第12話
学校だ。俺の通う高校は社樹_しゃじゅ_学園という。立地はほぼ清町の中心部に位置している。
清町の点対象の中心は丁度この学校というわけだ。
同じクラスの友人である前山美樹が肩までの長さの髪を揺らして俺の許に近寄ってきた。
「ねぇ、定児クン、知ってる?私の親は市役所に勤めてるんだけど……最近恐ろしい事件が起こってるみたいよ」
「前山の親公務員なんだ」
和尚の言ってたアレだ、と勘付くもフーンと聞き流そうとする。
「お父さんからは口止めされてるんだけど……市長が、殺されたんですって」
「!?」
思わず真顔になる。
背後にいた友人の森野芳太郎も身を乗り出し間に入ってくる。
「知ってる知ってる!記者が全国からこの街に集まってるらしいぜ~!!噂では……。怖いよなぁ、定児」
「どんな死に方だよ?」
俺はゴクリと唾を飲み込んで聞いた。
「それがね……一瞬で、さっきまで元気だった人の体が腐るんですってよ……」
「なんだソリャっ!?人間技か!?謎の人体発火現象みたいなもん?」
森野は興味津々で名字の通り天然パーマの森林のような頭を持ち上げ更に身を乗り出している。
「定児~、お前のクールなあのいとこなら何かわかるんじゃないの?結構な霊感あんだろお?怒るとメチャ怖いあの」
森野とは中学を卒業してシャジュ学入学からの付き合いだ。
同じく入学した渉流と森野は入学早々ドンパチした過去がある。
入学したての渉流をからかい、切れた渉流に合気道で簡単にブン投げられた出来事があり、以来二人の間には精神的な溝が取れない。
渉流の四方投げで美しくも派手に大回転させられひっくり返された森野。何が起こったかわからない、釣り上げられた魚のような顔になっていた森野の顔は、今思い返しても……笑えます。
「どうだろなぁ…」
俺はお茶を濁す。
「なんだか…最近街の空気……変わったよね。定児クンもそう感じない?」
前山が両肩を自分の腕でさすり長い睫毛を伏せる。本気で怯えているようだ。
「わたし……怖いわ……」
潤む目で俺を見詰める前山。
多分だけど、前山は俺のことをちょっといい感じに思っている。で、森野は前山のことをいい感じに思っている。
俺はというと、前山は友達としてなら良い友人だが、彼女というと特に何とも思わないという気持ちで、森野と前山とでうまくいけばいいな、と心の奥底で密かに友人同士の交際を願っているという何とも微妙な三人の関係になっていた。
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