邪鬼の章
第16話
やっぱりな。
俺の力って弱いんだな。
渉流みたいにいかねぇや。
俺は昨夜のあれでちっぽけな己の力を痛感し、今日一日同じことだけを考えてしまう。
はぁ~あ。
しっかし、神力送るってあんな口移ししかないのか……。
ただ今校内で学食を食べながら頬杖をついている。
スプーンを無駄に指で揺らしながら。
学校内を流れる噂で、森野と前山が付き合い始めた事実を今日耳にした。
とんでもないスピード発展だ。あれが小鬼の力なのか。
そこへ丁度食堂に森野本人が来たから俺は聞いてみることにした。
「お前前山と付き合ってるんだって?」
「えっもう知ってるのかよ、早いな」
「噂になってるぜ。一体どうしちゃったの、いきなり電撃交際じゃないか」
俺はおどけて聞いた。
「すっごいよな~あの飯塚稲荷先生のご祈祷!マジ効くよ~!!」
……先生まで付けちゃってさ。
「早速今日お礼しに行くつもりだよ。願望成就したらお礼は忘れないようにしないと、効果が消えるんだと!」
「やめとけって」
「一人でいくからさ~♪フンフンフフーン」
いぶかしがる俺をよそに森野は浮かれていた。
放課後になった。
昨日あれだけ自分の力に惨敗したんだ。早速修行に向かおう。
辺りは夕闇にさしかかっている。
急ぐため、学校近くの公園を通り抜けようとしたところだ。
この公園は、最初に化け物に教われた因縁の公園、#荒稼生__あらかせぎ__#公園という名前の公園だ。
「もしもーし、そこのお兄さん」
背後からついて回るように女が俺の後ろをつけている。
パッと見は若くて綺麗な女だが着物姿で風体が怪しい。
「私は易を売っているものです…占いですよ。たまにこの公園にスペース借りして、子供のママや昼休憩中のサラリーマンなんかを占ってるの」
確かに手には細長い竹串のような、易占いでよく見られる道具を持っている。
確か#筮竹__ぜいちく__#とかいったか。
「あなた……恋をしているわね……。誰かのことばかりを考えて、心を惹かれているわね、その人に」
そう言って俺の胸を人差し指でつついてきた。
「そんな人と、つい最近、ほんの少し前、出会ってしまったと出ているわ」
ジャラ……と手に持つ筮竹を鳴らせる。
「あら、恥ずかしがらないで。私に隠し事は無駄なの。言い訳しても無駄よ。あなた出会ってしまってはいけないほどの禁断の運命の相手に出会っちゃったのね。ほ………」
そう言ってキャハハハハとうるさいくらいにけたたましく笑って、女は公園の角を曲がり消えていった。
呆気に取り残される。
なんだよ、あの女は。占い師?ただの心のおかしな女にしか見えなかった。大口で笑う真っ赤な唇がやけに脳裏に焼き付いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます