【2-7】



 2月、第1週目の金曜日。


 美弥は、自分と真弥が通った小学校を一人で訪れていた。


 彼女たちの学校だけが入試準備のために半日授業となったためで、この小学校を含めた他の学校は普通に授業をしているから、美弥は授業が終わるまで保健室で待たせてもらうことになった。


「懐かしいわね。真弥ちゃん元気にしてる?」


「はい、去年手術も受けました。半年の観察期間も終わって体は大丈夫なんです。でも最近元気が無くて」


「そう、心当たりはあるの?」


「もし情報が残っていれば、なんとか……」


 そこまで話し終えたとき、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。


 美弥と真弥を担任してくれていた先生は、

彼女のその後を聞いて、元気になったことを喜んでくれた。


「あの頃の真弥さんは、本当に気の毒としか言えなかったものね。お姉さんと同じ学校に通うんだと、急に私立の受験を決めたし。あの当時もみんなからいろいろ言われたけど、よく頑張ってくれました」


「今日は、敢えて連れてこなかったんですが。あの……」


 美弥は真剣な顔で本題を問うことにした。




 日曜日の夕方、美弥が家に帰ってきた。


 結局、この週末はずっと天気も悪く、真弥はどこにも出かけることはなかった。


「真弥、明日は試験合格者の発表だから、中等部も半日よね?」


「うん。そうだよ。どうしたの? 真面目な顔しちゃって」


 美弥のいつもと違う真面目な顔。


 真弥にも緊張が伝わる。自分に関する何か重要なことが分かったのか。


「明日の放課後、ちょっと出かけるから。学校で待っていて」


「うん、分かった。どうしたのお姉ちゃん、なんか怖いよ?」


 美弥はそれ以上何も言わず、いつものとおりに夕食の用意を始めてしまう。


 仕方なく、その間に真弥は部屋に戻る。彼女の机の上には、小さな包みが置いてあった。


「今年こそ渡せたらいいな……」


 真弥がお小遣いをはたいて、去年買った小さなプレゼント。


 去年のバレンタイン、誕生日と渡せずに、今までずっとそのままになっていた。


 その夜、真弥は姉の様子が気になって、なかなか眠りにはつけなかった。


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