淫の章(※性表現有)

第32話

渉流はすぐに異変に気付いた。



学校に定児の気がいない。

昼休みにスマホから定児の家に電話をかける。


「帰ってきていない……!?」



母親は多少狼狽えているが、まだそんなに大事には捉えていないようだった。



学校を早退し昨日定児が気になると言っていた美戸履神社に早速向かう。



かけつけて見て渉流は驚いた。

美戸履神社の解体が始まっていたのだ。

クレーンのついたショベルが母屋や社務所もまとめて取り壊していく。

解体重機が崩れ落ちる茅葺きや崩落する瓦の下に集まる最中だった。




「これは……」



「危ないよぉ!」


作業員がショベルから顔を出す。


「どういうことだ。何故取り壊してるんだ!



渉流が気迫を込めて詰め寄ると、ちょっとたじろいだように作業員は

「知らないよぉ。今日急に取り壊しが決まったんだよ。何でも跡地には新たな宗教施設が立つらしいんだ」と答えた。


「クソッ」


渉流は周辺を走り、辺りに定児の気は無いか探ってみたが、足取りは微塵も感じ取れない。



「神隠しか………」




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