第19話

深夜0時。普段なら人気も無く静まり返っている筈の夜の校舎であるが、その日はあちこちにライトがついて人の出入りが多かった。

そう、警察関係者が足早に出入りをしているのである。



その様子を物陰から遠目に伺っている人間がいた。



「流石に学園長が殺された今日は敷地内には立ち入れないようか……フン」


ジャーナリストの機洞連だった。

しゃらくさい、とばかりの表情で校門前の人の流れを見ている。


機洞はそのまま、外縁の高い塀の周りをぐるっと周回しながら、何かを確かめるように時折目を閉じ立ち止まった。




「この学園の地下からは一際強い霊波が立っている。一体………この正体が何なのか」

塀に手をあてながら呟く。


そこへ一人の警察官が機洞の視界に映った。

周りにはお仲間がいない。


「よし」


機洞はニヤリと口角をあげ笑うと印を組む。



「オン・キリキリソワカ…………不動金縛り」 



警察は立ちどころに硬直し動かないでいる。




固まる警察署員の前に機洞が現れ

「私の目を見てください……そう。いい子だ。お前の目を私に貸してもらう」


機洞は新たに印を組んだ。








学園内の学園長室にはまだ青森薔山がいる。

目を閉じて瞑想の姿勢を組み、何時間も犯人の姿を、現場に染み着いて残る怨霊の念から辿ろうとしているのだ。


警察署員はそんな青森の姿を邪魔しないように脇を歩く。


その時だった。青森がカッと目を見開く。

コンコンとドアを開け新たに入ってきた一人の若手警察署員に、青森の腕から霊符が飛んだ。


「あなた操られましたね!」






雷に撃たれたようにドサッと倒れ込む警察署員は、駆けよった刑事が尋ねてもここ数十分間の記憶が無かった。


「私の結界に異質なものが入り込んだらすぐわかりますよぉ。操り手はまだ学園の近くにいる筈だ!外を見てきましょう!」


青森は数名の刑事を伴って駆け出した。











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