気がする。なんなら、何か入っている気がする。



機洞が眉をひそめて怪訝に問いかける。


「……あれ、もしかして、とけた?」


「っの、のけよ!何してんだよっ」



俺は慌てて声を荒げる。



「何って」



笑っている。




笑いながら引いてまた刺すように腰を動かした。




「……うっ!」



ただならぬ感触が俺の腰から下を貫いた。

これは、この蠢きは、これはもしかしなくても、あれだ。


俺の体を鋤き返し、掘り起こすような動作の正体がいい加減わかった。



「放せって!」




「やーだ、放さない」


からかいふざけるように笑いながらそういって機洞はそのまま性行為の全身の動きを平然と続けようとする。



「うあっ!!」



尻の穴が、凄い不快感!!!トイレいきたくなってくる。

異物感だ。

余りの生理的現象感に足先がむずむず、もぞもぞとしそうだ。




「正直に言えよ。俺とこうなるのに最初ノリ気だったろ、結構………」




そう言いながら機洞は唇を重ねようとしてくる。




「乗り気って何が!!」



顔を背ける。




「捕まった時、胸を弄ると気持ち良さそうにしてましたねぇ、気が」



背けた顔を追って唇を重ねてきた。







あ、だめだ、だめだ、これ。この人とのキスはやっぱり気持ちいいー、浮遊感がある。あの橋の口移しとまるきり同じ感触の………!



機洞が恐らく蕩けてるだろう俺の顔を見て笑む。


「このまま……続きをして……いいですね?」




「ぁ………ふぁ、はい…………。

……………いや、だめだ、だめだ、だめだ、だめだ、だめだ、だめだって!こんなこと!」



俺は振り払って抗う。



「さあ続きをしましょう、もう一回」


俺の慌てる反応を楽しむかのように、悪戯っぽくクククと笑いながらまた唇を重ねてくる。



「あ………ふぁ、ふぁい………いや!だめだって!機洞サン!」




左手で俺の耳元の髪の毛をかき、触り、掴みながら、唇を絡ましてくる。腰砕けになるような、蕩けるキスの感触とは、まさにこれのことか。





「定児クンは、俺とこうなることで何か困りますか?」



腰の抽送運動が再開される。




「恋愛は自由じゃない?その相手が私でも」




足を持たれ俺の足を腹の上に折り曲げてこようとする。



「………うっ…………う………え 」




「たまたまの巡り合わせ。何も困らないでしょう」



折り曲げて腰を浮かせ、一層深く突き当たりを叩くように突き入れてくる。




「コレッ…………恋愛ぃっ………!?んぐあぅっ!」



必死に下半身に向けられる暴力的な刺激に耐える。


どうしてこうなったんだっけ、えっと飯塚稲荷で、死体があって、捕まって、長屋大王の力が必要だとかで仲間になれよと勧誘されて、機洞に実力行使で、捉えられて、有無をいわさずこれで


拉致監禁路線の話じゃないのこれ、恋愛路線の話じゃなくって、さぁ!




「あ」「ぐう」「は」「っっ!!」「いっ」「ううう!」「あっ!」「うっがっ」



腰が打ち鳴り合う性行使特有音が空中を響く度に、否応ない呻きが口から押し出される。


いや、これは呻きか、それとも。



「簡単なことです。君は私と、ずっとこうしてりゃいい」



「んぐああ!!!」



これが、男から受けるセックスの刺激か。


どこも防御できない、露にさらけだされるしかない刺激。無抵抗を甘んじるしかない状態、つまりこれが、男に犯されている状態。



俗に言う、女にされてる状態ってこういうことか。



モノが俺の肉の間を行き交うのをただ感覚でキャッチするしかない。それしか行動の選択肢を与えられない。

誤魔化したり散らしたりすることはけして出来ぬ感覚の暴力。


ただただ受動を強いられる。


ううう……。  俺、犯されてる………。






「定児クン、おや、君は、今ちょっと興奮したみたい?」



「…………!?…………っ…………っはぁ…………!?」




「あのね、心を隠しても無駄だからね。さわり程度ならどんなことを考えているか、どんな感情の波に襲われているか読めますから」




こ、心迄、読めるのか……。そういえば渉流も喜怒哀楽のフィーリングを対面した相手から伝達されることは可能だと言っていた。

でもどんなことを考えているかなんて、きっと渉流以上の読心だ。






「男に女のように組み敷かれている自分の図を想起して、君は今自分で興奮して快楽を得たみたいだよ、ここが」



そう言ってクスクスと俺の分身を触り撫でる。



「ほら、さっきより硬さを増してる。君の好きなシチュエーションというものがよく分かる」





「…………………ぅっ゙!!…………」



頭に血が集まる。頬がカアッとする。





「隠しても無駄だって。君は俺が好きでしょう。

初めて会った時から。ううん、橋の上の辺りからでかな?」





「…………………………ううっ…!!……」



そうなのか?そうなのか?自分でも分からない…………。




「俺も君が好きです。なら、両想いでしょう。お互いが恋情で結ばれているなら、ここでこういう行為を交わしているのは、極自然な関係ではありませんか?」



耳を触るような、いや、舐められるような響きの言葉に心まで絡めとられていく。




「目の前の現実がまだ受け入れ難いなら、また意識を包んであげるよ。さっきまでのように」



そういって機洞は俺の眼前に手をかざした。




途端にふわりとまた、俺の視界は麻酔点眼薬を注された時のように光が蠢くだけの滲んだモニターと化し麻痺した。


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