第14話

「定児!」


青年が立ち去って間もなくまたまた誰かに呼び止められた。

見ると森野だ。


「俺これから評判の拝み屋のところに行くんだよ……。お金を払って、前山との恋愛を叶えてもらいにさ。知ってるか!そこに頼むと絶対両想いになんだってよ!!」


「なんっだそれ。胡散臭いなぁ」

「俺も半分は疑ってるよ。でも興味本意で行ってみよーぜっ!」

仕方ないか……。



連れていかれたそこは、寺でも神社でもないマンション。




怪しいな。


だからって寺でも怪しいけどさ。


中はオフィスのような事務所のような感じになっていた。

インターホンの中年の受付嬢に案内される俺達学生服二名。


「私が光の共鳴教の教主、飯塚 稲荷_いいづか いなり_です。お電話でお悩み事は記録されていますよ。恋愛の祈祷だと」


ニコニコしながら中年の体格のがっしりした男が現れた。服装は単なるスーツ姿のその男は、何と言うかただのおじさんじゃないか?


「本格的な祈祷なら10万から30万。小さいもので良いなら3万」


さんじゅっ……!


「わかりました!三万円のでお願いします!」


森野~ッ!


俺の心の叫びと必死に訴える顔芸は恋愛に盲目になった森野には届かない。

そんな飛びつくような……いくらなんでも短慮だ!短慮!

学生に三万円てのは相当な大金でしょうが!!


「よろしい」


ニヤッと男が笑う。



────────!



その時、教主の指先から小さい小鬼が現れ跳ねて飛んでいくのを視た。


あれは………。


俺は目を細めて小鬼の跡を探そうとしたが一瞬で消えた。



それから特別勧誘なんかもされず俺達は帰れたが、胡散臭さは拭えない。


次の日の学校の終わりに、前山美樹がクラスの女子達と話しているのを聞いてしまった。


「ねえ!今日運動の授業でいきなりボールぶつけられちゃって!保健室に連れてかれてベッドで一休みしてたら横のベッドに授業サボって寝てた森野がいてさ、しばらく話し込んだら告白みたいなこと言われちゃって」


前山は一層声のテンションが高くなる。


「しかもさっき階段で、何もないとこでずっこけて、そしたら下にたまたま森野がいて、ほっぺにキスするような形で森野が下敷きになってたの!わたしもうどうしよう~!」



……………。あの祈祷師、あの小鬼………。



………………………。


「あっすいません」


「考え事しながら歩いてましたね。定児君」


「猪狩先生」


反対方向から歩いてきていたクラスの担任、猪狩_いかり_祐司先生とぶつかりそうになってしまった。

名前とは反対に華奢でスマートな男だ。



「最近の物騒な清町について考えていたのですか?最近この街は治安があまり良くないようです。君も外出はくれぐれも控えてください」

「はい」


「私の妹がね、怪しげなものを夜の街で見たそうなんです。それ以来一週間経っても目覚めない。医者に見せたが眠り続けている。定児君、だから気をつけて。夜は出歩かないように」



「一週間、眠り続けている………!?」



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