第三話
二人ともカフェにきておいて、オレンジジュースを頼む。席に座るとむーが話し始めた。
「いやぁー思ってたより全然重かったねー。ほんと、手伝ってくれてありがと」
「んーん、全然。たださ、工藤先生いるならそれだけはいってほしかった」
「あー、忘れてた、ごめんね。そういえばみーは工藤先生のこと苦手だったよね。すごくいい先生だと思うんだけどなぁ、優しいしかっこいいし」
「俺にだけは厳しんだってば、あの人」
そんなこんなで世間話しただけで、いつの間にかジュースが無くなっていた。
俺の考えすぎだったようだ。
まぁデジャヴというだけでそこまで被ると勝手に思い込んでいた俺が悪いんだがな。
分かれ道についた。むーとはここでお別れだ。
「ばいばーい!」
「うん、じゃあねー」
「今日は授業なかったけどちゃんと復習するんだぞー!」(どうせできないんだから、)
「わかったわかった。やっとくよ」
家について、携帯を見てみると
(明日は授業です。あと、今日はありがとねー)
とラオンが来ていた。
(気にすんな。了解)
と返す。
もう今日はやることもないので寝ようかと思ったが、ベッドに入ったところで今さっき、むーに言われた言葉を思いだし、勉強することにした。
一昨日のものは、まだ全然覚えているようだったが、一応一からやることにする。
復習をし終わったと思ったら何故か今日の分もやろうかな、などと思ってしまう。結局やることにして、終わってから時計を見たらもうすっかり遅くなってしまっていた。
ったく、勉強なんかしたところで、俺の点数なんか変わりはしないのに……と分かっているのになぜか勉強してしまうのはなんでなんだろうか。
こうやって勉強してみてはいるが、実際俺の学力はつていたりするんだろうか。
一瞬次のテストは、カンニングしないで解いてみようかな、などと考えていたりもしたが、そんなことをしてしまったらまた逆戻りだと思いやめることにした。
小テストでもあるといいんだけどなぁ。まぁとりあえず今日は寝よう。
翌日。
今日は、朝から様子がおかしかった。教室についてみると、俺の机にまわりにたくさん人がいたのだ。
なんだろうと思い、自分の席を覗き込むと、なにやら見覚えのある顔が俺の席に座っていた。
「くるのおそいですよ! 待ちくたびれたじゃないですか!」
……中島さんだ。
「お、お前ほんとにこの学校だったのか。三年もこの学校にいたのにお前の顔を見たのはあの家が初めてだったぞ」
「そりゃそうに決まってるじゃないですか! んー、多分、先生が私の顔見たことないのは、私が編入してきたからだと思いますよ。私がこの学校に通い始めたの、高校2年の秋からですから」
「な、なるほど。ところで中島さんは何の用事があって呼んだんだ?」
「えっとまず、その中島さんって呼び方やめてください! 先生なんですから、(中島)とか(こはる)とかでいいですよ」
「お、おう分かった。そ、それで中島さ……中島は何の用があったんだ?」
一度ついてしまった癖というものは、なかなか抜けないものである。
「えっとですね、今日の授業なんですが、急遽私の家でやることになったので報告しに来たんです。先生、私の家知りませんから」
「お、おう教えに来てくれてありがとう。何でむーの家じゃダメなんだ?」
「むーの両親がちょっと熱があるみたいで…」
「あぁなるほどな。放課後俺はどこでまっていたらいい?」
「門の前だと目立ちますよね……そーですね、ではむつみの家の前でまっていてください! 私のうちとても近いので!」
「りょーかい。ありがとなー」
「ではではー!」
最近英語を勉強したから、英語の小テストがあれば嬉しかったのだが、英語はおろか他の教科もテストなんてなく、自分がどれくらいできるようになっているのか確かめることはできなかった。
放課後になり、中島との約束があるのでそうそうに学校を出ようとすると、「おい佐藤。」と声をかけられた。
反射的に振り向くと後ろには、工藤先生がたっていた。
「佐藤、明日の英語は小テストだ。ちゃんとやれよ」
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