第36話

最清寺の本堂では全員一堂に会していた。



右から、青森神主、渉流、猪狩祐司とひもろぎの兄妹、金龍和尚と、輪になってズラッと並んでいる。



天井の仏画が見守る中、青森が口を開いた。



「だめでしたねぇ。何べんやっても、水にくべた私の占い符がクルクル回転して最後には沈みこむ。誰かが視られたくなくて防御策を取ってるようですねぇ」


金龍が険しい表情で発する。


「私もです。護摩を炊いても仏から言葉が降りてこない。神仏を打ち破る、ここまで強力な力が動いてるなんて……」







「怪しいのは、そのジャーナリストですよね」


二人の顔を交互に見渡しながら険しく渉流がいった。



「ええ、私がやりあった術者と、定児さんが知り合ったという記者の背格好がそっくり同じだよ!確か……呪禁の技を使って、私の技を跳ね返してきた………チクショウ…………」


「その人、きどう、れんというんだね?」


猪狩祐司が、渉流の顔を怒りを込めた眼で貫いて名前を再確認する。

これは渉流に向ける怒りではない。



「……………」

渉流もイラつきを隠せないムシャクシャする目つきをして押し黙っている。これは、渉流自身に向ける苛立ちだ。




霊能力者達が揃って透視してみても、定児の窮状の環境どころか心理すら掴めないのだ。

まるで定児という存在そのものが、この世から突然消失してしまったみたいだった。



「既に亡くなっている……なんてことはあるのかな………」


猪狩先生が呟く。



「亡くなっていたらこの場に喚べますよ」


青森が感情の無い声色で告げた。



「魂が封じられて一つの場所に地縛され、どこにも移動できない可能性もある。だけど今は、もっとも最悪の可能性は捨て置きましょう。見つけ出すことを、最優先にするのです」



金龍は力強く全員に向かっていった。



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